表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/136

自他罵多


 死にたくなかったことを 僕は知っている

 自殺は他殺だ 君は殺されたんだ


 君が言葉を奪われて なにも言えないなら

 僕が代わりに口をひらくよ

 生きていたかった 愛していたかった


 後出しだけど

 君が死ぬことを知っていたら あの日の僕は

 もう少しだけ多く 優しくしていたんだよ

 毎日の中に後悔が蓄積されていくんだ

 用途のない優しさを消費する手段がない

 ここにある優しさは全部君のためのもの



 君は生きたよ それは僕が一番知っている

 みんなと同じように 赤ちゃんの姿で産まれてきた

 その小さな命は 僕の言葉の真似をして

 この世界で消えた喜びをたくさん教えてくれた


 それらを共有するたびに君は笑っていたね

 そのたびに君を生んでよかったと思った




 君を天国に送り届けるのは 生きている僕の役目だよ

 亡者の行先は生者の祈りで決まるから

 僕が願えば君は天国に行ける



 自殺は自分で自分を殺すことだと

 第三者目線からの意見は意味がない

 自殺は他殺だ

 だって君は泣いていた

 泣いていたんだ 嘘泣きなんてしないから

 

 ごめんね 僕も君を殺した一人かな

 そんなことを考えてしまうよ




 火葬場はもう冬になっていて

 雪が絨毯のように広がっていた

 君の足跡だけが残らなくて

 その景色はまるで

 君が生まれた年のようだった

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ