同時多発的アンティパシー
人が嫌いだ。でも好きだ。
これは本当の話。
腹の底からの僕の言の葉。
人が嫌いだ。でも好きなんだ。
二律背反する僕の中で、きっと答えは決まっていて、矛盾に思えるこの感情も、正体は知っていた。
笑う人が怖い。
僕はとても怖い。怒っている人よりもきっと。
それは僕にとって、とても、冷酷なことで、すぐそばで誰かが泣いていたり、このあと一人で誰かが苦しんだりする。そういう世界で生きているのに。
まるでそれが、すぐそばにある別世界のように扱う人間が心底いやで、怖いんだ。
それなら、何も許さないで怒っている方が幾分かマシだ。
それが泣いているなら、もっといい。
歩いていける距離で、また誰かが今日も苦しんでいたり、君も悩みを抱えていたり、僕も不安で押し潰されそうになってくる。
同じ世界と時間の中で、笑える人が嫌いだ。
でも笑っている人は好きだよ。
笑っている君が好きだ。
そんな君と一緒にいて、僕もきっと笑っていて、たぶんその間だけ
この世界のことなんて、どうでもよくなっているんだと思う。
幸せの定義がそれならば、僕はやっぱり
人が嫌いで、人が好きだよ。
僕も人だから。