自他罵多
死にたくなかったことを 僕は知っている
自殺は他殺だ 君は殺されたんだ
君が言葉を奪われて なにも言えないなら
僕が代わりに口をひらくよ
生きていたかった 愛していたかった
後出しだけど
君が死ぬことを知っていたら あの日の僕は
もう少しだけ多く 優しくしていたんだよ
毎日の中に後悔が蓄積されていくんだ
用途のない優しさを消費する手段がない
ここにある優しさは全部君のためのもの
君は生きたよ それは僕が一番知っている
みんなと同じように 赤ちゃんの姿で産まれてきた
その小さな命は 僕の言葉の真似をして
この世界で消えた喜びをたくさん教えてくれた
それらを共有するたびに君は笑っていたね
そのたびに君を生んでよかったと思った
君を天国に送り届けるのは 生きている僕の役目だよ
亡者の行先は生者の祈りで決まるから
僕が願えば君は天国に行ける
自殺は自分で自分を殺すことだと
第三者目線からの意見は意味がない
自殺は他殺だ
だって君は泣いていた
泣いていたんだ 嘘泣きなんてしないから
ごめんね 僕も君を殺した一人かな
そんなことを考えてしまうよ
火葬場はもう冬になっていて
雪が絨毯のように広がっていた
君の足跡だけが残らなくて
その景色はまるで
君が生まれた年のようだった




