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盗姫  作者: 硴月 楸
6/10

ある少年

今週から休みたいので、更新を早めにしました。

相変わらず短いです…

「……を助けてくれ。頼む」


「………」


少年はひどく不機嫌だった。

父親に久しぶりに会えたというのに最初の一言が頼み事だ。

しかもその内容は彼が最も嫌う人間を助けろ、ということだった。

「…なんで俺なんだよ」

「そんなことはお前が1番よくわかっているだろう?」

「……ちっ…」

これ以上父親と話したくなくて背を向けた。父親はそんな少年に叫ぶ。

「あの子はお前に会いたがっている!明後日、絶対に助けてやってくれ!」

少年が振り返ることはなかった。


少年はレジスタンスの一員だった。

国民たちを苦しめてまでも裕福な暮らしを続けている王たちが許せなかった。だから彼はレジスタンスに入った。

レジスタンスは彼にとって家より大事な場所だった。


隠れ家に戻ると隊長たちが地図の周りを囲んで何やら話していた。

「おっ!ライじゃないか」

その中の一人が少年に気がつき顔を上げる。

「何やってるんですか?」

「明後日の確認を少しな」

言われて気がついた。

そうだ、もう明後日に迫ってるんだ。


明後日になれば王を殺すことができる…。

ようやく反乱を起こし、平和な国を取り戻せるのだ。

少年は楽しみのあまり笑みがこぼれる。


そこでふと、父親の言葉が蘇る。


「明後日、絶対に助けてやってくれ!」


「…知るかよ」

「ん?何か言ったか?」

「い、いや。なんでもありません」

「そうか?」

「じゃあ俺はこれで…」

少年が去ろうとすると、隊長が彼を引き止めた。

「君も一緒に作戦の確認をしておいたほうがいいぞ」

とのことだった。

少年は断る理由がなかったので彼らの輪の中に入って行った。


「じゃあ確認するぞ」

少年が席に着くのを見計らって隊長が言った。

「まず、俺たちA班が正面から…」


作戦は簡単。

隊長率いるA班が囮となり衛兵を引きつけ、その間に少年を含むB班が城内に侵入、及び王の抹殺を行うというもの。


誰かを助けられるような暇などない。


どのみち父親の願いは叶えられそうにない。

少年は安堵のため息をつく。


……「アイツ」には二度と会いたくない。



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