第11話~新技術?(オーバーテクノロジー)~
皆さんこんにちは。今回は技術大国ということで、ちょっと雰囲気の変わった物になりました。
感想にて「序盤は 神の使い>王族 だったと思うんですが、何時の間にかそれが逆転している」という意見をもらいました。はい、見切り発車のせいです、すみません。言われて初めて気づいたので、カイトの性格修正を兼ねて、ユミィとの諍いにしてみようと思います。まぁそんな大層なものにはならないと思いますが。
ではどうぞ。
中央工房に入って受付の人に事情を話すと、応接室に通されて待つように言われた。
「ゼラルのトップ……所長っていうんだっけ?この国で去年1番優秀だった人がやるんだろ?それでよく国家運営していけるな。政治家じゃなく技術者なんだろうに……」
「国民のほぼ全員が技術者だからこそ何とかなっているそうよ。皆自分の研究に忙しくて犯罪なんてほとんどないとか」
「外からきた連中はそうでもないだろうに」
「言い方は悪いけど、街全体が散らかりすぎてるせいで、泥棒の類は諦めるそうよ?何を盗めばいいのか分からないんですって。盗っても使い方が分からないとかもあるみたい」
正体不明の機械が街に転がってんのかこの国は。何かこの国自体が変態技術者の集まりな気がしないでもないな。
ふと部屋を見回すと、飾り棚に奇妙な物が置いてあるのに気づいた。灰皿をひっくり返した様な台座の上、1cmくらいの所に立方体が斜めに浮かんで回っていたのだ。立方体は白っぽい半透明で、その見た目はさながらラミ〇ルか、もしくはデカイ飛〇石のようだ。まぁサイズは掌サイズだし色違いだが。
しっかしあれ何で浮いてんだ?マジもんの飛〇石か?この世界にならあってもおかしくはないか……。
俺が首を傾げていると、ドアがノックされ頭頂部が残念な感じの白い口髭を生やした老人が入ってきた。老人と言ってもヨボヨボはしてないし、杖もついてない。白衣こそ着ていないものの、痩せたア〇サ博士
って感じだ。
「いやすまんのぅ。次の機構発表会はどうしたもんか考えとったら止まらなくなってしまっての」
老人はカッカッカと笑いながら言った。ユミィは立ち上がるとスカートを摘んでお辞儀をした。俺もそれにならって、立ち上がり礼をする。
「お久びりですドギック博士。お気になさらないでください」
「すまんの。あぁ、座ってくれ。そっちの君は噂の近衛君じゃな?君も座りなさい」
老人とユミィが座ってから、俺も座る。どうもこの老人が今のこの国のトップ=所長ってやつみたいだ。
「あらためて、ようこそゼラル連邦国へ。わしは所長のドギック・カトフじゃ。よろしくな」
「アリネシア王国第1王女、ユミエル・イル・フォン・アリネシアでございます」
「アリネシア王国近衛騎士団第3部隊隊長、カイト・スズキです。よろしくお願いします」
とりあえず自己紹介。まぁユミィと所長さんは知り合いみたいだったからほぼ俺のための自己紹介だ。ありがたい。
「まずはユミエル姫、少し遅れたが16歳の誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
一応旅の目的は大国を回ることなので、ぶっちゃけた話し、今のやり取りでゼラルでの目的は果たしたことになる。さっさと移動してもいいんだが、当然そんな勿体ない事はしない。所長さんもそれを分かってるようで、ユミィもすでに肩の力は抜けている。
「お2人は知り合いだったので?」
「うむ。エドワード(アリネシア国王)のことは奴が小さい時から知っておっての、当然ユミエル姫のことも生まれた時から知っておるのだ」
「年に1回くらいお城に来てくださってね。小さい頃はその度に機械仕掛けの新しいおもちゃを貰ったの。それが好きでね」
「へ~。ユミィにもやっぱそう言う時代あったんだ」
「当然です!カイトは私をなんだと思ってるんですか」
「そう言えば所長さん。何か街がお祭り騒ぎみたいになってましたけどあれは?」
「強引に話を変えたわね……?」
ユミィが何か言っているが拗ねているだけなのであえてスルー。お姫様からかうのは可愛いね!(主にユミィの怒った顔が)
「おや、知らんかったのか?1か月後に『機構発表会』があるんじゃよ。皆それに向けて頑張っておるのじゃな」
「博士は今年は何になさるんですか?」
「それがまだ決まってなくてのぅ。アイディアはあるのじゃがどれも今一つなんじゃよ」
と、そんなとこから機構発表会の話しになり、過去には何を作ったのか?などを聞いた。ちなみにここ19年の『最優秀機構士』の称号は目の前のご老人が独占しているらしい。(去年の作品はポンプのような物だった)
やがて話しは、馬車は揺れるし時間がかかるとか、ポンプがなかなか普及しないとか、孫が可愛いとか、国庫がキツイなんて感じのただの雑談になり、そのうち話題が無くなり始めた。そこでふと飾り棚の飛〇石もどきがまた目に入ったので、あれが浮いてる理由を聞いてみた。
「うん?あぁアレか。あれは精霊石じゃよ」
「えれめんたるすとーん?」
「ん?知らんのか?」
「博士、カイトはずっと父が密かに鍛えていたので、あまりそういおうことは知らないのです」
ユミィが若干慌てた感じで、言った。そういやあったなぁそんな設定。すっかり忘れてたのZE!
「そうか。あれは名を『精霊石』と言う。まぁ実際は精霊なんぞ入ってはおらん。中には天然の魔力が詰まっておる」
「天然の魔力?」
「さよう。魔力は当然草木にも含まれておるからの。その辺に放置しておけば勝手に溜まるんじゃ。もちろん自分で溜めることも可能じゃ。精霊石の特徴は1度入った魔力は放出しない限り残り続けること、そしてどういう訳か魔力が入っていると土と反発する性質を持っておる」
土と反発……?俺は飛〇石モドキを見るが、あの台座は金属だぞ?どうもそれが顔に出てたらしく
「あれは台座の中に土が入っておるのじゃよ」
あぁなるほど。だから浮いてるのか。ふっしぎー。
「でもさっき土と反発するっておっしゃいましたけど、それじゃ草原とかどうなるんです?」
足元の石がみんな浮いてんのか?それはシュールだろ……。つかそんな愉快な光景には出くわさなかった
「いや理由は知らんが天然の精霊石は岩山でしか見つからんのじゃ」
「天然……?」
「うむ。精霊石とは魔力の結晶なんじゃ。少々大変だが人間くらいの魔力があれば、疲れはしても結晶をつくることができる」
頑張れば量産できるんだ。すげぇな。
「あれってたくさん集めれば上に乗れたりするんですか?」
「あの大きさじゃ無理じゃな。じゃがまぁ大きいのを作って魔力を十分に充填してやれば出来んこともないと思ぞ?やったことはないがの。精霊石は内部に溜まっている魔力が多いほど反発力が大きくなるからの。不可能ではないハズじゃ」
俺はここでとんでもないことを思いついた。これヤバくね?うまくやれば馬車いらなくなんじゃね?
「所長っ!!」
「!?なんじゃ急に大声だしおって。どうしたんじゃ?」
「今年の作品まだ決めてないんですよね?」
「ん?あぁ……確かにまだ決めかねとるが、それがどうした?」
「提案だあります!!」
「提案?」
「精霊石を使って乗り物を作るんですよっ!!」
「…………は?」
「カイト……?」
「乗り物の底面に精霊石を敷き詰めて、本体を地面から浮かせるんです。そうすれば地面との摩擦が無くなる分馬車より早く移動できるようになります!車輪もないから揺れることもないし、溜める魔力量を調整すれば空の時に飛んで行っちゃうなんてこともないですよ」
地面から少し浮いてる乗り物とかマジロマンなんだが。ファンタジーの力でSF実現してやんよ!きっと今の俺の眼はキラッキラしてるに違いない。
「乗り物……なるほど……そんなこと考えたこともなかったわい……。うむいいな、それはいいぞ。なんだかとてもいい気がしてきたぞっ!!」
「は、博士?」
「うむ!カイト君!!」
「はいっ!」
「そのアイディア貰った!!これはいけるぞ!!君も協力してくれ!!」
「はいっ!!……って、あ、でも俺ユミィの近衛だし……護衛の仕事しないと……」
ショボーン……今の俺の顔は(´・ω・`)になってそうだな……。そうだよなぁ俺もう自由てわけじゃないんだよなぁ……仕事だもんな……。
「いいわよカイト。街中でそんなに物騒なことは起こらないと思うし」
「いやでも近衛だし……」
「い・い・か・ら!!」
「でも護え……」
「でもはなしっ!!」
「ん~……ユミィがそう言ってくれるなら……」
「決まりじゃな!!さっそく始めよう!!なんせ1月しかないからの」
「私はこれで失礼しますね博士。カイト、がんばってね?」
「あ、あぁ……」
「気ぃつけてな」
ユミィはホテルに帰って行った。俺は所長に連れられて設計室とやらへ向う。それにしてもさっきのユミィはどうしたんだ……?いつになくムキになって……。まぁいいか。
---サイド:ユミエル・イル・フォン・アリネシア---
私はモヤモヤしていた。中央工房を出てまっすぐホテルに向かう。
最近のカイトはおかしい。出会ったころはもっとこう……しっかりしていた。輝いていたと言ってもいい。でも今のカイトは違う。まるで自分がないみたいで、ふらふらしてる感じ。あんなのは私のカイトじゃない。近衛がどうとか、護衛がどうとかそんな小さなこと気にする人じゃなかったのに……。デフス家の長男と決闘した時のような覇気が今のカイトには全くない。私はそれが何か嫌だった。そのことにイライラしてると言ってもいい。カイトがカイトらしくない……。
ホテルに着いた。私はまだモヤモヤしたままだ。私はこの感情の名前を知らない。知らないけど、嫌なのは確かだった。
---サイド:鈴木 海人---
俺は所長について設計室とやらに入った。そこでは小学校高学年くらいで赤毛のポニーテールに黄色い瞳を持つ女の子が1人で紙の束とにらめっこしていた。女の子は俺達が入ってきたのに気づくと顔を上げた。
「あ、おじいちゃん。おかえりなさいです。そっちの人は誰です?」
「おぉ、ティナ。丁度いいところに。この人はカイト君じゃ。来月の発表会に協力してくれる。いいアイディアをくれたのじゃよ」
「初めまして。俺はカイト・スズキだ。よろしくな?」
「あ、初めまして。ティルナ・カトフです。よろしくお願いします」
「カトフ?」
「ティナはわしの孫での。まだ13歳じゃが頭のいい子での。去年のポンプもティナと一緒に作ったんじゃ」
発明家一家なのか。つかおじいちゃんとポンプ自作する13歳て……。
「今年はどうするんです?」
「カイト君の提案でな、精霊石を使って乗り物を作る!!」
「精霊石?」
所長は俺のアイディアをティルナちゃんにも教え、これをなんとしてでも1月で完成させると言った。
「なるほど、それは面白そうです!!さっそく設計を始めるですよ!」
「やるのじゃ!!今年も優勝はもらう!目指せ20年連続優勝じゃ!!」
「おー!です」
それにしてもこの爺孫、ノリノリである。
その日は簡単な原案だけ作成して、詳細は明日から詰めることになった。
翌日
今日からは普段着でいくぜ!夏休みの自由工作を子供の代わりにやるお父さん並みにテンション上がってきたぜ!!
「おはようございまーす!」
「おう来たか」
「おはようございますです」
そこから俺達は3人であーでもないこーでもないと言いながら設計を進めて4日。
「う~む……やはり推進力が厳しいのぅ」
「浮くことは浮くんですけどねぇ」
「でも今更これを馬に引かせるのは負けた気がするです」
「「「う~ん…………」」」
最大の問題がこれだった。元の世界のリニア鉄道などは、大雑把に言うと壁と列車本体に磁石があり、それの反発と吸引を壁と列車の間で交互に繰り返し行うことで推進している。
しかし、今回作るのはあくまで馬車に代わるものなので、街道全体にに壁を作って~なんてやることは不可能だ。
「どうしたもんかのぅ」
「風魔法じゃキツイですよね?」
「近所ならともかく街道じゃ魔力が持たんじゃろ。街道で魔力切れなんて洒落にならんからの」
「ですよねー」
「蒸気機関をつけて風を生むとかはどうです?」
「重いんじゃないかな?蒸気機関って結構でかいし。人間も荷物も乗れなくなっちゃうよ」
「そうじゃな……蒸気機関は無理じゃが、風を生むなら小さい風車をつければええ。何とかそれを人の魔力なしで回せんかのぅ」
「精霊石の反発力を使って回転を維持したりできないです?」
俺は置いてあった土の入った金属球|(土玉というらしい)と精霊石を手に取った。うまく並べればモーターになったりくらいはしそうなんだがなぁ。
そこからさに2日たったところで、俺は発見した。
「2人共、こういう使い方は?」
俺がやったのはガムテープの芯くらいの直径の筒の外側に一定間隔で土玉をとりつけ、筒の内側に直径より左右5mmずつ短い精霊石の棒を入れ、その棒をを回した。すると棒が外側の土玉に反発、土玉のないところと次の土玉をちょっと越したあたりまで行き、そこでまた反発。これを繰り返して棒は回る。が、机に置いているので抵抗が邪魔になって、棒は中心からずれてしまい、回転が止まった。
「止まっちゃったケド、これなんか使えそうじゃね?」
「ふむ、確かに、精霊石の棒を何とか真中に固定できれば回り続けるか……?じゃが棒の回転を外に繋げられん」
「う~ん……あ!!」
ティルナちゃんが何やら思いついた様子。
「「どうした?」」
「精霊石の棒の中心に別の、精霊石以外の材質の棒を垂直に刺せばいいんですよ!!それで、左右に真中に穴のあいた蓋をつけて、その穴に垂直に刺した棒を通せば……」
「そうか!それなら精霊石のぼうを中心で維持できる」
「ふむ、垂直棒と精霊石の棒を固定すれば、垂直棒から回転力を取れるな」
「行けそうですかね?」
「うむ、行けそうじゃな!ナイスアイディアじゃティナ!」
「はいです!」
「さっそく試作機を作るぞ!構想だけで1週間近くかかってしもうたからの。ここからは急ピッチじゃ!」
「「おー!」」
それから2週間はまさに戦場だった。精霊石によるモーターを必要なエネルギーを得られるレベルにするのに4日。底面に敷き詰める精霊石の形状を変える発想に至るまでの試行錯誤に4日。プロペラとモーターと運転席との連結に3日。回り始めたプロペラを止める方法がないことに気づいて、慌てて構造を直すのに3日。発表会まで、残り1週間になっていた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
ゼラル編はもう少しだけ続きます。
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