第12話~機構発表会(そして人は堕落するのだ)~
お久しぶりです。更新おくれてすいません。
感想や意見くださった方々、ありがとうございます。
先日日間ランキングで1位になっていたようでビクビクしてますが、今後ともよろしくお願いします。
「前夜祭……ですか?」
「うむ。1月前から盛り上がってた通り、機構発表会はこの国で1番の目玉じゃからな。国中が大騒ぎなんじゃよ。前夜祭はすごいぞぉ~」
ドギック所長は遠足前日に興奮して眠れない子供並みに笑顔をキラッキラさせて言った。
つか目が光輝いてるんだが……。少女マンガも目じゃないくらいに。
「せっかくですから皆で行くです!きっと楽しいですよ」
ティルナちゃんも顔がすごいことになってる。もう目どころの話しじゃない。ティルナちゃん周辺の空間だけ空気が違う。そこだけスポットライトが当たってるみたい。
ちなみにティルナちゃんは、この3週間に差し入れ何かをほぼ毎日持ってきてたリリィやティアと加速度的に仲良くなっていった。特にリリィは年も近いし、ティアは精神年齢が低ゲフンゲフン。可愛らしい性格をしているので、最早親友と呼んで差し支えないくらいになっている。ユミィは少し年が離れていることもあってか、3人のお姉さん的ポジションにいる。
「そうと決まればさっそく準備しなきゃね!!」
「楽しみですね」
そこのがきんちょ2人。いくらなんでもテンション上がり過ぎ。つか準備って何すんだ?財布がありゃいいだろーに。あれか、オンナノコハタイヘンナンデスカ。ソウデスカ。
「ふふふ。楽しみねカイト?」
「あ、あぁそうだな」
つか俺も行くのは決定なのか。すっげぇ人なんだろうなぁ。超大変そう。主に護衛的な意味で。
「すまんがわしは所長じゃて、挨拶やらなんやらあるから一緒には回れん。皆で楽しんできてな」
「「「はーいっ!!」」」
ホント小学生か!あ、2人は年齢的には小学生か……?まぁいいか。
そして、前夜祭当日。
前夜祭のくせに朝っぱらから始まりよる。
ティルナちゃんと合流してからのチビーズ(リリィとティアとティルナちゃん)のはしゃぎようと言ったらそれはもう大変なものだった。
街のいたるところに屋台が出ていて、その光景は元の世界の神社なんかのお祭りを彷彿とさせたが、規模がハンパなかった。なんせ街1つがお祭り騒ぎ。当然出てる屋台の種類もいろいろで、中には金魚in流れるプール(流れが速すぎて水圧で紙が破れる)なんてアホなのから、輪投げ(らしき何か)なんて普通のものまで選り取り見取り。チビーズがこれを全制覇せんと猛烈な勢いで行動する上、ユミィの周囲に常に気を配らなきゃいけなかった(人多すぎてあんま意味なかったが)ので、夕方近くにはクタクタになっていた。。明日の発表会大丈夫か俺?
そしてついに、チビーズを見失った。あいつら何処に行ったし……。
「仕方がないわね。まぁこの国は治安もいいし、中央工房があるから迷子にもならないでしょ。ゆっくり探しましょ」
「そうだな。最悪見つからなくても夜になればホテルに帰ってくるだろうし」
さすがのユミィも疲れた顔をしていたので、俺達はチビーズを探すのは諦めてぶらぶらし始めた。
適当に露天をひやかしながら、喋ったり、食ったり、遊んだりしていた。
俺達の間には拳2つ分くらいの距離があった。
そしてたどり着いたのが明日の発表会の会場。
「これは……明日の護衛は大変そうだな……」
見晴らしのいい大きな広場、その中央に円形のステージ。360度どの方向からも丸見え。壁にするもんなんて何にもない。
「もう。カイトはまたそうやって……。明日は発表会に集中しなさい」
「つっても俺近衛なわけだし?そっちもちゃんとやらんと」
この1ヵ月新発明の開発に協力してきて、まともに近衛の仕事してないし、本業はそっちなのである。
「それはいいからっ!」
「いやいや、いいからって、そういう訳にもいかないでしょ。俺はユミィの近衛なんだから、ユミィを守るのが仕事だ」
なんだかユミィがピリピリしてる気がするんだが理由がさっぱり分からない。
「ユミィはお姫様なんだから。王女様を守るのは近衛の最大の仕事だろ」
「カイト……。それ、本気で言ってるの?」
ユミィの顔が怒りに歪んでいる。
「なに怒ってんだよ。俺なんか気に障ること言ったか?なら謝るよ」
「またそうやって!どうしてそんな風に言うようになっちゃったの?」
「は?俺は初めからこんなんだうが?」
チッ……。ワケ分かんねー。なんなんだよ。
「嘘よ!前のあなたはそんなことなかった!あなたはそんな人じゃなかったわ!」
「はぁ?お前に何が分かるんだよっ!?会って2ヵ月しか経ってないお前に、俺の何が分かるっ!?」
言ってから後悔した。今のはあまりにもキツすぎる。ヤッベどーしよーとか思っていると
「ぐすっ……。う、うぅぅぅ……」
ユ ミ ィ が 泣 き 始 め た 。
ちょっ!?えええぇぇぇえええぇぇぇ!?!?!?!?!?待て待て待て!!ちょ、おま、いや、え?いやいやいや、え?ちょま、ちょ、いやマジで、ちょっと!?
あああぁぁぁあああぁぁぁ!!!!!!うつむいてるし、両手がグーになって目もとにいいぃぃぃ!!!ヤバいよ!めっちゃ泣いてるよ!!どーすんだこれ!?誰だよ泣かせたの!!俺だよ!!ノリツッコミしてる場合じゃねーよ!!マジどうしよう!?
「あ、あああのあのあの、ユミエルさん?えっとその、あああのですね」
「確かに……、私はあなたのこと、殆ど何にも……、知らないわよ。でもっ……、初めて会った頃の……あなたは……、もっと、自由な人だった」
「いや、だからさっきのはそのえ~っとって……自由……?」
「近衛とか……王族とか……そういうのに囚われない人だった……。私は、身分とか、立場とか……そんなの気にしないで普通に接してくれるのが……とてもうれしかった。でもっ!徐々に徐々に、あなたは変わってしまったっ!最近は特にそうっ!護衛のことばっかり……」
「………………」
「いつの間にか……あなたは、私に1歩……遠慮するようになった……。他の人達と同じ。私は……あなただから近衛にするのを受け入れたっ!なのに……あなたは変わった。ううん、まるで本当の自分を押し込めてるみたい……。すごく無理してる。周りに合わせて、ホントの自分を押し殺してる」
俺は呆然としていた。自分の態度が変わってたなんてこれっぽっちも思ってなかったから。確かに、近衛隊長としての仕事をするうちに、王族がどれだけ偉い存在なのか実感したし、その血筋の大切さも知った。それでも、俺自身は何も変わっていないつもりだった。
だが、どうやらそうではなかったらしい。
こちとら『神の使い』だなんだと言われても、所詮は学校なる閉鎖された社会の中で18年過ごしてきただけの一般人だ。王族なんて聞けば無意識に頭が下がるし、お姫様なんて聞けば高嶺の花なんて単語を連想する。異物を徹底的に排除する閉鎖的な社会で生きていくために、回りと同化することを覚えた。目立たないように自然に変わっていくようになった。それこそ自分ですら意識しないくらいに。
「私は……自由に、のびのびしているあなたが好きだった。でも今のあなたは違うわ。小さな籠に押し込められた鳥のよう……」
「ユミィ……その……」
「デフス家の長男と決闘した日の夜のこと、覚えてる?私は、あの時「敬語を止めて欲しい」って言ったわよね。気疲れするから」
「あぁ、うん、そうだったね」
「今のあなたは、敬語こそ使っていないものの、態度は敬語を使っている時のそれよ。そんなカイトは嫌。だから約束して」
「約束……?」
「そう。これからも一緒にいるなら、もうその他所他所しい態度はやめて。王女ユミエル・イル・フォン・アリネシアでなく、私を見て」
ここ最近のユミィの機嫌の悪さの原因がようやく分かった……。なんてことはない。要するに俺の自業自得。ハッ……ばっかみてぇ……。なにやってんだろうね俺は。せっかく異世界に来てるのに、結局元の世界にいたころと同じことやってんの……。ホント馬鹿みてぇ……。
俺はユミィを見つめる。涙は止まっていた。怒ったような顔で眼は真っ赤になってた。泣いたせいでメイクがヒドイことになってる。全部俺のせい……。俺がちゃんとユミィと向き合わなかったせい。
「分かった。今日からはユミィを見る。ユミエル・イル・フォン・アリネシアじゃなくて、俺はユミィを見るよ。約束する。それと、今までごめん」
「本当?本当に、私を見てくれる?」
「あぁ。約束する」
それを聞いたユミィは、その顔に春に咲いた桜のような笑顔を浮かべた。
俺達はホテルに帰ることにした。俺達の距離は拳1つ分になっていた。
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翌朝。
今日はついにやってきた『機構発表会』当日。
昨夜ホテルに帰った俺は、ユミィの泣き腫らした顔を見たチビーズによって袋叩きにされた。結局ユミィが止めに入るまでボコボコにされ、その後事情聴取という名の尋問をされたが、これもユミィが止めたので結局なにも教えないままお流しになった。(その後チビーズにはお菓子をあげて餌付けすることで事なきを得た)
だが、それで平穏が訪れるかというと、そうは問屋が卸さず、ユミィが「今まで冷たくされた分の埋め合わせ」と称して何故か俺のベットに潜り込んできて、それを見た残り3名と1匹が「あ!ずるい!」「姫様抜駆けはダメです!」「わたしも入るです!!」『わたしもー!』とか言って突撃してきたせいで、ベッドは狭くなり安眠なんて幻想はぶち殺された。せめて全員が離れてくれていればよかったのだが、右腕はユミィが、左腕はティアがそれぞれがっちりホールドし、腹の上にはリリィとティルナちゃんが乗っかって顔も動かせない。両腕はそれぞれ未知のマシュマロな感触に支配されてるし、両肩は枕に、ついでに胸も枕に、腹はベッドにとなり、うっかり呼吸なんてしようものなら、女の子特有の甘い香りが漂ってきて、もうどうにもならなかった。(ちなみにルリは顔の上に乗っていた)ひとまず風を操ることで、呼吸なしに酸素の吸入と二酸化炭素の排出をしたが、おかげで一睡もできなかった。
翌朝、俺らと合流した所長の最初のセリフは
「なんじゃ?カイト君はずいぶんやつれとるが、他の4人は輝いてるのぅ……」
擬音で表すなら、ゲッソリとツヤツヤといったところか。
さて、そんな感じで徹夜明けの今日、いよいよこの1ヵ月の努力の結晶の公開日。いくら寝不足でもここで気合いを抜くわけにはいかない。
「何人くらい出るんですかね?」
「今年は100人くらいじゃったかのぅ」
「厳密には104人です」
発表会は所長であるドギック博士以外が抽選で順番を決め、順次中央のステージで各々の新発明を発表していく。ドギック博士は昨年度優勝者なので、最期の発表となる。
俺と、所長、それにティルナちゃんは発表選手ということで、選手席に、ユミィ達は観客席に座っていた。
量が多いので大会の他の参加者は割愛するが、流石は生活関係に力を入れる技術大国。たまに爆発したりしてる人もいたが、中にはエレベーターみたいなものまで開発してる人がいた。
そしていよいよ、最後になり、俺達の順番が回ってきた。
「さぁーー!!最後はここ19年連続優勝をしている歴代最強の最優秀機構士!ドギック・カトフううううううううう!!!!!」
司会の人のテンションやべー。
うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
あ、会場もですかそうですか。つかうるせー!!耳が壊れる!
「みな声援ありがとな。さて、今年わしが発表するのは、これじゃ!!」
俺とティルナちゃんがステージの中央で運んだそれにかかっているカバーを、所長が勢いよく取り払う!
「馬車に代わる次世代型車両じゃ!!名を『精霊石浮遊艇』!!」
『精霊石浮遊艇』通称『EFV』。
その外観はさながら小型のホバークラフトだ。楕円形よりは四角い気がする、しかし角のない四角形の精霊石。その上に板を敷き、座席や扉を設置。右前を運転席にして、そこにはハンドルと左右にレバーが2つずつ。ハンドルは車両の後部中央に位置する送風機の左右回転と連動しており、進路を調整できる。左のレバーは精霊石モーターとプロペラを接続or分離するためのものと、停車用に逆回転に切り替えるもの。右側のレバーは精霊石モーターを指導するものと、停止させるもの。
今回発表した物は4人乗りの乗用車くらいの大きさで、オープンカースタイル。雨が降ってきたら布の屋根を後ろから前に持っていく。ハンドル中央から底面の精霊石と魔力のやり取りができるので、荷物の量やや乗車人数によって精霊石内部の魔力量を調節し、反発力を調節する。地面から離れ過ぎると反発力を得づらくなるので、だいたい地面から20cmくらい浮かせるのが理想だ。
所長が解説を終えると、俺達は実際に乗り込んで、実演して見せた。運転席には俺、助席にはティルナちゃん、俺の後ろに所長。会場周辺を実際に走って見せると、始めは呆然としていた観客や他の参加者達が、ものすごい歓声を上げた。最高時速はおよそ50km/hといったところで、乗車人数や荷物が増えると速度は落ちる。
結果として、俺達は優勝。得点は会場にいた全ての人に1人1票ずつが与えられ、出口で投票。2位は15票差で、エレベーターの人。向こうはまだ実用出来る段階ではなかったのに対して、こっちはもう売り出せるレベルだったのが決め手だったようだ。(ちなみにこれによって、所長は20年連続優勝を成し遂げ、らいねんも所長になることが決まった)
その日はホテルで飲めや歌えやの大騒ぎを明け方までして、気絶同然で眠りにつくと起きたのは昼過ぎ。
皆で遅めのブランチを食べてから、所長とティルナちゃんは家に帰り、俺達は旅の準備を始めた。
「この街にも結構いたよな」
「1月ですものね。でも楽しかったわ」
「アリネシアにはないお料理も覚えられました♪」
「結局ずっとお祭り騒ぎだったけどね」
俺達は、この発表会が終わったことで、次の国へ向かうことにしていた。出発はもろもろの準備期間を考慮して1週間後。いよいよ、この街との別れが近づいてきていた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
なんか週間も3位とかになってますね。こんな初心者の初投稿を高く評価していただき感謝の念でいっぱいです。
本当にありがとうございます。
次回はいよいよ、次の大陸を目指します。
誤字・脱字のご指摘やご意見ご感想などありましたらお願いします。
追記:ご指摘ありがとうございます!「特典」→「得点」に修正しました。(8/20)