例えばの話
例えば明日僕が急に
君の目の前から消えたとしたら
どうなるだろうと考える
自意識過剰かも知れないけれど
きっと君は僕のことを
僕が考えるよりも大切にしてくれているから
どれだけ過剰になっても過剰にはならない
例えば明日から
もう会えなくなってしまったら
君はきっと泣くだろう
二人で過ごしたあの部屋の布団を
たくさん濡らしてしまうだろう
僕のいない世界はきっと
君にとって空虚なものにすり替わってしまう
今まで鮮やかに輝いていた景色も
色褪せて燻んでしまう
そんな死んだ世界の中を君は一人で歩く
きっと車にも轢かれかける
バスも乗り間違えるし
降りる駅も通り過ぎてしまう
職場についても連絡がこないか気にする
お昼の時間になっても
ろくに食事が喉を通らない
家に帰っても何もできない
どうしようもない涙がたくさん溢れて
また枕をぐっしょり濡らしてしまうだろう
呼吸も難しくなって
過呼吸になるだろう
自傷行為はしてほしくないけれど
してしまうかもしれない
君を傷つけたくないと願えば願うほど
僕がもしもこの世からいなくなったときのことを
何度も何度も考えてしまう
僕の意思ではもうどうにもならないことや
どれだけ気をつけても
事故に巻き込まれることもあること
急に心臓が止まることだって
脳の血管が詰まることだってあるかもしれない
誰かのそういうのは自分の身にも
当然起こり得ることで
他人事じゃない
だから君との一日一日は
僕にとって忘れられないものだ
言葉で伝えられないくらい大切だ
今度は逆に例えば明日君が急に
僕の目の前から消えたとする
どうなるだろうと考える
考えるだけで涙が出るし
頭が狂いそうになるよ
僕はきっともうまともには生きられないし
仕事も辞めてしまうかもしれない
何もかも希望も可能性も棄てて
小さな部屋の隅っこで
時計の針だけを見つめて死んでいく
きっと自傷行為はするだろうし
煙草もお酒もするようになる
体に悪いことを調べたりもするだろう
雨の中傘もささずに外にでて
何度も何度も君の名前を呟きながら徘徊する
君と過ごした場所を巡って
君がどれほど僕のことを
愛してくれていたのかを思い出すだろう
そして思い知るだろう
これ以上ないほど大切にしても
もっと何かできたと後悔する
君の声を何度も思い出して
君の笑顔を何度も思い出して
君が名前を呼んでくれたことを全部思い出して
もう会えない君の名前を呼ぶだろう
君が元気で笑って生きてくれるだけで
それだけが僕の全てだったと
涙を何度も流すだろう
同じことばかりを繰り返して
みんなに置いていかれて
なにもかも取り返しがつかなくなって
それでもいいやと思えるくらい
君のことを愛している
きっともう僕らの人生は
一人だけのものじゃなくなったんだね
君が哀しい時は僕も心が締め付けられる
僕が泣いてる時君もきっと同じでしょう
自意識過剰かもしれないけれど
君にこの話をして
君が「相変わらず自意識過剰だね」って
笑ってくれたなら
こんな恥ずかしい話をした意味も生まれる
君がこの話で涙を流してくれるなら
僕はきっと君を抱きしめる
君がこの話でドン引いても
それはそれでそういう君も
僕は愛している
愛している




