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11.この想いの答えは

今日が春休み最後の日や。僕は朝起きて下に行く。


兄が朝ご飯を作ってくれていた。僕は「ありがと」と言った。


そして食べる。兄が「翔はもう高校どこ行くか決めたのか?」と聞いてくる。


僕は「まだやけど」と言うと「明日から中三だぞ?」と言われる。


僕はため息を吐き「わかった。考えてみるから」と答える。


僕は朝ご飯が食べ終わると部屋に入り森田君にLINEを送る。


『高校どこ行くかもう決めたん?』すると三十分後返って来た。


『行きたい所はもう決めた』僕は愕然とする。森田君でも、もう決めていた。


これは焦るべきだと自覚する。次に湊に同じ文を送る。


一時間後返って来た。『高校なんて行かない』湊にしては投げやりな書き方や。


僕が固まっていると『ごめん。気にすんな』と送られてきた。


その場に茫然と立っていた。なんてという言葉が頭に焼き付いて離れない。


一人茫然と立っていると「翔?」と兄が心配そうにしている。


慌てて「なにもないで」と言うと兄は「あのさ、いい加減やめろ」と言った。


えっ?と言うと「作り笑いとかなんもないって嘘つくの」と言われた。


驚き固まっていると「バレていないとでも思っていたか?」と言っている。


頷くと「翔、人に気を遣っているくせに全然周りが見えていないよな」と言う。


僕は、きっとなにも気付けていなかったんや。湊の事だってそうや。


彼がどんな気持ちで高校なんて行かないと言ったのか想像するんや。


それが分かればきっと上手くいくはずや。兄が「俺を頼れ」と言ってきた。


僕は驚きで口が開いたままになってしまう。頼っていいのやろうかとまず思った。ずっと人には迷惑をかけないようにしてきた。


だから、僕が困惑していると兄が「母さんの言葉は気にすんな」と言ってきた。


僕はもっと驚いて固まる。僕が母さんの言葉で呪縛されていた事もバレていた。


聞き飽きるほど言われた人に優しくしなさいという言葉だ。


だが、この呪縛はそんな簡単に消えるようなものやない。


そう思っていると兄が「分かっている。今すぐ消せとは言わない」と言った。


優しく、僕の心に染み込んでいく。兄は優しすぎる。そんなの分かっていた。


だけど今、気づいた僕は何もかも全然理解していなかった。


理解した気になっていただけや。今だってそうかもしれへん。


だって人の事を全部わかれる訳がないんやから。誰だって気持ちはわからない。


湊の気持ちだって分かった事がない。いつも当てられてばかりやった。


さっきの言葉の本当の意味を知りたい。


彼の事を知りたい。僕は、彼の役に立ちたい。初めてやった。


人の為に自分の事なんてどうでもいいと思えたのは。


彼のはにかむ笑顔や不器用な仕草が頭に焼き付いている。


人には優しくしなきゃいけない、迷惑をかけてはならない。


今まではずっとそう思っていた。だけど僕は湊と出会ってそうやないと気付いた。


確かにそうやけど時には迷惑をかけたっていいんやって知った。


だから、湊にも僕を頼ってほしい。僕は湊に頼られたい。


想いが溢れていく。そうや僕は、湊に恋している。そういう好きやったんや。


友達以上になりたい。特別になりたい。だけどこの想いは多分、叶わない。


ほんま僕っていつも失恋ばっかやな。でも、もう大丈夫やで。


自分なんて大っ嫌いやけど湊の役に立つためなら頑張って生きられる。


僕は「兄さんってほんまに優しいよな」と言った。兄はこう言った。


「翔も、充分優しいと思うで」僕は驚いた。僕なんかが優しい?


ありえへん。湊の事もまだ救えへん僕が優しかったら世界中の人が優しいやん。


「翔、悩んでいる事あるよな?」と兄が聞いてきた。僕は一瞬悩む。


この悩みと想いを言えばいくら兄でも引くかもしれない。


こういう事、考えてしまう所もほんまに嫌いや。だけどまだ生きなきゃいけない。


湊、待っていて僕は湊を助けるために今日、会いに行くから。


兄さんに引かれたって構わない。それで湊を救えるかもしれないなら。


僕は湊に救われた。あの日、全てを投げ出そうとした僕を湊が止めてくれた。


湊に出会えたから、生きたいとまた思えたんや。今度は僕に助けさせてくれ。


「兄さん。引くかもしれないけれど…聞いてくれる?」


僕はそう前置きをして今までの事を話した。兄さんは真剣に聞いてくれた。


そして「引かないに決まっているやん。俺も優にそう思った事あるし」と言った。


「えっ⁉そうやったん⁉」と言うと「引かれるかと思って黙っていた」と言う。


僕は「それで優君とはどうなったん?」と聞くと「失恋した」と言った。


僕は「そうやったんや」と言うと「この前、A県に行った時の事やで」と言った。


めっちゃ最近やんと思いながら兄のように想いを告げられるか怖くなる。


告白すれば友達ですらいられなくなるかもしれない。なら黙っておこう。


兄に「兄さんはよく頑張ったよな」と言った。兄は「翔もこれからだろ」と言う。


僕は曖昧に頷く。兄は「くれぐれも無理すんなよ」と言ってくれる。


苦しい。好きになるって恋をするってこんなにも辛かったっけ。


涼花の時は振られるまではこんなに辛くなかった。はやし 美優みゆう


美優は僕が小学校から中一の時まで好きやった人。その時は全然辛くなかった。


だけど湊の時は…辛い。とても苦しい。これが恋なんやな。


恋って苦しいんやな。僕、今まで浮ついた恋しかしてなかったんやろうな。


本気の恋やなかったんやろうな。でもきっと今回は、本気で好きなんや。


湊、僕はなんて言ったらいいかわからないけど…湊の味方や。いつだって。


あぁもう本当に意味わからんくなってくる。やけど、絶対に助ける。


高校に行けないんやろうか。あんなに頭がいいのに…。教えてくれたのに。


行きたくないわけがない。彼は勉強するのが楽しそうやった。


時には僕をバカにするくらいに勉強を楽しそうにしていた。


わかったらめっちゃ嬉しいって言っていた。もしかして…。



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