裏切りの姫
「…いや、今はやめておく」
せっかくのじいの意見だったが姫はすぐに首を振った。
「王の娘である私もきっと恨んでいるはずだから…」
「私が説明すればきっと…!」
「だとしても、完璧に信頼してくれるとはいえない。…それではダメなの」
姫の気持ちを察したじいは静かに口を閉じた。
重い静寂が訪れる。
「じゃあ今日はお父様の部屋を調べてくる」
姫はそう言うとじいを残し、逃げるようにして部屋を出た。
部屋を出るときじいが何やらつぶやいたようだが、姫の耳には届かなかった。
姫は王がいないのを確認して部屋の中へ忍び込んだ。王の部屋は相変わらず宝石やら金やらがたくさん飾られている。
昔は姫もこれを見ては喜んで飛び跳ねたものだが、今となってはそんなバカな自分が憎かった。
ともあれ姫はまず机の中を調べてみることにした。先ほどじいからこっそり盗んでおいた鍵を使い引き出しを開ける。中にはペンとレターセット、そしてなぜか錆び付いた鍵があった。
「なにこれ…?」
首をかしげながら姫が鍵を手に取った瞬間、
「なにをしてる?」
背後から何者かの低い声が降りかかった。
「お、お父様…」
黄金の王冠をかぶり、真っ赤な布地にこれまた金の刺繍の入ったマントが目を引く。これが王、また姫の父である。
「…少しレターセットをお借りしたくて…」
「何に使うというのだ?」
「それはその……明日はお父様の誕生日なので…」
すると王は一瞬にして満面の笑みになった。
「おお!そうかそうか、そういうことか!好きなだけ持って行きなさい。紙ぐらい余るほどあるのだから」
王はそれが姫のとっさの嘘だと気づくことなく嬉しそうにその場を去った。
姫はひとまず安心すると、引き出しの鍵を閉めた。
もしお父様にこのことがバレたらどうなるのだろう…
姫はあらためて自分の行いに恐怖を覚えた。
以上。
今回は少し短めになりました…。
…テスト期間だったので、仕方が無い…
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