第1話~出会い(ご都合主義)~
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神界からロンブストへはてっきり転移的なことをすると思っていた俺の予想は完全に裏切られた。
神様のじーさんにお姫様のことを託された直後、俺の足元にぽっかりと穴が開いて、そのままフリーフォールよろしく落下させられた。ちなみに今現在も絶賛落下中である。すでに15分くらい落下し続けているんだが、どういうわけか頭がしたになることはない。まぁ頭に血が集まらなくて助かるが。
と、そこにじーさんの声が普通に耳から入ってきた。
「カイト。聞こえるかのう?聞こえたら返事してくれ」
落下中なので多少風の音がうるさいが、こっちもどういうわけか自由落下真っ最中のわりに静かなので聞き取ることはできた。
「おぉ、聞こえてるぜ。つかこういうのって普通テレパシーみたに頭ん中に直接響くのがお約束なんじゃないの?」
「細かいこたはいいんじゃ!前回言ったように今からお前さんに力を授けるでの。しばらく体が光ったりとかするじゃろうが、まぁ5分くらいで収まるからあまり気にするでない。ロンブストまで後10分強じゃからの。お前さんが向こうに入ったらもうわしはほとんど手だし出来んからそのつもりでおれよ?それではな」
「おう!任せとけ!いろいろありがとな~」
じーさんの声が聞こえなくなるとすぐに言われた通り体が薄く光り始めた。光は徐々に徐々に強くなっていき……。強く…強く……つよ…………。
「強すぎんだろ!?なんだこれ!?眩しいよ!!腕がってか、体全体が太陽みたいになってんじゃねーか!?光ったりとかなんてレベルじゃねーだろ!!…………まだ強くなんのかよ!?」
こうして真夏の快晴の正午の太陽みたいになってた俺は発光が終わってもしばらく目が見えなかった。
じーさんの言ってた通りあれから10分ちょっとで下の方に出口らしきものが見えてきた。いよいよ異世界に入るのかと思うと期待と不安が入り混じってテンションが上がり始めた。そしてついに、出口を抜けて………………空中に放り出された。
「まだ落ちんのかよ!?」
いやいやいや落ち着け俺。ツッコムとこはそこじゃない。今たぶん上空200メートルくらいだ。このまま落ちると汚い花火になること必須なので何か対策を考えねば。俺は今いろんな能力とかを使えるようになってるはずだから、地面に激突しても平気そうなのとなると……。よし!これだ!
「鉄塊!!」
直後地面に激突。俺は某C〇9の技のおかげで無傷。便利だなこれ。土煙りが晴れて周りが見えるようになると、そこはひどい有様だった。俺を中心に直径50メートル、深さ5~6メートルほどのクレーターが出来ていた。左手には広葉樹の森が広がっていて、右手には草原。草原の向こうには山脈が続いている。ここは街と街を結ぶ街道みたいな場所らしかった。とは言っても街灯なんてないし、そもそも舗装されていない。後ろの道はひたすら続いており、すぐ近くに街は無いようだった。
さて、左右に加えて後ろまで確認してなんで前に言及しないかというと、とっっっっっってぇぇぇぇぇもめんどくさそうな匂いがプンプン(もう死語か?)しているからだ。
しっかりした作りの、それこそ素人の俺が見ても品質が高いことがわかる馬車。さらにそのまわりに騎士みたいな人たちが20人くらい。どう考えてもあの馬車には身分の高い人が乗っているに違いなかった。[兵士]ではなく態々[騎士]と言った(思った)のは、彼ら彼女ら(女性も混ざっている)の服装や装備が、これまた素人目にみても上質のものだとわかったからだ。成金趣味のもではなく、よく使い込まれた実戦仕様のものだ。
彼らは俺が落ちてきたのを見てかなり驚いたようだったが、すぐに立ち直るとクレーターの中心に俺がいるのを見るや、見事な早さとチームワークで俺を包囲した。もうヤバい予感しかしない。
「#%&%#('&%#"&$'#&()!&)'#!&)&$')%"(&)!!!」
騎士のなかの1人が何かいって来たが当然言葉が分からない。雰囲気から察するに、彼が護衛隊長か何かなのだろう。
「#'&#$&)"(#&)!&$)(&#'&%$#!(&(#&($'&(#!!!」
雰囲気なんて察してたらまた何か言われた。が、今しゃべったところでこっちの言葉も通じないのは確定的に明らかなので、さっそく力を使うことにする。
「翻訳コ〇ニャクお味噌味!」
翻訳と言ったらこれに限る。ポケットが四次〇ポケットになるのは荷物運びの面から見ても便利そうだと今更気づく。騎士の人達は警戒してるのか様子をうかがっている。まぁ目の前で何か叫んだと思ったらいきなり食事を始める奴を警戒しない人はいないだろう。
「あらためて、はじめまして。俺は鈴木 海人。海人でいい。あんた達と敵対するつもりはないし、怪しい人間でもない」
予想以上に高圧的かつ怪しさ倍増な挨拶をしちまった……。ほら隊長っぽい人の眉間の皺が増えた。
「なぜ始めの2回の問いかけに応じなかった?」
「言葉が通じてなかったんだ。今しがた俺が食ってた物があるだろ?あれを食べることで言葉が通じるようになったんだ。食べる前に名乗ってもどうせ通じなかったからな。」
「そんな食い物は聞いたことがない。カイト……といったな?どこから来た?」
「出身を聞いているのなら日本。どこからこの場所へ来たのかを聞いているのなら神界だ」
ザワザワザワ……。騎士たちにわずかだが同様が広がっているようだ。
日本は知らないのは当然として神界も通じないのかな?下手に嘘つくより逆にいいかと思ったんだが。
そうなると俺はただの変人ということになって更にめんどくさくなるんだが……。
しばらくザワザワしたあと、隊長っぽい人(以後隊長(仮))がまた質問してきた。
(この間ずっと斜め上を向いているのでいい加減首が痛いんだが……)
「神界といったな?貴様は堕ちてきたのか?それとも神の使いか?」
落ちてきたのは確かだが、文脈的に字が違う気がする……。ここは誤解の無いように説明せねば。
「俺は神の使い(またの名をパシリ)だ。落下はしてきたが別に堕天したわけじゃない」
「…………。そこを動くなよ?そのまま待っていろ」
そう言うと隊長(仮)は馬車の方へ行った。クレーターの深さが深さなのでここからじゃ見えない。
他の騎士たちは相変わらず俺を包囲している。両手をポケットに突っ込んで待つこと5分。隊長|(仮)が戻ってきた。
「貴様が本当に神の使いかどうか、試させてもらう。上がってこい」
そう言うと隊長(仮)は草原の方へ歩いて行った。何をどうやって試すのかさっぱりだが、うまくいけばこっちのことを信じてくれる(少なくとも包囲はされなくなる)かもしれないので、おとなしく付いて行くことにする。
「そこに立て」
そう言って自分の6メートルくらい先を指し示す隊長(仮)。どう見ても決闘ですね本当に(ry
とか考えてると、馬車の扉が開いた。中からは俺と同じか少し下と思われる女の子、訂正、美少女が出てきた。
薄い水色に少し銀色を混ぜたかの様な色合いの腰に届くほどの髪。エメラルドグリーンの澄んだ瞳。青と白を基調としたおとなしめのデザインのドレスを身に纏い、頭の上には小さめのそれでいて確かな存在感を嫌にならない程度に発するティアラ。両手には肘まである手袋をつけていた。
誰がどう見ても王族。そこら辺の貴族なんて問題にならない、周囲の者を飲み込む雰囲気。かといって威圧感など微塵もなく、第1印象は 静か 透明 。リアルでこんな綺麗な人間を見たのは生まれて初めてだ。
「あなたが神の使いを名乗る方ですね。お名前は?」
透き通った鈴のような、聞く者に安らぎを与えるであろう声に呆然となりかけるも、何とか表には出さずに冷静に返答する事に成功する。
「俺の名前は鈴木 海人。君の言う通り神の使い(パシリ)だ。君は?」
「貴様!!なんという無礼な態度だ!!」
騎士A君テンプレな発言をありがとう。
「かまいません。神の使いであることが真実ならば敬意を払わねばならぬのはこちらです」
なんてできた娘なんでしょうか。思わず丁寧語になっちまったぜ。
「私の名はユミエル・イル・フォン・アリネシア。アリネシア王国第1王女です」
まさかのご本人様いきなり登場。いやまぁ探す手間が省けたのはいいんだが……。これは世に言うご都合主義ってやつなのか?まぁいい。ありがたいのは事実なのでその辺は考えないことにする。だがこれで何が何でも神のパシリ(使い)と認めてもらわなきゃなんなくなったな。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
勢いで見切り発車のくせに初日2話投稿とかやらかしてます。こんな作者ですが生暖かい目で見てやってください。
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