憐逅だとか
美しくはなく、人の業の物語。
秋の終わりに近い頃、その日もいつも通りの日常だった。
「おはよう、はじめましてじゃないけど、ちゃんと話すのは、初めてだね」
この一言があるまでは。
「僕」は、一目惚れだったのかもしれない。
それとも、ただの勘違いだったのか、今となってはわからない。
けれど、あのとき、自分の中で何かが変わったような気がした。
これからの日々はあっという間だった。
もしかしたら、「僕」の知り合いの誰よりも仲良くなったかもしれない。
ある日、ふとした拍子に話題が「小学校の頃」に及んだ。
ほんの些細なきっかけだった。けれど、今となってはそれこそがすべての始まりだったのかもと思う。
そうここで、彼女と「僕」で共感をしてしまった深く深く、共鳴すらも感じ、心が通じ合い過ぎてしまった気がするほど。だが彼女には恋人がいた。
その恋人もまた、「僕」の友人であった。だが彼女と「僕」は、あるまじき事をしてしまう。
彼女のことが愛おしくたまらなくなって、時を忘れただ時に溶けゆくように、月光の下で溢れゆくまま、後悔と、不安、少しの期待、密かに、漏れる声すらも、ただ愛おしく、それこそも罪深く、ただ苦しくもあり、消えいってしまいたい。
互いの匂いが、つくほどの事のあと、彼女は何を思っただろうか。
「僕」にはわからない、今消えゆくその灯火を灯すことができないことに変わりはない、人の心を知るには、幼過ぎて、人を感じるのが早過ぎた。
また
幾度の冬を越そうと雪が溶けることはなかった。