先輩の語りによる本編①不動産屋の兄さん
まずは乾杯する?
久しぶり~、お疲れ!
言っとくけどさ、あんま明るい話じゃないよ? いい? あっそ。
うーん、なにから話すかな……最初から?
そう言われてもね……そうだなぁ。
卒業後お前と俺とが最後に会ったのは、お前の大学卒業時の卒業パーティーの二次会だったよな。
ほら俺ってフラフラしてたじゃん?
ヘラヘラもしてたけど、当時の俺って実はモラトリアムでさ。なにやっていいのかわかんなくなってたんだよね。
だから就職活動とかちゃんとしてなくて。
でも実家に戻る気もなくて、親を適当に言いくるめてバイトと貯金で生活してたんだよ。
まあ当然仕送りは止まることになったけど。
それまでバイトで稼いだのは交友費程度で家賃とか生活費は仕送りで賄ってたから、それが止まれば早々に立ちいかなくなるよねって思って、なるはやで引っ越すつもりで不動産屋に行ったんだ。
あ、別に事故物件とかは探してないよ?
グレードを落とすつもりでいただけで……まあでも、安ければ安いほどいいっていうのはあるよそりゃ。
不動産屋の兄さん、面白い人でさぁ。
部屋の話してたはずなのに、いつの間にかサメ映画の話で盛り上がってたわ。
すっかり仲良くなって……したら『とっておき』を出してくれたワケよ。
冷暖房・小型冷蔵庫完備で、個室トイレ有りの1R。築年数は10年とまあまあ新しい。
風呂はないけど銭湯が近くて、おまけに銭湯の隣はコインランドリー。駅は徒歩15分。
それが敷金礼金ナシでなんと3万円!
更新料はあるけど更新は三年。流石にそこまでにはちゃんとすればいいよねって思って。
内見は写真のみで、ほぼ即決。
ああ、「でもなんか問題あるんでしょ?」とは勿論聞いたよ。明らかに怪しいもん。まあ余程じゃなければ、住むつもりではいたけど。
兄さん曰く、そこは『過去に犯罪を犯した人達の更生の為の物件』なんだとか。
「だから普段は紹介しないんですよ~」って。「ああ、なんかそういうの聞いた事ある」みたいに返したかな。
オーナーが慈善事業的にやってんだろうなって納得はしたけど、正直拍子抜けだった。
まあ『前科のある人間とか怖くて関わりたくない』って思う人がいるのも、わからなくはないけどさ……
ただ、本当に怖いのは──
あっ悪い。
話が逸れるとこだったわ。
ええと……どこまで話したっけな……
まあとりあえず、そこに住むことにしたんだわ。




