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百葉箱

作者: 透明オセロ




 百葉箱の中には百枚の葉っぱが入っている。


 とおばさんはおしえてくれた。

 そこらへんのおばさんじゃなくて、おかあさんのいもうと。だからわたしは信用できる大人の話と何の疑いも持っていなかった。


 百葉箱の中には百枚の葉っぱ。

 きんいろとぎんいろの葉っぱが入っている。

 寒い地方にはきんいろを多めに、あたたかいところではぎんいろの割合が増える。

 その分量は気象庁の偉い人たちが毎年会議を開いて調整している。枚数を何度も数えてから百枚きっちりを特別のガラスのビーカーに入れて特注のガラスのふたをしめる。

 そのときに葉っぱ同士がたてるしゃらしゃらんという素敵な音を聴けるのは気象庁の人たちの特権なのだとおばさんはとてもうらやましそうに話していた。

 ガラスのビーカーはとても防音性にすぐれているから一度ふたをしてしまうとどんなにビーカーを振ってももう音は聴こえない。

 わたしは不思議に思っておばさんに尋ねた。


「ビーカーじゃなくて瓶じゃないの?ガラス瓶」

「どうして?」

「だってビーカーって注ぎ口があるでしょう、ふたをしても隙間が出来ちゃう」

「だから特別製のふたって言ったでしょう。瓶じゃなくてビーカーなの」


 きんいろとぎんいろの葉っぱはビーカーに入れられたまま百葉箱の中におさめられる。

 そのまま一年。

 一年後に葉っぱはこなごなに砕けてきらきらひかる砂になっているのだそうだ。その砂を注ぎやすいように容器はずっとビーカーなのだ。

 砂をどこに注ぐのかはわからない。おばさんが話さなかったのか、わたしには興味のないことだから忘れてしまったのか。


 わたしの希望では注ぐときにきらきらひかる砂からきらきらひかる水になってもらいたい。

 油膜ではなく虹色にひかる水。

 とてもきれいだ。


 きっとそれは、おそらく多分、地面にぶつかるときに音もなくはじけて、そして、消えるのだろう。

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