花子さん①
怨怪
人のいる場には"負"の感情が湧く
負の感情はやがて溜まり"怨怪"となる
怨怪は人を#/t"☆か*する
2023年7月29日 21時23分
蝉の鳴き声も聞こえなくなり、人通りも少なくなってきた時間帯には中々見かけない制服姿の男が、中学校の前に立っていた。
男と言っても、歳は17歳から18歳くらいであるであろう若さだ。
その男の制服は真っ黒だった。
夏に着るのを躊躇ってしまほどの、真っ黒の制服だ。
「暑い」
(夜中と言っても夏だからな、サウナみたいなもんだろこの制服、拷問かよ)
黒い制服姿の男は何やら緊張している様子だった。
一応説明しておくと、俺の名前は黒維斬谷
今日が初任務の新人の陰陽師だ
陰陽師ってなに?
そんな君に教えてあげよう!
陰陽師とは、怨怪が人間に危害を加える前に祓う仕事
今回は初任務だから、簡単なのであまり気負わず頑張っていこうと思う
今回のターゲットは、花子さん
あまり怨怪詳しくない人でも知ってるくらいメジャーな怨怪だ
あまり好戦的ではないらしいので、そこまで気負わず頑張っていきたい
「で、ここが目撃情報多数の三輪中学校か」
昔ながらの木造建築な建物で、歩くとギシギシ鳴るような、そんなボロボロな建物だ。
現在ではもう使われていなく、本当におばけでも出てしまいそうな見た目をしている。
「なんか崩れそうで入りたくないな」
「まぁそんなことないと思うけど」
ギシっ
「うっ」
(なんか心臓に悪いな、)
ギシっ
かつては活気に満ち溢れていたであろう廊下を、ギシギシと嫌な音を立てながら歩いてゆく。
(異変は感じないな)
そしてしばらく嫌な足音を立てながら進んでいく
ギシっ
(なんだ!?)
「キャーーーッ!!!!」
廊下の先から普通に生きていけば聞くことがないであろう大きさの悲鳴がギシギシと嫌な音と共に近づいて来た。
ギシっギシっ
(どういう状況だ!?)
黒維は突然聞こえてきた悲鳴と、近づいてくる嫌な足音で混乱していた。
そしてギシギシと嫌な足音は黒維を急かすよう焦らせていた。
「ん?」
「助けてくださいァァい!!!」
黒維の目の前に見えたのは、おそらく中学生と見られる制服を着た、女の子だった。
息を切らしながら走ってきた彼女は、汗でびしょびしょだった。
「お、落ち、落ち着いて」
(俺が落ち着いてねぇじゃねぇか!)
「落ち着いて、ゆっくり何があったか教えてくれる?」
「あ、はい!!」
そして元気いっぱいな返事をした彼女は、今起きたことについて説明した。
「えっと、今日友達と一緒に肝試ししようって約束してたんですよ。」
「誰も来ませんでしたけど、」
「それは残念」
「そこはいいんですよ!」
「それでこのまま帰るのも嫌だなぁって思って、一人で肝試ししてたんですよ」
「一人で?!」
「それで、有名な花子さんのやつやろうとしたんですよ」
「3番目のトイレを3回叩くやつ?」
「それです」
「そしたらでできたんですよ、花子さん」
「そんな今日の夕飯何?みたいなノリで話すことじゃないね」
「こういう時こそ冷静にです!」
「なるほど?」
「それで今どこにいるかわかる?花子さん」
「わかんないです」
「逃げてきたから、追ってきてるかもわからなくて」
「そっか」
(一般人をこのままにするのは危険だしな、一旦学校に一緒に出るか)
ギシっ
嫌な音がした。
ぎしっ
よくないことが起こるような。
ギシッ
そんな音が。
足音の先する方向へ、目を向けると
そこには花子さんが立っていた。