15.彼を傷つけない為に
次の日になり僕は学校に行く。着くと森田君がいた。
僕が声をかけると森田君は「よう春日。今日こそ上手くいくといいな」と言った。
僕も頷く。不安で仕方なかったけれど…。僕やって今度こそ成功させてやるんや。
そして、放課後になりまた森田君と尾行をする。
今回も湊は月空公園に向かった。昨日と同じことがおきる。
森田君が先に行く。何か話している。森田君が何か怒鳴っている。
とうとう僕の出番だ。僕は勇気を出して走ってそっちに行く。
驚いている湊の顔が見えた。彼に向かって僕は言う。
「僕は、湊がいない世界で生きられる気がしないんや。
だから、わがままかもしれないけれど僕の為に生きてほしい。
それから…何がそんなに悲しいのか辛いのか教えてほしいんやけど」
湊は目を見開いて「わかったよ。全部話すから」と言った。
話の内容は前も言ったように家に親がいない事。
一人で寂しくて辛かった時、手を差し伸べてくれたのは涼花一家だった事。
涼花達が居場所をくれてなんとか今まで生きて来られたけどもう無理な事。
理由は涼花と森田が付き合ったから湊にはもう居場所なんてないという。
だから、もう生きるのをやめようと思った。最初の日、自分と同じように…。
苦しんでいる僕を見て助けたくなったこと。涼花が好きな事。
全部聞いて僕は辛かった。こんなの失恋やないか。湊が涼花が好きやと知った。
だからあの日、話を逸らされたんやと今気が付いた。
僕は…湊が好きやのに。言えない。もう絶対に言えない。言ったら傷つくんや。
もう嫌や。僕やっていっそ消えたい。また…失恋やった。なんでなんや。
なんでいつも僕は失恋なんや。湊は吹っ切れたように笑っている。
湊は救えたみたいやけど…僕はまた深い暗闇に飲み込まれていくような気分や。
でも、それでいいんや。湊が幸せなら僕は真っ暗でいい。そう思える。
強がりかもしれないけど。今はそれでいい。湊が幸せそうになったのだから。
そして、二人で夕方の公園に居る。森田君は気づいたら帰っていた。
わざとなのかただの気まぐれなのかはわからない。だけど、これだけは言える。
森田君は良い奴だ。儚い夕焼けを二人で見ているうちに泣きそうになる。
春休み、毎日のように彼とこんな夕焼けを見ていた事を思い出す。
きっとこの夕焼けは…僕の恋の色や。僕にとって夕焼けは儚い恋や。
涼花の時も夕焼けの中ばかりやったけ…。やけど僕は大丈夫や。
何度失恋したって立ちあがるんや。ずっと、そうしてきたやないか。
なんで、涙が頬を伝うんやろうか?湊がそんな僕に気づき動揺する。
困らせるつもりなんてなかったんや。そんな顔で見ないでくれや。
湊が呟くような声で聞く。「俺のせいで泣いているのか…?」
僕は気づいたら頷いていた。彼の前ではいつも本音を言ってしまいそうになる。
だけど…言えない。これを言ってしまえば彼を傷つける事になる。
僕は…相当なものを見つけてしまったんや。それは自分より大切な人。湊や。
伝えたい。でも…僕には彼を傷つける事ができない。怖いんや。
人を傷つけるのがこんなに怖い事を僕は知らなかった。僕は選んでしまった。
心を閉ざす事を。彼を傷つけない為に。ただそれだけの為に。
クライマックスどんどん近づいてきた!




