第8話~相棒ゲットだぜ!(わんわんお!)~
皆さんこんばんは。
今日は2つ目ですね。前回よりはいい感じにまとまったと思います。
前回はぶっちゃけ妹ズ出したかっただけなんだ……。
「お前達には、ゼラル連邦国、フェアリーアライエンス、そして北の獣人達の集落を訪問して欲しいのだ」
どうしてそうなった……。
「お父様?なぜ急にそのようなことを?」
「別に急ではないぞ。ユミエルももう16歳になったからな。我が国では、王族の者は16歳になったら、その報告とこれからもよろしく頼むという意味を込めて、各国を訪問するのが慣わしなのだ。私も16歳の時はやったよ」
「へ~面白い習慣ですね。期間はどのくらいなんですか?」
「これといって決まってはいない。まぁ挨拶だけで済ませるなら2月もかからないだろうが、それはもったいないだろ」
???もったいないって何ぞ?挨拶じゃねーの?
俺がそう思っていると、同じことを思ったのかユミィが質問する。
「どういう意味ですか?お父様」
「話しに聞くだけと、実際にその眼で見ることでわその違いは大きい。いずれ王になるやも知れぬ身としては、その眼で1度は見ておいたほうがよい。実際に見て、肌で感じた方がはるかに得るものは多い。ただ挨拶に行くだけではなく、その国を見てみるのは、よい経験になるだろう」
「なるほど。百聞は一見にしかずってワケか。民を思う聡明な王の心構えを身につけさせるには持ってこいな方法だな」
「ですがそれはとても時間がかかるように思えます」
「参考までに聞くけど、王様の時は世界一周にどんくらいかかったんだ?」
「我は半年くらいだったな。今でもよき思い出だ」
「分かりました。いずれにせよ、行かないわけにはいかないようですから……。それならいっそゆっくり世界を見て参りたいと思います」
「うむ。1週間後に出発せよ。旅費は出すが、足りなくなった場合は自分たちで何とかしなさい。これも教訓となろう。それからメイドを1人つける。近衛はカイト君しかいないし、実質3人だな」
「分かりました。すぐに準備を始めます」
「馬車とか使うのか?」
「いや、世界を見て回るのも目的の1つだからな。歩きがよいだろう」
---1週間後---
「さて、準備も整ったことだし、いよいよ出発か。ユミィ達はまだかな」
「カイト。お待たせしました」
「お待たせしました」
やって来たのは2人。ここで今日から始まる旅のメンバーを紹介しよう。
まずはユミィ。大きな皮のバックを2つ持っている。つばの広い帽子に、長そでの水色のVネック。青と白のチェックのミニスカートの下に、ジーパンみたいな長ズボンと膝下まである長いブーツ。腰にはポーチが付いており、紺色の外套を羽織っている。右の腿にはベルトが巻いてあり、そこに杖がさしてある。
そしてもう1人はリリア・クルスというメイドさん。なにを隠そう彼女は、俺が初めて王都に来た時部屋まで案内してくれたあのメイドさんである。茶髪のショートヘアーにネイビーブルーの瞳を持つ小柄な13歳。大きめのカバンが1つに、鍋やらなんやら(おそらく調理器具一式)がぶら下がってるリュックを背負っている。白いYシャツに茶系の膝上くらいのスカート。タイツのようなものを履いており、やはりこちらも長いブーツを履いている。また茶系の外套を羽織っており、剣を吊るす位置に杖が差されている。
どちらもでかい荷物以外は動きやすそうな格好だ。ちなみに俺は黒いTシャツに黒いYシャツを羽織り、下は普通のジーパンとスニーカーという、ファンタジーぶち壊しの出で立ち。ただし、腰にはミスリルやらオリハルコンやら(他は名前忘れた)を使って錬成した、ファンタジー金属による日本刀が黒い鞘に納まって差してある。腰にはお金とかが入ってるポーチ。それから黒い外套を羽織っている。だって動きやすいほうがいいじゃん?外套がかろうじてファンタジーなのでもういいことにする。
王様に話を聞いてから今日までの1週間を振り返る。
話しを聞いた翌日に、同行するメイドさんがリリアと分かり、改めて自己紹介した後、持ち物やらなんやらを3人で相談しあった。リリアは最初はテンパっていたが3日もするとすっかり馴染んで、今では3人の関係はなかなか良好だ。1週間訪問する順番や持ち物、期間のめどなど話し合いながら準備をして、昨日は留守にする間の仕事の引き継ぎなどをした。
そして今日、ついに出発の日。
「晴れてよかったな。出発初日から雨とか嫌だしな」
「そうですねー。それに真夏や真冬で無かったのはラッキーでした」
「徒歩で行くには最高の時期ね」
季節は秋。紅葉とかあるのかは知らんが涼しくて過ごしやすいのは確かだった。
「2人とも荷物はそれで全部だな?」
「はい」
「ええ」
「んじゃ……」
先ほど言ったように2人の荷物はなかなかにデカイ。馬車ならともかく、こんな大荷物を手でもって運ぶのは無理だ。じゃあどうするかっていうと、俺の四〇元ポケットの出番だ。ここに入れれば持ち運べないなんてことはない。よって荷物が手に持てないレベルでも問題無いのだ。
2人の荷物をしまうと、各々の装備は杖(俺は刀)と腰のポーチ、そして外套と着てる服だけになり、傍から見れば、何の集団なのかイマイチ分からなくなった。(全員やたら動きやすそうな格好で、軽装の鎧すら着ていないし、旅をしているにしては手ぶらすぎた)
「さて、それじゃあ行こうか。街が起きだす前にな」
「しばらくここには戻ってこないのね」
「私緊張してきましたぁ」
徒歩の王女様御一行である俺らは、超早朝に王都を発つ。人に見つかったら街から出られないだろうからな。
---王都出発の4時間後---
「最初の目的地はゼラル連邦国だったよな?ひたすら南に行けばいいのか。技術大国なんだっけ?」
「そうね。私も行ったことないのだけど国中が新技術の開発研究に心血を注いでいると聞いたわ」
「身近なところでは、小さなのもでドアの蝶番、大きなものでは水車による上下水道等がゼラル発祥の技術ですね」
「リリアよく知ってるな」
「メイドが一番その恩恵を受けていると言っても過言ではないですから」
「ゼラルの技術は生活に密着したものが多いものね。やっぱり昔よりは仕事が楽なの?」
「そうですね。水道はやっぱり便利です。井戸に毎回行くのはかなり大変なので」
技術大国と言ってもやっぱりまだそこまでじゃないみたいだな。でも既に上下水道が完備されてるだけたいしたもんか?
「ゼラルの首都(?)って王都からどんくらいだっけ?」
「私達は徒歩だから1週間くらいだと思うわ」
「しばらくは野営ですね」
個人的に街道ってのはもっと物騒なイメージがあったんだがそんなことはないみたいだ。
3人でしゃべりながらのんびり街道を進みやがて、夕方になった。
「もう野営の準備をした方がいいと思います。夜は魔物の動きも活発になりますし」
「そうね。リリアの言う通りだわ。今日はここでキャンプにしましょう。カイト荷物を出してくれる?」
「あぁ。だがその前に、まずはこれだ」
「「?」」
「キャンピン〇カプセル!(豪華版)」
「それなぁに?」
「まぁ見てな」
俺はそれを街道から少し離れた地面に突き刺した。見る見る大きくなってあっという間に今夜の宿泊場の出来上がり。22世紀のひみつ道具マジパネェっす。
「これは……」
「はわわわわ!?なんですかこれは!?」
「「キャンピ〇グカプセル」中には部屋が6つあるんだ。各部屋トイレ完備。共有だけどシャワールームもついてる」
「カイトは不思議な魔法を使うのね」
「これは魔法じゃないけどな。まぁキッチンはないからそっちは今から作るけど……ねっ!」
野外にキッチンを錬成。火を使うには薪が必要だけど。まぁ使うのはリリアなので、下手にガスコンロとかより使いやすくていいだろう。
「んじゃあ俺は薪を集めてくるよ。荷物はここに置いておくから」
「あ、あの台所なんて作ってもらっちゃってありがとうございます」
「気にすんな」
「私達は夕食の準備をしてるわね」
「はいよー」
ともあれ、まずは薪である。夕食の準備にしても薪がないことにはあのキッチンは役立たずなのでさっさと集めよう。
街道沿いの森に入って手頃な大きさの薪を集めること20分くらい。そろそろ戻ろうかと思っていると、何やら奥の方から地響きみたいのが聞こえる。
「あ~夜になると魔物が活発になるんだっけ?」
地響きはどんどんこちらに近づいてきている。つか、木がなぎ倒される音とかがコラボし始めたんだが……
「ガァァァァァァァアアアアアアアァァァァァァァアアアアアアアッッッ!!!!!!」
咆哮ってやつですね分かります。
なんてバカなこと考えてる場合ではない。ないのだが……なんか地響きに混ざって咆哮上げた奴とは別な感じの鳴き声聞こえる気がするんだが……?
「キャン!キャン!」
犬……?いやそもそもこの世界に犬なんているのか?
そうこうしてるうちに地響きが断続的な地震にクラスチェンジ。奥の方になんかデカイ影が見える。
あ、もう影どころじゃねーな。はっきり視認できる。
隊長は5~6メートルくらいの……クマ?某ハンターゲームのアオ〇シラみたいな奴。まぁ色は真っ黒だが。
んでここ重要。そのクマ公から必死に逃げるように走ってるのが蒼穹色の澄んだ毛並みを持つ……子犬。
ちっちゃい足を一生懸命動かして必死に駆けている。
な・に・あ・れ・か・わ・い・い
「おいっ!こっちだ!!」
つい声をかけちまった。だってあんなのもう助けるしかないでしょう?
俺の声に気づいたようで、ってこっちキタ―――――!!めっちゃ一生懸命走ってるよ!可愛い!
あぁ今更だが俺は犬派だ。猫も普通に可愛いと思うけど、犬と猫どっち?って聞かれたら犬だ。
俺の足元まで来るとそのまま俺の後ろに隠れるわんこ。わんこに続いてこっちに突進してきてるクマ公を見てめっちゃ怯えてる。俺は手に持ってた薪を地面に置くと、わんこをナデナデする。
「いいこいいこ。もう大丈夫だからな。ここでじっとしてるんだぞ~」
わんこは潤んだ瞳でこっちをじぃーっと見つめている。あぁ~なんて可愛い生き物なんだ。
俺は正面に向き直ると刀を抜いて構える。
「こいよ、アオ〇シラ!いや、黒いからクロアシラか?」
「ガァァァァァァァアアアアアアア!!!」
クマ公は俺達を引き殺そうと突っ込んでくる。
カイザとの特訓の成果を試すにはちょうどいい機会だな。れっつとらい。
「我流刀術奥儀!空抜き!!」
瞬〇の要領で相手に突っ込み、すれ違いざまに一閃。クマ公の後方に刀を振り抜いた状態で止まる俺。
クマ公はその後5~6歩進んだところで頭部が体に別れを告げたことで崩れ落ちた。
早い話が、首を切り落としたってこと。
空抜きは、刀身に風魔法を付与することで、振り抜くと真空の斬撃が飛ぶというものだ。1振りで1撃。要はカマイタチ(1撃だけver)なんだが、今の俺では1メートル以上はコントロールが残念な感じなので、さっきみたいにすれ違いざまにやるしかない。便利な点は刀本体を避けられたとしても対象を切れることと、本体で切っても本体に風魔法が付与されてるので、刃が痛まない=長持ちするし手入れが楽。
俺がカイザに付き合ってもらって作りだしたのが、この刀術と魔法を融合させるというもの。うまく組み合わせられれば、個々を単体で使うよりも高い効果が得られる上、圧倒的に使い勝手がいいし、汎用性も高い。
さて、クロアシラを始末したので納刀して薪を回収。そしてお座り状態の子犬を見ると。
「ん?お前左の前足怪我してるのか?」
『うん あし いたい』
「!?」
なんだ今の!?ここには俺とこいつしかいねーよな?
俺がきょろきょろしていると。
『こっちこっち!』
声は頭の中に響くってのは、ファンタジーじゃよくある展開なのでいいとして、なまじ頭ん中に直接響いてるので「こっち」とか言われてもどっちか分からない。
「つまりどっち?」
すると子犬が右前足をちょこんと俺の脚に乗せた。ぽわぁ~ん……。
『こっち!』
「もしかしなくても俺に話しかけてきてるのはお前か?」
子犬は尻尾を振りながら頷いた。ヤヴァイ……俺今日萌え死ぬかもしんない……。
「そっかそっかお前話せるのか。すげぇな。俺はカイトだ。名前は?」
『なまえ ない たすけてくれてありがとう! かいと いのちのおんじん なまえ つけて!』
吾輩は犬である。名前はまだn……ゲフンゲフン。
「う~名前かぁ~。あ、ちなみに性別は?」
『めす』
「おーけぃ。そんじゃあ……あああ……青いから……う~んっとぉ……よし、んじゃ《ルリ》で」
センス?んなもんねーよ!おいしいかどうかは知らねーケドとりあえず俺にはねーよ!うわーーーーん!!
『るり! わたし るり!』
ルリはとてもうれしそうにしている。あぁ癒される~。
と、急にルリが「クゥ~ン」と鳴いた。
「あ、足怪我してんだったな。どれどれ」
見るとどうも軽く捻挫しているようだった。
「よしよし。すぐに治してやるからな。ケアル!」
白い光がルリの左前足を包みこむ。光が消えると、怪我も治っていた。魔法って便利ねー。
『けが なおった! かいと ありがと!』
喜びを全身で表現しているルリ(具体的には俺の周りを走り回っている)
俺が立ち上がると
『るり かいとと いっしょ』
そう言って足元にすり寄ってきた。もうダメだ。俺の理性がゲシ〇タルト崩壊しそう。
「俺は今から連れのとこに戻るけど一緒に来るか?」
お願いだから一緒に来てぇ……。
『いく! るり かいとと いっしょに いく!! つれてって!!』
「おっけぃ!任せろ!!これからはずっと一緒だ!」
いよっしゃああああああああああ!!!
さて、ルリを連れてユミィ達のとこに戻ろうとして、ふと気が付く。
クロアシラって剥ぎ取りとか出来んじゃね?
魔獣なんて食えるのかイマイチ怪しいし、モン〇ンではないので剥ぎ取っても売れない可能性もあるが、売れる可能性もあるわけで。四〇元ポケットに入れれば持ち運びは気にしなくていいし。
という訳で、クロアシラを引きずりながらルリと一緒にキャンプ地へ帰還。
「ただいま~」
「あら、カイト戻って来たのね。ちょうどそろそろ火が欲しいってリリアと…………カイト?」
「な、ななな、何を持っていらっしゃるんで……?」
「薪とクマみたいな魔獣。あと連れが増えた」
「ワンッ!」
「………………」
「………………」
「あ、この子の名前はルリな」
「あ、そうじゃなくて、いえその子もすごく気になるんだケド……その魔獣1人で倒したの?」
「ん?そうだけど?いや、肉とか食えんのか~?って思って持ってきた。つか魔獣って爪とか売れたりする?」
「あ、はい。回復系魔法の浄化で浄化した後なら、食用にもなりますし、爪や牙など売れる部分もありますけど…………。あのユミィ様?あれ、見間違えでなければフォレストグリズリーですよね?」
「やっぱりそう見えるわよね?」
「フォレストグリズリー?このクマ公のことか?」
「はい。フォレストグリズリーは主に森に生息している魔獣で、腕力がとても高いのが特徴です。反面スピードは遅いので、普通は複数人、それも戦士ギルドでAランク以上の人達が4~5人でヒット&アウェイを繰りかえして平均1時間くらいかけて倒す魔獣です」
なるほど。間違っても1人で1撃で倒すもんじゃねーのか。
「まぁ倒せたんだしいいじゃん。つかリリア随分と詳しいな?」
「父が戦士ギルドに所属していたので、その、知識だけなんですけど」
「それでも素晴らしいことよ?リリア。何も知らないよりはよっぽどいいわ」
「あ、ありがとうございます」
「それで?そっちの可愛らしいオオカミの子供はどうしたの?」
犬じゃなくてオオカミだったのか。
「あぁ、こいつはクマ公に襲われてたんだよ。そこを助けたら懐かれてな」
ユミィはふ~んと言いながらルリの前にしゃがみこんだ。リリアも横から覗き込んでいる。
「こんにちはルリちゃん。私はユミィ。これから仲良くしてね♪」
「ワンッ!」
「私はリリアと言います。よろしくです」
「ワンッ!」
「人見知りしないとはいい子だなぁルリは」
そう言って頭を撫でてやると。
『えへへ~ るり いいこぉ!』
あ~ちくしょう。ホントに可愛いな……。
「つか2人はルリが喋っても驚かないんだな。こっちの動物は皆しゃべるのか?」
「「は?」」
え?なんか急に「何言ってんのコイツ?」みたいな眼で見られたんだが。しゃべるのは常識だったのか。
「いや、へんなこと言ったな。すまん、聞かなかったことに……」
「待って。カイトもしかしてあなたルリちゃんと話せるの?」
「え?うん、話せるけど?2人も話せるんだろ?」
「えっとぉ……普通動物と会話することができるのは、その動物と同タイプの獣人だけのはずなんですけど……。ルリちゃんはオオカミのようですから、話せるのは狼の獣人だけなはずで……」
「カイト、ちょっとルリちゃんに何か頼んでみて?」
「?まぁいいけど。そうだな、ルリ、俺の頭の上に乗ってみ」
『わかった!』
ルリはしゃがんでる俺の背中を駆け上がると頭の上にちょこんと乗った。上空から見たら、俺が狼の毛皮を被ってるみたいに見えそうだな。
「ホントに言うこと聞いてますね。野生の動物は普通人の言うことは聞かないはずですし、何より「お座り」とか「伏せ」とか「待て」くらいがせいぜいで、あんな指示は……」
「本当に意志の疎通ができてるみたいね……。驚いたわ」
ムムム……。王都にいた頃はそこまで思ってなかったが、やっぱり俺は少々普通ではないのか?
まぁ今日のところはルリが可愛いので、他は割とどうでもいい俺である。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
テンポ意識でちょいちょい時間が飛んでます。
次回はヒロイン増える予定です。やっとハーレムタグが嘘じゃなくなりそう。
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