花子さん②
ギシギシと嫌な音を立てながら花子さんが向かってくる。
花子さんの見た目は、色々な説があるが多くの人が想像するであろう小柄なおかっぱ頭の女の子で、赤い釣りスカートを履き、白いワイシャツを着ている。
夜の学校だからだろうか顔がよく見えない。
1人で出会っていたら、思わず大きな声を出し逃げだしていただろう。
しかしここにいるのは黒維斬谷だ。
新人とはいえ、一般人とは生きている世界が違う。
ギっ
花子さんが喋る前に既に黒維は踏み込み、そしてボロボロな校舎が音を出す前に花子さんの首元に刃を当てていた。
そして、気持ちがいいまでに綺麗な太刀筋で花子さんの首を落とした。
「ん、エぃ?!い!」
あまりに一瞬の出来事に隣にいた女の子は混乱していた。
「落ち着いて」
「お、お兄さんは、何、者なんですか?」
「俺は陰陽師」
「なるほどおんみょうじですか?」
女の子は突然の状況に混乱していた。
それもそうだ隣にいた男が急に刀を使い、花子さんの首を落としたのだから。
「わからなくても大丈夫君は俺が守るよ」
(花子さんの首は落としたから大丈夫だな、後はこの子を連れ、て)
ギギギギギ
すると突然頭と胴が離れている花子さんからこの世のものとは思えない不快な音が響いた。
ギチギチ
花子さんの手足が音を立てながら捻るように伸びている。
ギギギギギギギギ
花子さんの口は、口角が上がり続け、裂けてしまっている。
ズズズギロギズズ
花子さんの目には、ぽっかりと穴が開き覗いてしまったら吸い込まれてしまいそうな暗闇が広がっていた。
ギシギチギシギギギギギロギズチチギギ
嫌な音を立てながら花子さんはデカくなった。
先程の小柄な女の子からは想像できないサイズになり、2メートルはゆうに超えていた。
「逃げて!!」
黒維は声を上げる。
しかし、女の子は足が動かせず泣きながら首を振っていた。
(俺がやるしかない)
黒維は自分は陰陽師であることを再認識し、覚悟を決める。
黒維は刀を握り、構えた。
(刀とリーチの差がありすぎるな)
巨大化した花子さんの腕は一振りで黒維を倒せてしまいそうなほどに長かった。
(間合いを間違えるな!)
そう自分に言い聞かせ、黒維は飛び出す。
黒維は一瞬にして間合いに入り、花子さんに一撃を入れる。
しかし手応えはなかった。
手応えがないのを確認すると、すぐさま花子さんの間合いの外に出る。
(これの繰り返しか?)
(ジリ貧だな)
黒維は2回、3回と繰り返していく。
しかしどの攻撃も効果はなかった。
ドゴッ
体力的な問題もあり、黒維は花子さんの攻撃を喰らってしまう。
しかし、咄嗟に受け身をとった黒維は、致命傷は避けられた。
しかし黒維の体はボロボロだ、後一回でも攻撃を受ければ倒れてしまう。
黒維は考える。
(今何回攻撃当てた?)
(7回か)
(十分だ)
「がしゃどくろ」
黒維がそう呼んだその時、空中に文字が現れた。
その文字は移動しながら黒維の手の周りに集まっていく。
文字は円形を作った。
そして円形の中から、刀が出てきた。
刀は見るからに普通の代物ではない。
それもそのはずその刀は"妖刀がしゃどくろ"だ。
"妖刀がしゃどくろ"は特殊な骨を加工し、作られた刀だ。
その特殊性からその刀は、刃を振るい"切った"回数分の時間しか使えない。
黒維は7回花子さんに当てたので、7秒使うことができる。
(短いか?)
黒維は思う。
「十分だ!!」
そう言い黒維は飛び出した。
花子さんの攻撃をよく見て、ギリギリで避ける。
時間がない。
最短距離で向かってゆく。
当然危険だ。
しかし黒維はそんなことを考えてはいない。
ただ攻撃を当てる。
黒維はその一点のみに集中している。
「骨渇碆羅碆羅!!」
黒維は一撃を振るう。
そしてその攻撃は、花子さんを祓うには十分な攻撃だった。
花子さんは黒維の一撃をくらい、体がボロボロとがずれていった。
やがて体は灰となり、消えていった。
(終わったぁーー!)
激しい戦闘を行った黒維は疲労で倒れてしまった。
(このまま寝たい)
「これが俺の仕事か」
黒維は改めて陰陽師という仕事の厳しさを認識する。
「あ、あの!!」
すると先ほどの女の子が近くに来ていた。
「助けていただきあ、ありがとうございます!」
「大丈夫だよこれがら俺の仕事だから」
これからの仕事だから
女の子の名前は牧谷はるかと言います
多分この先出てこないので覚えなくていいです