102/136
ゼルプスト
貴方が置いていった唄
独りになった世界で
いつまでも鳴り続けてる
思い出の中に再生装置
偽物と本物
そのどちらであっても
君が優しく口遊むとき
私は目を閉じて寄り添う
嫌いにはなれない
それは形見だから
貴方がいなくなった世界
冷たい空の底で唄うとき
貴方も一緒に唄っていてくれたなら
心には五感が揃っている
身体の全てが消えても
消えないものが心であってほしい
色褪せた写真の片割れ
忘れようとする脳を
正しく叱ってくれる
涼しい風が走る草原
木洩れ陽の中で
唄を聴いている貴方がいる
偽物なのに思い出せるから
もしかしたらこの記憶は
願いが叶った世界線
二人が一緒にいられた未来の話
その世界の私が教えてくれたものかもしれない
そんなことを考えてもいいかな
貴方が生きている
でもここにいない世界
冷たい空の底で唄うとき
貴方も一緒に唄ってくれていたなら
どれほど幸せなんだろう




