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家族とコミュニケーションをとっていたらとっていたら助かったかもしれない事故

作者: さとう あか
掲載日:2025/11/30

コミュニケーションは大事だと感じる昨今です。


 父が亡くなった。なんとも悲しい事故だった。


 帰宅中に転んで頭を打った父。すぐに病院にかかれば助かったのかもしれないが大丈だと思ったのか病院に行かず痛み止めを飲んでやり過ごそうとしたようだった。


 ああ、母がいつも『そんなに痛み止め飲むなら病院に行けばいいのに』と言っていたのに父は何も聞いていなかったのだろうか。悲しさよりも情けない、仕方ないといった気持ちが大きかった。


 しかし、弟はそう思わなかったようだった。


「怪しい、父さんは誰かに殴られたんじゃないか?」


 と疑っていた。いや、血痕がついていたのは縁石だったじゃないか、弟に連れられて確認しにいった現場を思い出す。


「違うだろう、血痕は縁石についていたじゃないか」


 そういうと弟はうー、と唸りながら頭を抱えた。と思ったら何か思いついたようだった。


「そうだ、誰も声をかけなかったのはおかしい!住宅街で人通りが多いのに!」


「父さんは近所の人の挨拶返さないし、世間話もしないし誰も声をかけようとしないよ」


 そう、どういうことなのか父は近所の人に挨拶をしないし返さないのだ。だから近所の人のほとんどは父に挨拶しないし話かけない。挨拶する習慣があれば誰かがおかしいと思ってくれたかもしれないのに。


「そうだ、母さんが何も気付かないのはおかしいんじゃないか?」


「父さんは帰ってきても、ただいまとか言わないじゃないか。それに母さんがおかえりと声をかけても何も言わないだろう」


 弟はまた頭を抱えた。実家での父の姿を思い出したようだ。いつも家族におかえりとも、ただいまとも声をかけないし反応しない父の姿を思い出したようだ。


「でも、でも!相続放棄するっておかしいだろ!なんかあるに違いない!母さんは何か隠しているんだ!」


「あー、それはそうだな」


「だろ!」


 弟はまるで虎の首をとったかのようだ。


「多分単身赴任の時のギャンブルの借金だと思う」


「へ?」


「俺たちが小学生の時父さんは単身赴任で家にいなかっただろ?どうやらその時にギャンブルをして借金をこさえたらしいんだ」


「は?」


「その借金を俺たちに負わせたくないから相続放棄なんて話になったんだと思うぞ」


「なんだよそれ!聞いてない!」


「聞いたぞ、俺が大学生でお前が高校生の時」


「そんなの覚え、ていな、い」


 だんだんと小さくなった声にどうやら弟は思い出したようだった。


 母さんは弟が高校生になったタイミングで父さんが単身赴任で借金をつくり、それを少しづつ返済していることを伝えてくれた。


「だからなんかあった時父さんの財産は負債ばっかだから放棄しなさいって」


「言ってた」


 弟はまた頭を抱えた。


 誰に入知恵されたのか一度は納得したのに父さんの事故死はおかしいと言い出した。ここで誰に入知恵されたのか問い詰めればさらに不信感を大きくしかねない。ここは何も突っ込まない方がいいだろう。


 実は父が単身赴任でこさえたのは愛人とその子どもだ。母はその子供にも相続権があるからそれを知られたくない、もしくは面倒なことになるから相続権を放棄しろと言ったのだろう。


 愛人は父が既婚者だとは知らなかったらしい。


 認知したのか、その子供と愛人が今何をしているのか、それはよくわからない。


 ただ母はこのことで父に見切りをつけたようで収入は全て母が管理していたようだった。


 そして弟が言うように母が本当に気づかなかったのかどうかはわからない。


 父の怪我の具合から見て出血が多かったことは想像に難くない。同じ家にいてコミュニケーションが少なく、父が帰宅してすぐにシャワーを浴びたといえ家に血の跡が何もないのは少々おかしいように感じた。


 もしかして母は、見ないふりをしたのではないだろうか。


 いつも挨拶しない、いつも無視する父だから仕方ないと言って。


 何も怪しくはない、だって全てはいつも父が行っていることなのだから。


 まあ、全て想像なので確証はないが。

 


読んでいただきありがとうございます。

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