第六章 波乱の旅立ち
道場の中央で、トモヒロ師匠はいつになく真剣な表情でヒロミチと大亀を見据えていた。
「ヒロミチ、そして大亀。あなたたちにはこの道場を出て、世界を周り世界最強のゲイを目指してもらいたいわ」
「修行の旅……ですか?」ヒロミチが問い返す。
「そうよ。箱入り息子のままじゃ、真の『ゲイ・カリスマ』にはなれないわ。世界に溢れる多様な男たちの愛に触れ、その拳を磨きなさい」
トモヒロは傍らで黙々と木人を叩き壊している中田に目をやった。
「中田はここに残りなさい。あなたは自分の中の『バイ』としての葛藤を、一人で見つめ直す時間が必要よ」
中田は拳を止め、ヒロミチを鋭く睨んだ。
「……ヒロミチ。次にお前に会う時、俺は今よりもっと激しく、お前を意識させる存在になってみせる。勝手に野垂れ死ぬなよ」
「中田くん……。わかった、待っているよ」
翌朝、ヒロミチと大亀はわずかな荷物を背負い、旅立った。
ヒロミチは覚醒によるフェロモンを隠すための薄いパーカーを羽織り、大亀はその巨体に似合わない可愛らしいピンクのリュックを背負っている。
「ヒロミチさん、荷物は全部俺が持ちますよ! この筋肉、役に立てたいんです!」
大亀は道中に転がる巨大な岩を、まるでバレーボールのように軽々と投げ飛ばして道を作る。
「ありがとう、大亀くん。君のパワーは本当に頼りになるよ」
「へへっ、あんたに褒められると、胸の筋肉がキュンキュンしちまうな!」




