第10話~技術大国ゼラル(ロンブスト技術部?)~
こんばんわ。やっと2つ目の街に到着です。進行ペースがまたも低下気味orz
『ゼラル中央機構都市』それがゼラル連邦の首都だそうだ。
入国税らしきものを払って街に入った俺は、驚いた。アリネシア王国はいかにもファンタジーな街だっただけに、目の前の光景は予想の斜め上を行っていた。
「すげぇな……」
『おと うるさい』
「王都とはまるで違うわね」
「私、この街なんか嫌です……」
「迷子になりそうです」
上から、俺、ルリ、ユミィ、ティア、リリィの順だ。リリアの呼び方がリリィに変わったのは、本人の強い希望によるものだ。「もとの名前が短いんだし別に(愛称じゃなくても)よくね?」って言ったら「そんなことはありませんっ!!」って言われた。まぁ個人的にはリリィの方が呼びやすい気もしたので、そう呼ぶことにした。
さて、俺が驚いた光景の中で一番インパクトがデカイのは、バカみたいに所狭しと立ち並ぶ煙突群だ。煙突と言ってもサンタが入るようなこ洒落たものではなく、どれも良く分からない機械から生えている無骨なもの。どうも蒸気機関のようで、煙突からは黒い煙がモクモクと、機械からは白い蒸気が勢いよくシューシュー出ている。どうも俺が思ってたよりもこの世界の技術は進んでいるようだ。アリネシアは伝統を重んじる国家とのことだったので、ファンタジーが色濃かったんだろうな。
つか、ここ空気悪いなぁ!世界の工場と言われてた頃のイギリスはきっとこんな感じだったに違いない。煙突が低いんだなきっと。機械本体は家の1階にくっついて地上あり、そこから煙突が伸びているわけだが、煙突本体が2階建ての屋根のほんのちょっと上くらいまでしかないもんだから、吐き出した煙とゆーか灰?みたいのが下に降りてきてる。もはや降ってると言っていいレベルだ。これススまみれになるなきっと。
自然を愛することで有名な妖精族のティアは顔をしかめている。カワイイ眉毛を釣り上げてゲホゲホいってる。
「他種族の国をどうこう言うのは筋違いなのは分かってるんですけど、これはちょっと……」
まぁそりゃ環境破壊への歩みの始まりといっても過言じゃない感じだしなぁ……。正体・用途共に不明の蒸気機関(らしき何か)はガッションガッションうるせーし、二酸化炭素はガチだし。自然なんてかけらも見当たらない。
「ゼラルについたのはいいんだが、これからどうすんだ?」
「ゼラルのトップに会うわ。一応私が各国を訪問するかたちなのだから」
そう言えばあったなそんな話し。旅そのものが目的みたいになってたからすっかり忘れてたぜ。
「それが終わったら、どこかに宿をとって、街を見て回りましょ?」
とりあえずの方針が決まったので、さっそく移動。行先はゼラルの政府機関が総まとめになっているらしい『中央工房』。
いや、工房て。技術大国の中心としてはふさわしいんだろうが、政治やる場所じゃねーでしょ。
ゴチャゴチャした(ほんっとうにゴチャゴチャしている)通りを歩いていると、道幅の広い通りに出た。ここはさっきよりは機械類も少なく、屋台やら商店やら宿屋やらが並んでいた。そして通りの真正面には、4階建てくらいのビル?みたいな建物が建っていた。
「あれが中央工房ってやつか」
「周りの建物の倍くらいの大きさですね」
リリィがこれなら先に宿をとった方がいいのでは?(通り道なので)と言うので、それもそうだということになり、ペットokな手頃の宿を探す。
ところがどういう訳か見つかる宿はどれも満員の札なり看板なりが出ていた。
「お祭りか何かがあるのでしょうか?」
とティア。
「そうかもしれないわね」
とユミィが同調する。それもそのはず。なにせ宿が見つからないというだけでなく、人の多さがハンパないのだ。夏休みのネズミーランドくらい混んでる。まぁ季節は秋なんだが。
これじゃ埒が明かないと思った俺は近くの屋台の人に聞いてみることにした。
「すいませーん」
「へい、いらっしゃい!なんにする?」
「ちょっとお尋ねしますが……」
「骨付き1本でなんでも教えてやるぜ?」
……このおっさんやりおる。商売上手だな。まぁ高くもなかったので買ってやることにする。
「んじゃ骨付き1本で」
「おう!ノリいいなにぃちゃん!よし、そのノリに免じて銅貨4枚にまけてやるぜ。んで聞きたいことってなんだ?」
「あぁ、この辺でペットokでまだ空いてそうな宿屋を教えて欲しいんだ」
「ペットokでまだ空いてそうな宿屋か。にぃちゃん1人かい?」
「いや、俺入れて4人と1匹だ」
「はい、骨付きお待ち。う~ん今はどこも混んでるからなぁ。懐に余裕があるんなら値は張るが心当たりがあるぜ?」
出てきたのは鳥腿肉のスモーク。あ、普通にうめぇ。
「あぁ、金はそんなに気にしなくていいよ。場所教えてくれる?」
王様か結構貰っているし、今日まで野営だったので、懐は暖かい。
「この通りを中央工房の方にまっすぐ行くと、右側にシエスタって名前の宿屋がある。中央工房の少し手前あたりだ。いい宿屋なんだが高くてな。逆に人が入り辛くて多分まだ空いてるぜ。ペットもokだしな」
「そうか、ありがとう」
「毎度~」
聞いた話を3人に言って、その宿屋に向かう。
「いらっしゃいませ。宿屋シエスタへようこそ。本日は宿泊ですか?」
ボーイみたいのが出てきた。宿屋よりはホテルって言った方がいいくらいの施設だ。ホテルって言葉がないだけかな?ユミィが前に出て対応する。
「ええ。4人とペットも1匹いるのだけれど、部屋はあるかしら?」
「あいにく個室は満室でして。最上階の4人部屋ならばあいておりますが、いかがいたしましょう?」
「皆、聞いての通りよ。どう?」
「え、いやそれは不味いんじゃないk「私はいいですよ」
「私もです」
「え?」
「私もよ。カイトは私達とじゃ嫌なのかしら?」
待て待て待て、落ち着け俺。普通そこは女性陣が嫌がるとこなんじゃねーの?ティアもリリィも即答とか……ユミィに至っては寧ろ当然みたいな顔してるし。俺か?俺がおかしいのか?
「いや、えっと……3人がいいなら俺は別に構わないけど」
「決まりね。それじゃそれでお願いします」
「畏まりました。それではこちらにお名前をお願いします。期間はいかがなさいますか?」
「カイト、名前はあなたのを書いてちょうだい」
ユミィは名前でアリネシア王女と分かってしまうので、こう言うときは俺の名前を書くことになっている。別にお忍びってわけじゃないのだが、万が一ユミィを狙う輩が出た時、俺の名前なら部屋まではバレない。ちなみにわざわざ街で宿をとっているのはユミィたっての希望だ。
俺は名前を書きながらボーイさんに質問する。
「期間って後から延長したりできますか?」
「はい。可能でございます」
「ならとりあえず1週間でお願いします」
「畏まりました。料金は先払いになりますのでご了承ください。1週間4名様にペット1匹でヒューマン貨で金貨4枚と白銀貨2枚になります」
俺は金貨を5枚差し出す。
「これでお願いします」
「畏まりました。只今お釣りをお持ちしますので少々お待ち下さい」
ボーイさんが行ってる間にこの世界のお金について説明しようと思う。
この世界では大陸ごとに使用しているお金が異なっている。
セリア大陸ではヒューマン貨
カトラ大陸ではフェアリー貨
ロスマニア大陸ではビースト貨
コインの種類はどのお金にもそれぞれ6種類づつある。
銅貨<白銅貨<銀貨<白銀貨<金貨<白金貨
この6種類のコインは右に行くほど価値が高い。また、ヒューマン貨、フェアリー貨、ビースト貨でも価値に差があり、順番としては
ビースト貨<ヒューマン貨<フェアリー貨
の順になる。つまり、同じ銅貨でも、ヒューマン貨の銅貨とフェアリー貨の銅貨では、フェアリー貨の銅貨の方が価値が高いし、ヒューマン貨の銅貨とビースト貨の銅貨ではヒューマン貨の銅貨の方が高い。
具体的にどれくらいかというと、日常の食費代などからみるに、ヒューマン貨の銅貨が大体100円くらいの価値がある。銅貨10枚で白銅貨1枚、白銅貨10枚で銀貨1枚という具合に、10枚で1つ上のコインに替えられる。これを元に考えると、ヒューマン貨の場合は
銅貨=100円---------------百円
白銅貨=1,000円-----------千円
銀貨=10,000円------------一万円
白銀貨=100,000円---------十万円
金貨=1,000,000円---------百万円
白金貨=10,000,000円------一千万円
となる。うん、後ろの方が大変な事になってるな。フェアリー貨はこの倍の価値があり(銅貨が200円)
、ビースト貨は逆に半分の価値(銅貨が50円)である。
さて、この世界のお金の価値を知ってもらったところで、さっき払ったお金に話が戻る。1週間4人と1匹でヒューマン貨で金貨4枚に白銀貨2枚。日本円にして420万円。ペットは人間の半分の料金らしいので、逆算すると、1人一泊10万円となる。(ついでに言うと一般市民の平均年収が約金貨5枚(500万円)だ)
………………。
………………。
超高級ホテルですね分かります。
ってアホかぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!!
高すぎんだろ!!1人1泊10万てなんやねん!!1週間泊って420万とかバカすぎんだろおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!
ハァハァハァ…………。
屋台のおっさん……確かに高くてもいいみたいに言ったけど……高級すぎワロタ。
ちなみに現在の俺達の所持金は白金貨5枚(5000万円)分くらいある。ご丁寧に、銅貨からそろっているので、お釣りががががががって事態にもならずに済んでいる。つか王様親バカ過ぎんだろ。娘の旅費5000万て……。
「お待たせいたしました。お釣りの白銀貨8枚になります」
「はい確かに」
「それではお部屋にご案内いたしますので、ついてきてください」
このホテル(これを宿って呼ぶのは無理)は外観は国会議事堂みたいになっている。入って正面にフロント。フロントを中心に左右対称で両側に階段があり、2階、3階へと行ける。流石にエレベーターはまだなかったか。
俺達は3階まで上がった。するとボーイさんが何やら鍵を取り出し階段正面の扉を開けた。
「皆様のお部屋は当店最高級のものとなっておりまして、ここからもう一つ上へ上がります」
ドアの中にはまた階段があった。しかもさっきまで歩いてきた階段よりも明らかに作りがいい。
それを登りきると、そこはバカでかいリビングルームだった。
「うわぁ!すてき!」
「すごく広いですね」
「わんっわんっ!!」
「いいお部屋ね」
「ありがとうございます」
ティアとリリィとルリは、はしゃいでる。ユミィは流石に落ち着いてはいるが、部屋を気に入ってるのは確かだ。俺は開いた口が塞がらない。
「正面の窓からはテラスに出られます。左手のお部屋は奥から順に浴室、トイレ、洗面所、小さいですがキッチンです。右手のお部屋は寝室でございます。朝食と夕食は料金に含まれておりますので、必要になりましたらフロントにお申し付けください。昼食も別料金でご用意させていただきます。また、宿泊期間中に朝食夕食をとらないことがございましたら、そちらもフロントにお申し付けください。最終日に抜けた分の食費はお返しいたします。何か質問などございますか?」
「いいえ、大丈夫よ。ありがとう」
「それでは、ごゆっくり。あ、それと外出なさる場合、鍵はフロントのほうへお願いいたします。それでは失礼いたします」
「リリィ!テラスがすっごく広いわよ!」
「あ~ホントです!下の通りがよく見えますよ」
『そふぁー ふかふか~』
「カイト?どうしたの?」
「え?いや別になにも?」
「そう?ならいいけど。それにしてもいいお部屋があってよかったわね」
あの値段でいい部屋じゃなかったら訴えてるよ。にしてもホントこの部屋ヤバい。生まれも育ちも一般人な俺的には逆にびくびくしちまうぜ。まぁせっかくだから満喫しますけど。
「つか、中央工房に行くんだろ?あんまり遅いのも良くないだろうし、行くならさっさと行こうぜ」
「そうね。リリィ、ティア!私とカイトは中央工房へ行くけど、あなた達はどうする?」
「私達はまってます」
「荷物の整理もしたいですし。カイトさんカバンをお願いします」
「ほい」
「それじゃ行ってくるわね」
「いってらっしゃ~い」
「いってらっしゃいませ」
俺とユミィは部屋を出た。出て気づく。
「この格好はダメじゃね?」
「あ」
アリネシア王国の王女として会いに行くのに、本人も近衛も旅人な感じの超普段着。あまりにもお粗末すぎた。
ユミィはドレスに、俺は近衛隊長礼服に、それぞれ着替えて、目と鼻の先の中央工房へ足を運んだ。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
ホントは今回また別のヒロイン出すはずだったんですが、影も形も出ませんでしたね。次はたぶんきっとおそらく出てきます。
世界観を書いた物と、キャラクター図鑑を投稿しました。ほぼ本文のコピペですが(汗)
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