未来のBF
神谷先生に恋をしていると気づいた花帆。
でも、新たなエピソードがー!?
「それは、お母さんの言うとおり恋だよ恋!」
次の日、お母さんの言葉が気になって、芹ちゃんに相談してみたら、即答に答えが返ってきた。
「考えてみなさいよ。元カノが現れてから、そんな気持ちになったんでしょ?」
「そうだけどー。でも、どうして今まで気づかなかったんだろうー?」
神谷先生には、何度も逢っているのに、こんな気持ちにはならなかった。
「そりぁー、急に現れた元カノの影響よ~。今まで気づいてなかったのに、2人の仲良い姿を見たら、自分の気持ちに気づかされたみたいな」
「……」
確かに、そうかも知れない。神谷先生のことは、好きだった。でも、叶多先輩の時みたいにこの気持ちが恋なのか、わからなかった。
「でも、元カノと仲良さそうにしていたとなると、お互い嫌いで別れたんじゃないかもね……」
芹ちゃんが、ボソッと呟いた。
「どうして?」
「バカねぇ~!考えてみなさいよ。嫌いで別れたなら、そんなに仲が良いはずがないでしょ」
「……」
それもそうかー。じゃあ、どうして別れたんだろう?
あたしの胸がキュンと締め付けられる。
「でも、良かったね!恋することができて。今まで、病気でほとんど学校にも来れなかったし、恋には無縁だったもんね……」
芹ちゃんは、嬉しそうにあたしの肩をポンと叩いた。
そっかー。これが、恋する気持ちなんだー。 でも、これからどうすればいいのかな?
気持ちを伝えるべき?
あれこれ考えていたら、萌さんの顔が浮かんだ。
すぐに告白なんて駄目だよね……。芹ちゃんだって、ずっと叶多先輩のこと想い続けていてやっと、告白したんだもん。
そして、2、3日が過ぎてからのこと、いつものように帰りの支度をして、昇降口に行くと叶多先輩が待っていた。
「久し振りー」
先輩はニコッと微笑んだ。
「先輩!?。部活はどうしたんですか?」
先輩がいるとは思っていなかったら、あたしは、びっくりした顔をした。
「ちょっと、手首をひねってさ。部活は休み」
「えっ、大丈夫ですか!?」
「平気平気。湿布を貼っておけば治る程度だから」
先輩は、痛めた方の手首を見せた。
「それでさ、良かったら一緒に帰らないか?」
「は、はい……」
そうだ、先輩に告白の返事、まだしてないんだった……。
先輩の後から、ちょっと気まずそうに歩いて行った。
正門の所まで行くと、思いがけず神谷先生が立っていた。
「神谷先生?今日は健診の日じゃないと思ったけど……」
「いや~。花帆ちゃん、メールするようなこと言ってたのに、メールが来ないから、何かあったんじゃないかと思って様子を見に来たんだ」
「……」
そうだ!メールするの忘れてた~。あの時は、病気かと思って、相談しようとメールするって言ったんだった~。
でも、心配して、わざわざ来てくれたんだー。
あたしの胸がキュンと鳴る。
「でも、良かった~。元気そうで」
神谷先生は、ホッとさせるとチラッと先輩を見た。
「ごめんなさい。心配かけちゃって……」
「それはいいんだけどー。ごめん、2人の邪魔しちゃったかな?」
「ち、違います!そんなんじゃないんです」
あたしは、慌てて否定した。
「そんなに、否定されると落ち込むなー」
先輩は、寂しそうな顔をした。
「ごめんなさい……」
申し訳なさそうに、先輩に謝った。
「あのー。もう、帰ってもいいですか?岸谷に話があるので」
気持ちを切り替えるように、先輩は神谷先生を見る。
「ご、ごめん。呼び止めちゃって」
神谷先生は、すまなさそうに謝った。
「じゃ、失礼します。行こう、岸谷」
先輩は、あたしの腕を掴んで歩き出した。
「ちょ、ちょっと先輩!」
あたしは、先輩の手を振りほどいた。
「あの人、研修医の先生だろ?」
「う、うんー」
「あの人のこと、好きなのか?」
先輩の顔が真顔になる。
「……」
バレてるー!あたし、顔に出てたかなー?
あたしは、小さく頷いた。
「そっか……」
「ごめんなさい……」
なぜか、小さな声になってしまう。
「先生の方は、君の気持ち知ってるのか?」
「最近、自分の気持ち気づいたばかり出し、知らないと思う……。それに、元カノがー」
あたしは、途中で言葉を飲み込んだ。
神谷先生が元カノと仲が良いなんて知ったら、先輩はどう思うんだろう?
「元カノがどうした?」
「ううん。何でもないの……」
あたしは、ブンブン首を振った。
「何か気になるなー。俺で良ければ話聞くけど」
先輩に真剣な瞳でじっと見つめられて、仕方なく話すことにした。
「そんなことがあったんだー」
あたしの話が終わると、先輩が静かに言った。
「あ、でも。仲良いって言っても、同じ所で働くことになったんだし、気まづいなんて言っていられないし、仕方ないよねー」
あたしは、自分に言い聞かせるように、頷いた。
「いくら、同じ職場で働くからって、元カノに優しく接したりできるのかな?本当は、嫌いで別れたんじゃないのかも」
「……」
芹ちゃんも同じことを言っていたことを、思い出す。
「あ~あ。告白の返事をもらうはずが、恋愛相談みたいになっちゃったな~」
「ごめんなさい。返事する前に、こんな話……」
ハッと気がついて、だんだん気まずくなってきた。
「いいよ。気にしなくてー。岸谷の気持ちは、わかったから。でもさ……。はっきり、先生の気持ちがわかるまでは、俺は諦めないから」
先輩は、真剣な瞳で、あたしを見つめた。
先生の気持ちー。いつも、優しい先生だけど、あたしのことどう思っているのかな?
「今日は、外でお昼食べよう!」
芹ちゃんが、お弁当を持って外に向かった。
今日は、外はパステルカラーで一面に染めたような、真っ青な空。
外で、お弁当を食べたくなるのも無理はない。
「ねえ、花帆。その後、先生とは進展あった?」
お弁当を食べながら、芹ちゃんが興味深そうにあたしを見た。
「進展って……。逢っていないし」
「それ
じゃ、駄目じゃない!電話でもして、デートにでも誘ってアプローチしてみたら?」
「アプローチってー」
思わず、苦笑いしてしまう。
「だって、そうでもしないと……。焼け木杭に火が付いたらどうするのよ」
芹ちゃんは、ハラハラさせた。
ピロロ~!
その時、携帯のメールが鳴り響いた。
お弁当を食べるのを中断して、携帯を飲み込んだ。
ー今日、健診日だけど。覚えてるかな?
メールは、神谷先生からだった。
そうだ!今日、健診日だった。
「噂をすれば!」
芹ちゃんが、携帯を覗き込むと、ニヤニヤさせた。
健診日を忘れていたけど、覚えてます!って入れちゃった。
ー今日は、石井先生。学会でいないから、俺が代わりに外来をやらないといけないから、迎えに行けないんだけど……。
何だー。神谷先生、来ないのか……。
あたしは、少しがっかりさせた。
「何だって?」
芹ちゃんが、お弁当を食べながら、興味深そうな顔をした。
「あ、うん。今日、健診日だったんだけど、外来の方をやらないと行けないみたいで、迎えに来れないみたい」
今まで、神谷先生に甘えてばかりで、悪いなとは思っていたけど、これをきっかけに
、勇気を出して自分で行ってみるのもいいかも知れない。
あたしは、決意したように空を見上げた。
学校が終わると、あたしは駅に向かった。
学校の階段も何とか、上れるようにもなったし、駅の階段だって大丈夫に違いない。
「岸谷ー?」
駅までの道を、とぼとぼ歩いていると、聞き覚えがある声にあたしは、振り向いた。
「叶多先輩ー」
近くの薬局から、先輩が出て来た。
「びっくりした~。こんな所で逢うなんて。どうしたの?岸谷の家って、こっちだったっけ?」
「これから、病院でー。先輩こそ、どうしたんですか?こんな所で」
チラッと、先輩が持っている薬局の袋を見た。
「手首、捻ったのまだ少し痛むから、テーピングと湿布を買いに来たんだー。それより、病院ってー。あの先生は、一緒じゃないのか?」
先輩は、辺りをキョロキョロ見渡した。
「うん。今日は外来の方をまかせられていて……。あ!もう時間だ。急がなきゃ!先輩、さようなら!」
あたしは、腕時計を見ながら歩き出した。
急がないとって言っても、また発作が起きると困るし、少し早足になる。
早足なら、大丈夫だよねー。
「岸谷!独りで大丈夫か?」
先輩が、勇気を出して自分で行ってみるのもいいかも知れない。
あたしは、決意したように空を見上げた。
学校が終わると、あたしは駅に向かった。
学校の階段も何とか、上れるようにもなったし、駅の階段だって大丈夫に違いない。
「岸谷ー?」
駅までの道を、とぼとぼ歩いていると、聞き覚えがある声にあたしは、振り向いた。
「叶多先輩ー」
近くの薬局から、先輩が出て来た。
「びっくりした~。こんな所で逢うなんて。どうしたの?岸谷の家って、こっちだったっけ?」
「これから、病院でー。先輩こそ、どうしたんですか?こんな所で」
チラッと、先輩が持っている薬局の袋を見た。
「手首、捻ったのまだ少し痛むから、テーピングと湿布を買いに来たんだー。それより、病院ってー。あの先生は、一緒じゃないのか?」
先輩は、辺りをキョロキョロ見渡した。
「うん。今日は外来の方をまかせられていて……。あ!もう時間だ。急がなきゃ!先輩、さようなら!」
あたしは、腕時計を見ながら歩き出した。
急がないとって言っても、また発作が起きると困るし、少し早足になる。
早足なら、大丈夫だよねー。
「岸谷!独りで大丈夫か?」
先輩が、急いであたしを呼び止めた。
「……」
久し振りに電車で行くから、不安なことには、間違いない。
「……行こう!」
先輩が、急にあたしの腕を掴んで歩き出した。
「先輩?」
「一緒に、病院まで行ってあげるよ!」
「え!そんな……。悪いし、独りでも大丈夫だから」
あたしは、慌て手を離そうとした。
「……俺もそうだったんだけど。本当は、駅の階段が不安なんだろ?」
「……」
あたしは、何も言えずに俯いた。
「図星かー。だったら、黙って一緒に行くべし」
先輩は、二ヤッと笑みを浮かべた。
あたしは、仕方なく先輩に甘えることにした。
少し辛い時は、先輩に助けてもらって、電車に乗ることができた。
「大丈夫か?」
先輩が、優しく気を使ってくれる。
「何とかー、大丈夫みたいー。先輩がいなかったら、電車に乗れなかったかも……」
空いている席を見つけて座ると、少し気持ちが落ち着ついてきた。
大げさの話に聞こえるけど、駅の階段は学校の階段と違って、幅は広いし長く感じて途中で足が止まいそうになったけど、先輩が上る方法を教えてくれて何とか、電車に乗ることができた。
「健診の日は、いつでも俺に言って。一緒に行ってあげるから」
そう言われて、あたしは先輩が頼もしく見えた。
「夏帆ちゃん!」
病院に着いて待合室で待っていると、すぐに診察室に呼ばれたので入ってみると、神谷先生がホッとさせた顔で、診察室の椅子に座っていた。
「独りで、来れたんだね!」
「……」
なんとなく、先輩と一緒だなんて言えなくて、勘違いしたままにしておくことにした。
「階段、大丈夫だったかな?」
「はいー。何とか……」
神谷先生が椅子に座っていると、いつもと違って、こっちが緊張してしまう。
それから、神谷先生とも話せないまま、診察や治療で終わってしまった。
少しがっかりしながら、待合室に行くと、叶多先輩が待っていてくれた。
「お疲れ様!」
先輩が、笑顔で出迎えてくれた。
「待たせちゃって、ごめんなさい」
「そんなこと、気にしなくていいよ。それより、元気ないね?何かあったの?」
「た、たいしたことじゃないのー」
苦笑いをすると、会計の場所に向かおうと歩いて行く。
途中でふと、診察券がないことに気がついた。
「診察券を忘れてきたみたいー」
あたしは、病院のファイルを覗き込んだ。
「じゃあ、一緒に行くよ。きっと、看護師さんが渡すの忘れたのかも」
あたしと先輩は、もう一度、戻ると、窓口に行くと声をかけた。
「すみませ~ん!」
声をかけてみたけど、誰も出てこない。
「お、花帆ちゃん!」
今日、学会のはずの石井先生が顔を出した。
「先生!今日はいないはずじゃー」
「早く終わったから、神谷先生と交替したんだ。それより、どうしたんだい?」
「診察券、忘れたので取りに来たんだけど、誰もいなくて……」
少し、困った顔をさせた。
「今、ちょうど患者さんが途切れたものだから、違う仕事をしているんじゃないかな~。ちょっと、待ってて」
石井先生は、中の方に姿を消した。
何分か経って、石井先生が診察を持って戻ってきた。
「はい、どうぞ」
紳士的な顔で、診察券を渡してくれた。
「ありがとうございます!……それで、神谷先生は……?」
今なら、逢って話ができるかも知れない。
「神谷先生!」
石井先生が、中に呼びに行った。でも、いなかったのか、すぐに戻ってきた。
「おかしいなー。今、いたんだけど……。神谷先生の担当で何か問題でもあったかな?」
「い、いえ。いないなら、いいです……」
いくらなんでも、神谷先生に逢いたいからなんて言えやしない。
溜め息をつくと、あたしは先輩と一緒に会計窓口に向かいかけた。
「……!!」
倉庫室に神谷先生が入る姿が見えた。
「岸谷ー?」
先輩が、呼んだけど、あたしの耳には入っていなかった。
神谷先生ー!?
あたしは、そっと近づいて行く。
少し開いた、ドアの隙間から、覗き込んだ。
「どうしたの?」
先輩は興味本位で、一緒に覗き込んだ。
「何だー。あいつか……」
神谷先生の姿を見ると、がっかりさせた。
「由宇ー」
神谷先生の向こうには、萌さんの姿が見えた。
「萌さん……」
一瞬、言葉を失った。
「もしかして、元カノってあの人?」
「……」
あたしは、ゆったりと頷いた。
2人で、何か話しているけど、ここじゃ、聞こえやしない。
萌さんは、少し興奮気味になっているみたいで、神谷先生の胸に飛び込んだ。
「……!!」
キュッーとあたしの胸が締め付けられる。
神谷先生もまんざらではなさそうに、萌さんを抱きしめた。
衝撃的な光景で、あたしは、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。




