変(り)身
机を倒したら、役に立たなくなった。
同じものなのに、邪魔で仕方なかった。
少しの立ち方の違いで無価値になってしまうことが
とても怖かった。
鉢植えを逆さまにしたら、土は放り出された。
そこから花が咲くことはなくなってしまった。
育てるはずが殺してしまった。
初めから
命の使い方はある程度決められている。
死んでいた僕が、生まれてしまった。
たくさんの命をいただいて、生き延びてしまった。
眠るときだけは、安心出来た。
生まれる前に、戻れたから。
生きていた君は、死んでしまった。
君の肉体は同じなのに、少しの違いで君ではなくなった。
これは君の抜け殻。君じゃない。
君の心と声を、僕の五感と共に持っていって。
その代わり、君の存在で僕を埋めてほしい。
心は体から服を剥ぎ取った。
いつしか心は着飾り、体は裸に戻っていく。
そんなコミュニケーションをとるようになった。
それが幸せなのかは分からない。
好きになったら、好きになれたら
会いたくなる。
あなたのそばで、笑いたくなる。
つられて笑ってほしいから。
「でも好きになったら、いつか嫌いになる」
そんなことはないと思う。
死んでいた君は、また生まれてきた。
正しい姿勢に戻った君は
それだけで正しいよ。
それだけで正しいよ。
生きていることは正しいよ。
深呼吸をしたら
体が安心する理由はね
息をすることは絶対に正しいことだから。
君は今日も正しいよ。
君は今日も生きたよ。
それだけで優しいから。




