7.翔の兄の過去
家に戻り昼食の準備を始める。冷蔵庫を開こうとしたら兄が居た。
兄は「俺に任せとけよ」と言いご飯を作り始めている。
僕は「兄さん僕も手伝うで」と言い野菜を洗っているとふと兄が呟いた。
「翔…俺さ今もあの日の事、引きずっているんや」と言う。
あの日-春日 蓮。兄は友達を失った。
死んだ訳ではではなく。喧嘩をして言い合って友達じゃなくなってしまった。
僕はたまたま公園に来ていて彼らを見てしまった。
友達の名前は七夕 優。繊細で臆病な少年やった。
だからあんなふうに二人が怒鳴りあっているのはとても不思議やった。
二人は本当に仲がよかった。昔から優君は家によく来ていた。
でも…あの日から二度と姿を見せる事はなくなった。
今から話すのはその公園でのやり取りや。
兄が「俺は優が幸せになってくれるならそれで嬉しいんや!」と言う。
優は「僕は蓮にこれ以上迷惑かけたくないんだよ!」と言っていた。
兄が泣きながら「迷惑だなんて一度も思った事ないで」と言う。
優君は「僕はそう思えないんや」と言い「僕は蓮と違って醜いんや」と言った。
兄は「だから‼優は醜くないやろ!何回言ったら分かるん?」と言っている。
すると優君は目に涙を浮かべ「なんで蓮はそうやって優しくするんや」と言う。
兄は「そんなの優がとっても大事やからに決まっているやん」と言う。
優君は「蓮の傍に居ると落ち着かない。だから、もう関わりたくない」と言う。
兄は大泣きして「そんな…なんで俺にとって優が一番やのに」と言っていた。
本当に辛そうだった。二人とも。僕は今目の前にいる兄を見た。
「そうなんや。相談なら聞くで」と僕が言うと兄は「ありがとう」と言った。
そして「俺、やっぱり優が一番なんや。だから、仲直りしたい」と言った。
僕は「そうなんや。やっぱり兄さんは強いな」と言う。
兄は「俺が強い?」と驚いている。僕が力強く頷くと兄さんは笑ってくれた。
「やっぱり翔に相談してよかった」と言い「俺、A県まで行って来る」と言った。それは決意の、固まった。表情だった。僕はがんばってと呟いた。
でも…本当は兄が羨ましかった。優君の気持ちがよくわかる。
兄は皆の中心にいつもいて誰とでも話している。しかも文武両道でイケメン。
女子からもとても好かれていた。だからきっと優君は兄を妬んだんやろうな。
そんな自分の醜さに苦しくなったんやと思う。あの日は僕が小6で兄が中2だ。
今は僕は中二の終わりでもうすぐ中三。兄は高1の終わりでもうすぐ高2だ。
兄は3年たっても友達を大切にしている。いきなり切られて傷ついたはずやのに。
兄の心の強さに僕はまた頭痛を感じる。兄は何も悪くないのに…。
昼ご飯を二人で食べる。少し居心地が悪くて急いで食べてしまう。
食べ終わった瞬間僕は「ちょっと友達の所、行って来る」と言い家を飛び出した。
蓮の話は違う巻で詳しく書きたいなって思っている。




