九月の蝉
九月に生まれた蝉は自由だよ
十月まで何もしないで木の蜜を啜る
ただ飛んで叫んで泣いてわめいて、誰からも返事がこなくて、潰れてみる
中身は空と少しの秋
純白を護った蛸は長く生きる
名誉ある死を褒めないで
死に意味を持たせないでよ
お願いだから
裸で産まれたなんて、つまらない嘘をつかないで
あぁ、きっと君は高いドレスを着さされて産まれてきたの
大人になったら返さないといけないね。服を着てないと生きられないでしょう
だって、僕の皮膚より下にあるもの全部、君の髪を汚してしまうから
僕の体はそういうもので出来ている
夢を持たされて、奪われて、隠されて、泣いた
それで少し安心した自分がいたのが嫌だった
だけどね、大切だったんだよ
無意識に思い描く程度には
好きなときに起きて、好きなときに食べて、そして寝る
好きなときに起きて、好きなときに笑って、そして寝る
これは人前ですると怖いこと。嫌われること
そんな生き方は死んでいるのと同じだよ、といわれた九月の蝉
季節外れの蛍になりたい。一人ぼっちの舞踏会
そうして生まれて初めて君は裸になれる
生きる才能がなかったね
望まれた生き方は捨てておいで
だって君の目は、君が見たものしか映せないから
死亡届を出して同じにして
季節を九月にしてドレスを脱いだら
今から君は、君になれるよ
でもこれまでの君も大事にね
一日前までの君は、今日まで君を護っていたんだよ