ナイフ
暗闇で突きたてられた冷たいナイフ
どこから飛んでくるか分からないから
守ることをしなかった
心は傷だらけ
体も傷だらけ
つけられた痛みは余りにも無意味で
誰もが自分のつけた痕を忘れている
あまりにも醜かったから包帯をまいたよ
優しい君の毒にはなりたくなかったから
何も教えてなかったから触れられてしまった
優しい君の手にはどんな傷もかなわなかった
誰にも届かない僕の言葉
聞こえなかったから痛くないみたいに
冷たく微笑みながらなんとも嬉しそうに
今日もみんな頑張って傷を増やすよ
一番深く傷を残せた奴がヒーローになれる世界
みんな一生懸命あれやこれやと手の内を披露した
「さぁどうぞ、誰でも参加は自由ですよ」
性格が良いとみんなから褒め讃えられている人は
そう言って仲間外れがでないようにナイフをまわした
あまりにも醜かったから包帯をまいたよ
元には戻らないから諦めていたんだ
君は包帯をほどいてナイフを突き刺したよ
優しい君の手にはどんな傷もかなわなかった
言葉を知ってくれた
そうして僕のこと全部
愛してくれなかったけど
愛されていた
醜い心からの行動に君はナイフで×をつけたよ
血の通った温かいナイフが傷の上から傷をつけた
君は一生懸命泣きながら一つ残らず×をつけて
「ほら、もう全部私の傷だよ」「忘れないから」
そんなふうに笑って血まみれの心を抱きしめてくれた