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残暑見舞
夏のプールの底に
誰も知らない君がいた
皆が花火を見上げる空で
色を知ることが出来ない君がいた
命の音が反射するベッド
真新しいカレンダーが
いつまでも所在無げだった
思い出を共有する気がない
私の地球に四季などなかった
独りで愉しむには難し過ぎる
出来事の数々が眩しかった
楽しんでいる人がいることは
哀しんでいる人がいることだと
知っていても誰も口には出さない
君も同じような夏を
過ごしているのだろうか
波紋を生み出す雨足
全ての行いは全て自分に返ってくる
その中に身に覚えのないものも幾つかあって
ババを押し付けられて笑ってしまった
居場所を失わないために
崩れ落ちそうな地面で押し合ってる
助け合いか落とし合いか分からない
私はただ安心したかっただけなのに
それを許されない場所に立ってる
夏の空に雪が降ろうとも
皆と同じ景色を見れることはない
分けあえるはずもない
笑うことも泣くこともできない
今日も透明人間は
誰もいないプールの深い深い底にいる
君も同じような夏を
過ごしているのだろうか




