盗姫
昔々あるところに歴史ある古き良き王国がありました。
その国は、あらゆる国の文化を取り入れてはそれを独自のものに作り変え、発展することでいままで存続してきました。
あまり裕福ではないが、国民たちは皆優しい心を持ち、国中のありとあらゆる人たちが協力し合い、それなりに平和であった。
そんな国に1人の女の子が生まれた。
彼女の親は国の王家の者。つまり彼女は国の姫君であった。
姫のたった1人兄妹である王子も姫の誕生にそれはそれは喜びました。
そんなある日のことでした。
召使いになりすましていたの1人の盗賊の男が生まれたばかりの姫を人質にとり、「この国を俺に渡せ」と王に交渉を持ちかけました。
王は悩んだ挙句、男の交渉を飲んだ。
妻が命を懸けてまで産んだ子である姫をむざむざ犠牲にするなんてとてもできなかったのだ。
こうして、1人の男によって平和だっ国は一瞬にして破壊された。
金銭や食料不足により争いは絶えず、飢えによって死んでしまう国民たちも現れ始めた。
王や王子は国民たちに申し訳なく思いながらもなんとか生きるために一度身を隠し、王は年寄りの変装をして城に姫の召使いとして、王子は幼いながらもレジスタンスの一員となりそれぞれに国を取り戻すための機会をうかがった。
どちらも歯がゆい思いでずっとずっと待ち続けた。
そして、運命の時は来た。
王子もすっかり大人になった頃、ついにレジスタンスは男への反乱を起こすことを決めたのだ。
その頃姫は、男に対して不審感を抱き打開策を探していたのだがついに男にそのことがばれてしまい、暗い牢に閉じ込められていた。
これを知った王は争いは好まないのだが…仕方なしと、レジスタンスへの協力をすることにした。
…全ては愛する娘のために…。
***
「それで、その後はどうなったの⁈」
興味津々といったように少女は訊いた。
「王子は見事に男を倒して王になる権利を奪い盗ったわ。…でも、その国にはある法律があって…どんな人でも王から王になる権利を奪い盗ったら死ななきゃならなかったの」
「ええっ!そんな!…じゃあ王子は…」
「そう、死んじゃった…」
少女は悲しそうにうつむく。しかし、すぐに何かを思い出したように続けて訊いた。
「じゃあ、姫さまは?どうなったの?」
「…姫はね、王子が死ぬ前に牢から出してもらえたから大丈夫だったわ。…ただ王子が死んだ後、何も知らない国民はこんなことになったのはお前のせいだって、怒っちゃって…ついには王子の命を姫が奪った、とかやっぱり盗賊の子は盗賊だって言い出したわ」
「…ひどい…」
「姫は国民たちが怖くなって…とうとう国から逃げてしまったの」
「逃げちゃったの⁈それじゃあ国が…!」
「国は王がまたまとめてくれたから大丈夫よ」
「そうなんだ…よかった…」
心から安心したように少女は息をついた。
「姫がいなくなってからも国民は姫を「盗姫」と呼んで、今もまだ悪口を言っている…って言われてるわ」
「そんなのひどいよ!お姫様だって頑張ったのに…」
「仕方ないわ。国民は何も知らないんだから」
少女は納得がいかないようにむすっとしていた。
「…とりあえず、お話はこれでおしまい」
「え〜っ、もう終わり?」
「終わりって言ったら終わりよ」
「むー…でもいいや、王子様のおかげで国は平和に戻ったんだもんね?」
「ええ。……本当にすごい人よね…」
「…お母さん?」
少女は不思議そうに首を傾げた。
「ああ、ごめんね。つい…」
「いいけど…なんかつらそう」
「え…?そうかしら?」
「うん。お話したから疲れちゃったのかも…ごめんなさい」
「いいのよ。私もお話したかったから」
少女は優しく頭を撫でられ、気持ち良さそうに目を閉じる。
「…ねぇ、今度このお話に出てくる国に行ってみない?」
「えっ!本当にあるの?その国って」
「ええ、あるわ。私もよく知ってるところだから」
「へー!すごいね、お母さん!」
「すごくなんてないわよ。ただ、その国に私のお父さんがいるってだけよ?」
「ってことは、私のお爺ちゃん?会えるの⁈」
「もちろん。…ただ…」
「…ただ?」
「………なんでもない。…今度絶対行こうね」
「うん!」
嬉しそうに頷く少女の顔はまるで昔の自分を見ているようで懐かしくなる。
ライ兄さん。
私はこの子のおかげでようやくあなたの愛した国に戻る決心がつきました。
今度こそ絶対に挫けません。どんなに国民たちが非難するしてこようとも絶対に。
あなたのためにも国を守ります。どうか見守っていてください。
…そして今更だけど
ありがとう。
fin




