4.消したい想い
消したい想いって誰にでもあるんかな。
でも、消すって虚しくね?(俺の意見だけど)
今日は日曜日。昨日の事が嘘みたい。
でも外はまるで私の気持ちみたいに大雨だ。
昨日何があったかって?翔君に好きな人がいるって分かったの。
もう私の心はボロボロだよ。
この気持ちも大雨と一緒に消えてしまわないかな。
翔君の事、忘れられたらどんなに楽かな?
こんな事ならいっそ好きになんてなりたくなかったよ。
涙が頬を何度もつたう。
どうして私、 翔君を好きになってしまったのかな。
まだ出会ったばかりのはずなのに。
私は部屋でずっと 泣いていた。
今までのふわふわした気持ちなんて何処にもないの。
飛んで行ってしまったの。
でも、何故かまだ翔君を好きなままなの。馬鹿だよね。
諦めたら楽になれるのにっ…。
苦しくて苦しくてもう涙を止める事なんて出来なかった。
涙と一緒にこの思いも流れて消えてしまえばいいのに。
その時だった。静かにドアが開いた。
視界がにじんで誰が入って来たのか 分からない。
急いで涙を拭う。目の前に居たのは湊だった。
湊は勝手に部屋に入っておき ながら泣いていると知っているくせに慰めもせずただ「涼花」と呟き私の部屋にあるピアノを 勝手に開き、曲を弾き始めた。
とても綺麗で儚い音に私が聴き入っていると湊は弾きながら
聞いたこともないくらいの優しい声で「大丈夫」と言ってくれた。
そういわれた瞬間涙がまた溢れて何度も何度も頬をつたった。
湊は無口だけど本当に優しいよ。
ピアノから湊の優しさが感じられる。
とても落ち着くメロディーこの曲!私の好きな曲だ。
覚えていてくれたのかな。嬉しい。
湊の優しさが痛いほど伝わってくる。
気が付くと私は泣き止んでいた。
すると湊は ピアノを閉じ「何があったんだ?」と聞いてきた。
やっぱり心配してくれていたの。
その瞬間悲しい気持ちよりもこんなに優しい幼馴染をもった私って幸せ者だなって思った。
本人に言うのはちょっと恥ずかしくて嫌だから「ありがとう」という言葉に変えた。
そして正直に全部 話した。
すると湊は「そっか」とそっけなかった。私は傷ついた。
言うのとっても怖くて不安 だったのに…。と思ったから。
だからつい「そんな言い方ひどいよ」と言ってしまった。
湊はわざとじゃないのに、ただ上手く言葉に出来ないだけなのに。
私最低だ。と思っていると湊は「ごめんな。上手に言えなくて、なんて言って良いか分かんないんだ」と泣きそうに言った。
私最低だ。
湊がそっけなくなってしまう理由誰よりも知っているはずだったのに。
湊、悩んでいるの知っていたのに。
いつも私自分の事ばかりでそんな私に優しくしてくれた湊を傷つけてしまうなんて。
私は今謝らなかったらいけないと思い「ごめん!湊が悩んでいるの知って おきながらさっきあんなこと言って」と言うと湊は驚きながらも「いいよ。涼花が勇気出して言ってくれた事、俺も知っているのにごめんな」と言ってくれた。
湊と仲直りした瞬間。翔君との事を思い出して胸がきしんでいると湊が「俺だったら泣かせないのにな」と言ってきた。
え?と思っていると「あ、なんでもねぇよ」と言い少し間を開けてから「勘違いすんなよな」と言ってきた。
いや、勘違いなんて最初からしていないのにな。と思っていると湊は 「とにかく無理すんなよ」と言って帰って行った。湊って本当に優しいな。
でも…出来れば まだ傍に居てほしかったよ。
なんて考えていた時だった。
森田さんからメッセージが着た。
「月原さん、今からちょっと話したい事があるから電話してもいいか?」
「いいよ」と送るとすぐに電話がかかって来た。
急いで出ると「月原さん春日の事好きだってこの前言ってただろ」と言い「あのさ-」と言いかけて「やっぱりなんでもない」と言い 「上手くいっているん?」と聞かれ思わず私は泣きだしてしまった。
すると森田さんは 「どうした?俺なんか言った?」と聞かれて「違うのっ」と昨日の出来事をつっかえながら 話すと森田さんは「中野って俺、嫌いやわ」と言い「春日って見る目無いんや」と言ったから 私は「そうなのかな」と言い「でも中野さん私なんかよりも可愛いから仕方ないよ」と言うと森田さんは「私なんかとか言うな。後、つ、月原さんの方が可愛いぜ」と言った。
私の心は 素直だからドキドキと高鳴ってしまった。
森田さんの事だからきっと誰にでもこんな事、言っているのよって言い聞かす。
ほんと不意打ちでびっくりしちゃった。
森田さんってほんと無邪気だなって思っていると森田さんは「月原さんは今どうしたいん?」と聞き「また明日」と言い電話が切れた。『月原さんはどうしたいん?』と言う言葉が頭に反響する。
私はこの想いを 消したい。
早くこの想いを消したいよ。
諦めたいよ。と涙が零れてくるの。
そして次の日 学校に行くと翔君がもう来ていた。
翔君を見た瞬間心がきしんだ。
席に座ると翔君は「あっ! 涼花おはよう」と優しく笑いかけてくれた。
そこに森田さんが割りこんできて「月原さん おはよ」と言ってきた。
意地悪と思いながらも「森田さんおはよ」と言うと森田さんは「昨日、俺が聞いた事考えてきた?」と言ってきた。
「一応」と答えると森田さんは「じゃあちょっと こっち来て」と廊下に連れていかれた。
早く帰りたいと思い「この想いを消したい」と言うと
森田さんは『諦めるなよ』とは言わずに「それが月原さんの本音ならそうしなよ」と言って きた。
驚いていると「じゃ!教室帰るぞ」と言って私を席まで帰してから「じゃあまた 休み時間」と言って去って行った。
翔君と喋っていた中野さんも「また休み時間ね」と言って去って行った。
中野さんが帰ると翔君は「涼花やっぱり森田君となんかあったんやろ」と 言ってきた。
慌てて「ほんとになにもないよ」と言うと翔君は「じゃあなんで涼花、僕にすぐ嘘つくん?」と言われた。
翔君があの日どうして悲しそうだったのか分かった。
自分だけ嘘 つかれていると思ったからなのね。
私、自分の事ばっかで周りが本当に見えていなかったな。
消したい想いが溢れてしまった。
忘れたいのに、諦めたいのに、消したいのに、翔君を困らせたくないのに。
どうして溢れてしまうの。
私が涙を零すと翔君は「ごめん、別に責めている訳じゃないねん」と言っているけれどそんな言葉届いていなかった。
だって消したくても 消せない事に私は涙しているのだから。ほんと最低だよね。
翔君を困らせてしまっているのに涙が零れてしまうなんて。必死に笑顔を作ろうとしていると翔君が「あの涼花ってもしかして誰かに失恋したん?」と聞いてきた。
図星で固まっていると「なら泣いちゃうのも仕方ないからさ僕には遠慮しなくていいで」と言ってくれたけれどあまりにも驚いて涙も乾いてしまったの。
そして学校が終わり家に帰ると湊が居た。
「湊どうかしたの?」と聞くと
「おかえり。今日涼花の母さん残業で遅くなるから俺が代わりに飯作りにきた」と言った。
驚いていると湊は「誰だって失恋はするよ。だから元気出せ」と言ってくれた。
きっと この言葉をいう為にたくさん考えたのだろうなと思っていると湊は「早く手を洗えよ」と言われた。
慌てて手を洗いに行っていると「慌てすぎだろ」と湊に笑われた。
私がムッとしていると「はい。シチュー作ってみた」と言って夕飯を出された。
私は思わず「美味しい!」と 笑顔で言うと湊に大笑いされた。
「そんなにおかしいかな」と言うと「めちゃくちゃ面白い」と言われた。
まぁ湊が元気になってよかったって思っていると「俺はもともと元気だ」と言い「元気がないのはお前だ」と言われた。「ほんとっ!いつも一言余計なのよ」と言うと 「事実しか言っていない」と言われて「確かにそうだね」と言うしかなかった。
湊って優しい時と一言多い時の落差が激しいよねと思っていると「お前の感情よりはまし」とまた一言多いから…。
でも、湊が居るなら失恋の痛みも忘れられるかもって思ったの。
だけれど、いざ夜一人になると辛くて痛くて苦しくて耐えられそうにも諦められそうも なかったの。
消えない想いに涙が溢れて夜じゅう泣いて朝、湊に会うまで止まらなかったの。
涼花は翔への想いを消せるのでしょうか?