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第6話~決闘(噛ませ犬)~

更新遅くなってしまいました(汗)すみません。毎日更新は辛くなって来ましたが可能な限り、更新ペースは早目を維持したいです。


お気に入り登録してくださった方々、感想とご意見を下さった方。ありがとうございます!

今は「ユミエル様の初近衛兵士の任命式典パーティー」とやらの真っ最中である。

前回はテラスでROMってても平気だったんだが、今回はそうもいかない。なんせ名前が名前だしな……。

俺はユミエル姫と一緒にいるんだが、さっきからとっかえひっかえ貴族のおっさん方が、挨拶と牽制と売り込みのために俺らのもとにやってきてる。対応は全部ユミエル姫がしている。俺がやるとボロが出そうだし、問題を起こさないワケがないのは分かりきってるからな。


ちなみに今日はユミエル姫の誕生日パーティーから1週間がすぎたところ。俺というユミエル姫唯一の近衛の存在が発表されたことで、あの後俺の素性を調べるために貴族連中は躍起になってたみたいだ。

まぁ1週間じゃたいした情報は集められなかったみたいだし、そもそも俺の素性なんて調べようがないんだがな。


で、まぁグダグダと何が言いてぇんだ?ってーと、要するに暇なんだわ。ユミエル姫の斜め後ろで突っ立ってるだけなもんだから暇でしょうがない。次々来る貴族おっさんズは全員俺にガンくれやがるし、かと思えば、自分の手の内の者をユミエル姫に近衛として勧めたりと、なんだか暇な上にムカついてくる。


どうも俺がユミエル姫の近衛に就任したことで、ついに彼女が近衛を取る気になったと思っているみたいだ。実際には俺は守護精霊の預言のお陰でここにいるだけで、彼女の気が変わったわけじゃないのにな。


そして次に来たおっさん……。今日の中で1番無理だわ。もう生理的に受け付けないレベル。油でギトギトの3重顎の顔。成金臭しか漂わないセンスのかけらも感じられないアクセサリー類。紫色の毛皮みてぇのがまるで似合っていない(成金臭い野郎としてはある意味似合っている)。その顔には下心しか見えない。隠してるつもりなのか、隠す気がないのか、隠すという発想にすら至らないのか……。個人的には3番目が有力だな。


そしてその横にいる息子らしき奴。父親が豚ならこっちは子豚がぴったり。顎はまだ1つだが、油まみれの上に、下心しかない間抜けそうな顔。でっぱった腹がこれでもかと存在感を主張している。体制が若干ふんぞり返ってるのも気入らない。自分が世界で1番偉いと思ってるタイプだな。


父親が王家に取り入ることも考えてる分まだマシと言える。このガキはユミエル姫の身体目当てとしか思えないな。ちなみに俺は、女性をそういう対象としてしか見ないゲスが大嫌いだ。するとクソガキがこっちに視線を向けてきやがった。こっち見んな気色ワリィ。もうこの服捨てて、俺は脱皮でもするしかないな。見られるだけで汚れる。


「おい!お前!」


何か話しかけてきやがった。答える義務も義理もないのでスルー。耳が腐るぜ。


「聞いてるのかっ!?お前だよ!お!ま!え!!」


チッ……。スルーしてんだから話しかけてくんなよ。聞こえてねーワケねーだろハゲが。

だがこいつは、ほっとくとウザさがオートで加速度的に増すタイプとみたので、左右と自分の後ろまで確認したうえで、答えてやる。


「なんか用ッスか?」


一応丁寧に言う努力はしたが、こいつ相手に敬意を払う理由がないのでついテキトーになる。


「なんて無礼な態度だ!ぼくを誰だと思って「知らね。あんた誰ッスか?」


とりあえず被せる。


「お前!!この僕をエルダー・バン・デフスと知っての無礼かっ!!」


真っ赤になっててマヂキモイんだが……。つか知らねっつったじゃん。まぁ知りたくもねーケド。


「なんだとぉぉぉぉぉぉ!!!!!お前バカにしてんのか!!」


ム、声に出てたらしい。まぁバカにしてるし、ついでに言えば蔑んでもいる。


「チッ……。んで、そのエロダー・パン・デブズさんが俺に何の用で?」


「エルダー・バン・デフスだ!!たいして役にも立たなそうな奴が近衛なんかやりやがって。お前はどうせユミエル姫が目当てなんだろ?お見通しなんだよ!下民めが!!」


ブチッ……。自分のキレる音なんざ久しぶりに聞いたぜ。イラッ☆とかカッチ---ン!!とか言うことすら忘れたじゃねーか。


「ほう……。言うじゃねーかブタ野郎が……。そりゃ手前のことだろーがよぉ?あぁ?」


完全に俺の怒りは有頂天だ。周りの人がだいぶ引いてる気がしなくもないがまぁいい。


「言ったなっ!?僕をブタと言ったな!?絶対に許さんぞ!!お前、僕と決闘しろ!!」


とたんに周りがザワつき始めたが気にしない。決闘とはまたお約束みたいなもん持ってきやがったな。だがこうつを潰すにはもってこいだな。


「いいぜ、受けてやるよ。せいぜい後悔しやがれ」


そして場所は移って中庭。周りには会場にいたほとんどの人が集まって観戦しようとしている。耳を澄ますと「これであの近衛の実力を見られる」とか「デフスの子息は性格はともかく、優秀だと聞く。あの近衛がどこまで持つか」なんて声が聞こえる。ザワザワ言ってたのは俺の実力を見れるチャンスだからか。つかこのブタ強いのか。見かけに因らないなんてもんじゃねーんだが……。


「ではこれより、エルダー・バン・デフス対カイト スズキの決闘を行う」


審判には意外にもカイザが名乗り出た。


「ここでお前を倒して、近衛の座は僕が貰う!!」


「よく鳴くブタだな。空気が汚れるから呼吸を止めてくれないか?」


「お前ぇぇぇぇぇぇ!!」


「始めっ!!」


ブタがらしきものを杖を振り上げる。ちなみにブタは目が黄土色なので土が得意なのかな?まぁカンケーねーケド。


「死ねぇぇぇぇぇ!!!石槍(ストーン・アロー)!!」


どう考えても初級の呪文じゃねーか。優秀とか絶対ウソじゃん。よける必要性を感じないので俺は動かない。(両手はポケットに突っ込んで相手を挑発するのも忘れない)


「ハッ!!どうしたっ!?ビビって動けねーのか!!!ざまーみろ!!!!」


バチィッ!!!!!


石槍(ストーン・アロー)はおれの足元に転がって砕けた。A.〇.フィールドさまさまだ。


「なっ!?お前、なにをしたっ!?なんだそれ!?」


「答えるわけねーだろ。ちったぁ無い脳みそ使いやがれ」


俺は両手をポケットから出すと、パンッ!と合わせてから地面に付く。ゆっくり持ち上げるとバチバチ音を立てながら出現したのは一振りの漆黒の刀。


天鎖〇月を錬成しました☆


「!?なんだそれは!?魔法なのか?そんな魔法見たことも聞いたこともないぞ!!」


「答える義理はねーな」


俺は左手を顔の前に持ってくると、ゆっくりと下に降ろす。


顔に纏ったのはホ〇ウの仮面。同時に俺は殺気をブタにこれでもかと浴びせる。


「ひいぃぃぃぃぃいいいいいぃぃぃぃぃいいいいっっっっ!?!?!?!?!?!?!?」


ブタは完全に腰を抜かしている。顔も涙と鼻水でグッチョグチョだ。キモ度が上がってんな。ざまぁ!


「覚悟はいいか?いくぜ?」


「ひぃぃぃいぃぃぃいいぃぃいい!!!!!!」


「月牙〇衝!!」


放たれた黒い斬撃はバカみたいな音を立てて、尻もちついてたブタの足元に着弾。土煙りが晴れると地面には三日月型の穴と、そのすぐ横で泡吹いて気絶してるブタ。いい気味!ギャラリーがやたら静かだと思ったら皆さんポカンとしてる。まぁこれで、俺の実力にケチつけてくる奴は減るだろ。


「勝者、カイト スズキ!!」


まんまとブタを下すと、仮面と刀が崩れ落ちた。仮面は時間切れだが、刀は土で作ったからな。強度が残念すぎたな。


周囲は徐々に音を取り戻し、会場へ戻っていった。俺は錬成で穴の空いた地面を修復するとユミエル姫のもとに戻る。


その後は、特にこれと言った問題も起きず、やがてパーティーはお開きとなった。

余談だがあのブタは魔法学校での成績はホントに優秀だったらしく、教師も手を焼いているのだそうだ。





その夜。俺はどういう訳かユミエル姫に呼び出された。近衛になって1週間。直接呼び出されるのは初めてだ。そもそも、ユミエル姫は出会った時以来、城から出ていないので俺の仕事は書類系ばっか。必然的に顔を合わせる回数も多くないので、まともに話したのは王都に来るまでのってた馬車の中じゃないだろうか?


部屋の前に着いてドアをノックすると「どうぞ」と返事があったので「失礼しま~す」と言いながらややコソコソ入る。


天蓋付きのベッド、木製のテーブルとイスが2脚。その片方に水色のネグリジェを身に纏ったユミエル姫は座っている。窓から月明かりがさしこんで逆光になっているので顔はよく見えないが……あれは笑ってる?ユミエル姫はチョイチョイと手招きして俺を椅子に座らせた。


「急にどうしたんですか?それもこんな夜中に」


「少し聞きたいことがあって。あ、これどうぞ」


そう言ってハーブティーとクッキー(っぽいもの)を勧めてくるユミエル姫。


俺は何となく、出されたお茶を飲みつつユミエル姫がはなしだすのを待っていた。


「今日……決闘をしたでしょ?どうして?」


決闘なんかするなという意味かとも思ったが、ニュアンス的に聞かれたのは、決闘をする原因はなんだったのかを聞いてきていると分かった。


「あぁ、極めて個人的な理由ですけど、俺は女性を性的な目でしか見ない奴が大嫌いなんですよ。あいつは謁見中ずっとユミエル様をそういう目で見てたんですよ。そこに加えて「お前はどうせユミエル姫が目当てなんだろ?」ときたものですから。つい」


そう言った俺の眼をユミエル姫はじーーーーーーっと覗き込んでいた。眼差しが真剣そのものだったので、逸らさずに見つめ返す。


やがてユミエル姫はクスッっと笑うと、お茶を1口飲んでから言った。


「あなたは不思議な人ね。今まで私のことを、そういう視線で見なかった男の人は2人しかいなかった。お父様と先生(カイザのこと)よ。それ以外の男性はみんな程度の差はあっても私にそういう視線を向けてきたわ。私はそれが大嫌いだった。今日のデフス親子なんてその最たるものよ。今だから言うけど私、あの人達が本当に嫌だったの。だからあなたが彼に勝った時は思わずやったって言っちゃった。だからこそ気になったの。あなたが何で決闘を受けたのかが」


日頃からそう言う目で見られてたのには気づいてたのか。


「あぁ、それでさっきの質問を?」


「そうよ。そしたらあなたは「女性を性的な目でしか見ない奴が大嫌い」なんて言うじゃない。でもあなたはウソを付いているようには見えない」


ここで1度お茶で喉を潤す。俺はクッキー(的ななにか)をつまむ。


「だから、お礼を言おうと思って。ありがとうカイト殿」


う~む。なんか知らんうちに感謝された。


「えっと、どういたしまして?」


我ながらなんとも間抜けである。


「それともう一つ。これは私からのお願いなんだけど……」


「なんです?」


「敬語はやめて欲しいの。後ユミエル様っていうのも」


「…………は?え?なぜ?」


てゆーか随分今更だなおい。


「私が今まで近衛をつけてなかったのは知ってるでしょ?」


「えぇ、大人数についてこられるのが嫌なんでしたよね?」


「それもあるわ。もう一つも理由がその敬語なの。これは両親譲りこも知れないけど、堅苦しいのは好きじゃないの。まして近衛は城から1歩出たら常に行動を共にするわけで」


「あぁ、なるほど。それじゃ気疲れしちゃうってことですね?」


「そうなの。近衛はカイト殿1人しかいないし、お願いできませんか?」


俺の答えなんざ「敬語」って言葉がでた瞬間から決まっている。


「ユミエル様も敬語を止めて下さるのなら」


「ホント!?分かったわ。私も敬語はやめます……やめる」


「おーけー、それで決まりだ。んじゃこれからは遠慮なくタメ口でいかせてもらうとしよう」


ユミエル姫は頷いた後、今度は顔をほのかに赤く染めてもじもじしながら言った。


「その、カイト殿にはえっと、私のことはこれからは、あの、ユミィ、と呼んでもらえると、その……」


「?愛称ってやつか分かった。ならその「カイト殿」ってのやめてくれ。カイトでいい」


「! あ、えっとわかりまs……分かったわ、か…か…か……カイト」


なぜか真っ赤になって下を向いてしまうユミエル姫改めユミィ。愛称で呼びあうの恥ずかしいのか?あだ名みてーなもんだろーに。


「それじゃあ俺はそろそろもどるよ。こんな深夜にお姫様の部屋にいるのはあまりよろしくないだろうしな」


「あ、うん。夜遅くにわざわざありがとう」


「いいって。んじゃおやすみ~」


ユミィの部屋を後にした俺はさっさと部屋で眠りについた。







---サイド:ユミエル・イル・フォン・アリネシア---


彼はおやすみと言い残して部屋を出て行った。


やってしまった。彼に愛称で自分を呼ぶように頼んでしまった。彼は知らないようだったけど、この世界において、親以外の異性と愛称や呼び捨てで呼び合うというのは、ただ親しくなった以上の意味を持つ。すなわち結婚など、将来を見据えた上での交際を意味する。今回は彼がそれを知らないので、私が一方的に宣戦布告したようなものだが、実質告白したも同然なわけで……。

いくら彼が私のために怒ってくれたのだとしても、いえ、それは嬉しいのですけど、そういうことではなく,えっとだから……。


あぁ~~~~~~!!まだ顔が熱い。絶対に赤くなってるわ。こういう時は早く寝るに限るわねうん。







---サイド:鈴木海人---


翌朝、朝食を済ませて、途中で会ったカイザとミアさんと一緒に訓練場に向かう途中でユミィを発見。


「ユミィ!!おはよう」


いきなり声をかけたせいか、一瞬ビクッってなった後、こっちに振り返って


「おはよう、カイト」


そう言ってふんわりと眩しい笑顔を向けてくれた。あぁユミィ美人だなぁ……。とか思ってると後ろでガシャンッ!と音がする。振り返ると、カイザとミアさんが「驚☆愕!」って感じの表情を顔に張り付けて固まっている。足元には盾やら剣やらが散乱している。


「2人ともなにやってんだ?ポカンと口あけて、なんか残念な感じに見えるぞ」


「いや……おま……」


カイザが金魚みたいにパクパクやっているが言葉になってない。

よく見ると他の周りの人たちも似たようなかんじだ。どうしたんだ?

ふと見るとユミィは頬をピンク色に染めている。なんで……?



その日訓練場で、ことの実態を知った俺がカイザ達と同じ顔で硬直する羽目になったのは言うまでもない。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

ブタ君はギー〇ュッポイのになる予定でしたが、いつの間にか全然違う人になりましたw

いただいた感想に「国々の説明や魔法の説明を纏めたもの」書くといいのでは?と言ったかんじのものを頂きました。アドバイスありがとうございます。資料的なものとしてぜひ作りたいと思います。(主に作者が続きを書く上で必要w)ただ作者はまとめるのが下手なのでそっちは時間かかるかもしれません。ちゃんとまとめ次第投稿します。


次回は名前だけ出てきたあの娘を出したいです。


誤字・脱字や感想ご意見などありましたらお願いします。

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