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10.恋情?友情?

それからというもの、僕は湊に会う事を楽しみにして生きていた。


湊がいるから生きられる。いつしかそう思うようになっていた。


いつものように四時前に家を出る。公園に着くと湊がもういた。


僕は慌てて走って「おまたせー!」と言う。湊は「別にまっていない」と言った。


そのぶっきらぼうさにクスっと笑ってしまう。緑色の葉っぱが彼の頭に落ちる。


思いっ切り笑うと彼は「笑うな」と言っている。


でもさ、面白いんやんか頭の上に葉っぱってまるで化け狸みたいで。


僕は「化け狸みたになっているんやもん」と言う。


湊は「は?」と言いつつ急いで頭から葉っぱを払い落とす。


僕は思う。ずっとこんな日常が続けばいいのにと。


願わくばもっと湊の傍に居たい。湊は僕を救ってくれたんや。


それだけでも、とても感謝しているで。だけど、だからこそ、傍に居たいんや。


これってわがままなんかな?大切な人の傍に居たいと思う事は。


僕は本当に湊がかけがえのない存在なんや。


湊が居ない世界なんてもう絶対に考えられへんくらいに。


僕の世界は湊のおかげで色づいたんや。


この想いはなんなんやろうか?分からない。…わかりたい?


僕は何故か…今まではなにも知らないで生きていく方が良いって思っていたのに。


初めて自分の気持ちを知りたいと思った。この想いを知りたいと思った。


心からそう思えるんや。ある日の事だった。湊がふいに呟く。


「醜くていいんだよ」僕は驚き口をポカンと開ける。


だって…それは、もしかしたら僕がずっと求めていた…答えなんやから。


長年認めてほしかったはずの言葉。あぁそうや。人はきっと醜くてもいいんや。


ほんまに湊はすごいなー。そういえば湊…僕の想いまたいつ当ててくれるんやろ。


そう思った時やった。湊が悩みながらも意を決したようにこう言った。


「翔は…なんか呪縛みたいなものをもっているんじゃねぇのか?」


当たっていた。驚きを隠せないでいると湊は「当たったのか?」と聞いてきた。


頷くと彼も驚いている。じゃあ、まぐれだったのやろうか。


でも…やっぱり気づいてくれたって思いたい。湊にだけはわかっていてほしい。


わがままなのは重々承知の上やで。夕焼けが儚く輝きだす。もう五時過ぎや。


この公園は春の色で溢れている。乙女色の花。薄凪の木に、長春色の花。


そういやさっきまでの青空は勿忘草色やった気がするな…。


この夕焼けはオレンジ色と赤みがかった色とちょっと淡い桃色…。


初めて涼花と過ごした放課後もこんな夕焼けが広がっていたっけ。


懐かしいなぁ。あれからもうすぐ一年がたつんか。僕がここに来てから。


涼花に出会ってから。あっという間の日々やったな。


僕は今、仲良くなると思ってもいなかった湊と毎日を過ごしている。


人生ってその時になるまでわからへん事がたくさんある。


僕はこの美しく儚い夕焼けをこれからも湊とみたい。


あぁそうか…僕は湊が好きなんや。


この前の昼間、森田君に言われた言葉を思い出す。


『春日ってもしかして新しく好きな人できたん?』


そうや。僕は湊を好きになった。だから涼花への恋心から冷めたんや。


森田君…意外と観察力あるやんか。


ほんまに僕、いつからこんなにわかりやすくなったんやろ。


僕は幸せ者やと思う。だって春休み毎日好きな人に会えているんやから。


湊は優しくて強くて時に繊細な感じがする。だけど…心強い。


湊の優しさに今、僕は触れられている。これがどういう好きなのかはわからない。


だけど、きっと友情かなって思っている。だって相手は男子やしな。


恋やったらただのまた失恋やん。そうしたら僕、失恋ばっかの男やん。


湊が「わかった。翔は自分の事が嫌いだろ?」と言われた。


合っている。僕は固まる。そうや。僕は自分が大嫌いやった。


でも、最近湊といる内にその事すら忘れていた。


僕が固まっていると「翔?大丈夫か」と湊に言われる。


どうやら固まっているだけじゃないようや。だけど今の僕は頭が回らない。


苦しい。久しぶりにめまいと頭痛に襲われる。


呼吸がしにくい息をしようとしているのに上手く吸えない。


湊が「ゆっくり吸って、ゆっくり吐いて」と言ってくれる。


湊の手が僕の背中に優しく置かれている。やっと呼吸が落ち着いた。


その時、湊が「ごめん、言わない方がよかったな」と言われた。


それは嫌だった。気づいてくれて嬉しかった。だから「嫌や」と言っていた。


湊が目を丸くしている。僕は続けて言う。


「僕、湊が気付いてくれていつも嬉しかった。だからこれからも言ってほしい」


湊はクスっと笑った後「わかった。これからも言う」と言った。


僕がホッと胸をなでおろすと湊も胸をなでおろしていた。


もう六時やった。僕は「また明日やな」と言って湊と一緒に公園を出る。


手を振って別れた。家に帰ると兄がいた。僕は「ただいま」と言う。


兄が「おかえり。翔、俺優と仲直りできたで」と言った。


僕は微笑んで「よかった。優君もきっと嬉しかったと思うで」と言った。


僕の想いは日に日に強くなっている気がする。だけど、少しわかった。


僕、多分湊の事がとても好きなんや。だけどこれ以上知れば大変な事がおきる。


直感的にそう思った。だけど、知りたい。この想いを知りたい。



翔の想いはなんなんだろうな。

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