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君のドキドキなんて
吐露したい吐瀉物が積み重なって冬の空気に馴染んだ。白く染められた息は見えなくなっていく。消えていく。透明な空は、粉雪をえがく。
ドームに染められたの。鳥籠のような、檻の中に産み落とされた。
一等星の恒星たちは、キラキラ眩しくてうざったい。
君もそのうちの一人。そんなふうに笑わないでよ。
ただの蛋白質のくせに、光って気持ち悪いのに。
なぜかこんなにも温かい。
血が通っているね。鉄の味。ロボットみたい。でもすぐ死んじゃうから。
君も僕もすぐに死んじゃうから、この世界に未来はあるの。
僕たちが死ぬから、明日がくるんだよ。ご飯食べて後悔して泣いてよ。海の味になるね。
君のドキドキなんて、耳を当てないと聴こえないくらい些細なものだよ。
君の悲鳴も耳を塞げば聴こえない些細なものだよ。
君の泣き顔を見てみたい。
そうすれば僕は君のこと全部知った気になれるから。
護った気になれるから。
世界は今日も最悪です。
だけどそれでも君は優しい。
だから君は生きて光るの。
人間の求愛行動が頭の中で幸せを願うことでよかった。
一人で願えることでよかった。




