7.お着替え
翌朝、俺を起こしてくれたのはアゼルだった。
寝ぼけた頭で起き上がろうとして失敗する。
あー……めんどくせぇ……。
改めて固いベッドに両手を着いてもう一度起き上がる。
半分目が空いてない状態の頭に手を添え左右に振ると長い髪がバサバサ暴れる。
あー……ひたすらめんどくせぇ……。
この身体になって二日目。全く慣れねぇ……。
いつも通りの感覚で身体を動かそうとすると大抵の場合裏切られる。当然悪い意味でな。
しばらくはストレスフルな生活になりそうだ。
ボッサボサになった髪は手櫛で整えると綺麗におさまった。
長いままだと非常にウザったいのでヘアゴムか何かでまとめたいんだが、生憎そんな気の効いたもん持ってねぇしなぁ。
アイツら何か持ってねぇかな?
着替え中の馬鹿二人に視線を転じる。二人とも俺と同じで朝に大層弱いみたいだ。
『半分寝てます』といった様子でもそもそと動いている。
ちょうどアゼルがズボンを穿いていたので尻尾をどうするのか期待して見てたら
尻尾は完全無視して穿きやがった。お前にはガッカリだ。
今は右足と一緒に大人しくズボンの中に収まっている。
でも昨日は外に出してたよなぁ?
そんな事を考えてたらズボンの中でモゾモゾと尻尾が動き出した。
右足の布の下で何かを探るようにモゴモゴ尻尾がのたうち回っている。
しばらくモゴモゴすると――
ズボンの尻部分に開けられた穴からニョキッと生えてきやがった。
昨日さんざん荒ぶってるところ見たけどこれは予想外だわ……。
結構、自由自在に動かせるもんなんだな尻尾って……。
朝から珍しいもん見た驚きでちょっとだけ目が覚めた。
グシグシと目を擦り俺はゆっくりと背伸びをする。
窓越しに外を眺めると森はまだ薄暗かった。かなり早い時間に起こされたようだ。
もう一度大きく背伸びをして立ち上がった。
「おはようございます」
俺は着替え中の二人にペコリとお辞儀をして挨拶した。
「おはよ。コータ」
尻尾を振り子のようにゆらゆらと左右に振りながらアゼルが近づいてきてゴリゴリと頭を撫ででくる。
寝ぼけてて力加減が調整できてないのか、ヤツの手の動きにあわせて首ごと揺れる。
おー……結構気持ち悪い。
俺の脳みそをシェイクしたいのなら非常に有効な手段なんだが
俺の頭を撫でたいのなら最悪の悪手と言わざるを得ない。ぶっちゃけ首痛てぇ。
「嫌われんぞー」
そんな俺たち二人のブレインシェイカーな光景を見たシシリが一言苦言を呈すると
唐突にアゼルの手が止まった。
目があう。寝ぼけ眼でパチクリと瞬きする。
再び目があう。俺の頭から手を離す。そしてフワリと笑う。
「おはよ。コータ」
まさかの本日二度目の朝のご挨拶だ。さっき挨拶したよなぁ?
一回目の挨拶から一分も経ってねぇぞ。どんだけ朝弱いんだよお前……。
「お、起きたか?コータ。おはよ」
さらにまさかのシシリの起床確認だ。さっき庇ってくれたよなぁ?
さっきアゼルに苦言を呈してから30秒も経ってねぇぞ。ホントどんだけ朝弱いんだよお前ら……。
馬鹿二人だ。まごうことなき馬鹿二人だ。ダメな大人の見本市だ。
よくこんな状態で着替えなんて出来るもんだな。逆に感心しちまうな。
髪を束ねるものがないか聞きたかっんだが、ダメな大人達に言っても無駄だろう。
今のコイツらにはレベルが高すぎる質問だ。代わりにYes/Noで答えられる簡単な確認をする。
「えっと、私は着替えなくていいんですよね?」
制服に着替えさせるつもりなら昨晩のうちに袋に仕舞わせたりはしないだろうし。
そう予想しての事だったが、案の定アゼルが肯定する。
「おお、コータはそんままでいいぞ。
腹減ったか?着替え終わったらスグ飯にすっからもうちょい待っててくれなー」
昨日の晩飯がアレだったんだ。今日の朝食のレベルも推して知るべしだろう。
たとえどんなにマズかろうとちゃんと食わせてもらってんだ。たとえどんなにマズかろうと俺に文句をいう権利なんてない。たとえとんなにマズかろうとちゃんと食わせてくれる馬鹿二人には感謝してる。
そう、たとえどんなにマズかろうともだ。
ホント絶妙のマズさだけどな……。
罰当たりな事を考えてたら、シシリが付言してくる。
「あー……コータ。
飯食ったらスグ出発すっから、今のうちに昨日洗った靴下取り込んどけー。
んで忘れ物ないか確認したら椅子に座って待っててくれなー。こっちもそろそろ着替え終わるからよ」
そういや、アゼルに靴下洗ってもらってたんだったな。
二人の全身をよく見ると、確かにたっぷりと時間をかけて行われた二人の着替えもようやく終わろうとしている。
二人の衣装は寝る前に着てたラフな服装とは違いカッチリしていた。
服の事は良く知らねぇけど、ヨーロッパあたりの軍服とか近いんじゃねぇか?
アゼルの服はやたらとボタンが多いのが面倒そうだ。
シシリはの服はアゼルよりはシンプルでボタンは少ないがその分紐で締める箇所が多くやっぱりコッチも面倒そうだ。
でもまぁ
シシリの言う通り靴下を回収して荷物チェックし終える頃には着替え終わってるだろ。
「それじゃ靴下取り込んできますね」
特に反論することもなかったので、俺は素直に頷くと寝室のドアを開けた。
☆.:*:・' .:*:・'゜☆' .:*:・'゜☆' .:*:・'゜☆'
玄関先に干してある靴下を回収し荷物チェックを終えると
テーブルの上には宣言通り朝食が用意されていた。
パンが5個づつ乗せられた皿が人数分給仕されていて、テーブルの真ん中にはバスケットの代わりにジャムっぽいブツが詰まったガラス瓶が置かれている。
果たしてどんな味がすんのか……。
昨日の『肉の煮込み』を思うと暗澹たる気持ちになる。
そもそもホントにジャムなのか……?
目の前で馬鹿二人がパンに塗りたくって食ってるので、少なくとも用途はジャムと同じはずだが。
結果的にジャムらしきブツはジャムだった。
しかも意外なことに普通に美味かった。お陰でクソ固ぇパンもまぁまぁ美味しく食えた程に。
頑張って食ったけど少女の胃では3個で限界を迎えたので
食えなかったパンは1個ずつアゼルとシシリが食ってくれた。
皿は私物らしく朝食が終わるとアゼルが回収してジャム瓶と一緒に鞄にしまう。
「んじゃ早速だけど出発すっか」
食事を終えた頃にはすっかり目の覚めたらしいアゼルの号令で
俺たちはクィンズプリシアに向けケイコク宿を後にした。
ほぼ着替えシーンだけ、、、、だと?
ちなみに二人の服装は
アゼル → 「FF11 ウォー装備」のキーワードでGoogle画像検索
シシリ → 「FF11 ダブレット」のキーワードでGoogle画像検索
見たいなイメージです。