2.森田への嫉妬
次の日、僕は森田君に電話をかけた。
サンコール目に彼は出た。
「もしもし春日」と言われ「もしもし森田君」と言うと「春日どうした?」と心配そうに彼は言う。
その優しさが何故かムカついた。だって…。
ここから先は言わないでおこう。
ここから先の言葉を認めてしまったら僕はダメな人になってしまうやろうから。
僕は「今からちょっと月空公園行かへん?」と言う。
森田君は「いいぜ!じゃあブランコのあたりで待っている」と言い電話が切れた。
結構切り方が唐突な奴だなと思いつつそれも個性だと思う事にする。
そして、十五分後くらいに月空公園に着くと彼はブランコに座っていた。
今にも消えそうに見えたのは気のせいやろうか。風に飛んでいきそうに見える。
森田君は僕に気づくといつもの様にヘラヘラと笑い出した。僕の傍に走って来た。
「よっ春日!今日はどうした?」と言う。あまりに無邪気な笑顔にムカついた。
僕は取り繕うのも忘れて「お前のせいだ‼」と叫んでしまった。彼は目を見開き。
またへらへらと笑い出し「えっ俺なんかしたっけ?」と戸惑いの表情で言った。
彼の無邪気さにエスカレートして「お前さえいなければっ!」と言ってしまう。
何言っているんや僕?こんな事言ったらいけないやろう?人に優しくしなきゃ。
人を傷つけたらダメやろ?と僕の呪縛が言うけれど僕は止まらない。
「お前まだわからないか?お前に涼花を取られた事を怒っているんや!」と言う。
森田君は一瞬驚いたような顔をした後「ごめん」と言う。
そんなので許されるとでも…。「謝ったって僕は許さない」と言う。
森田君は「そうだよな…ほんとごめん」と去った。その姿は辛そうだった。
その姿すらも無性にイライラする。僕だって辛いのに…。
ふとそんな事を思っていた。でも…顔や声に出すのは怖い。
周りにどう思われるのか怖い。図々しい奴だと思われるかもしれない。
嫌われるかもしれない。僕は嫌われるのがとても怖いんや。好かれたいんや。
なのに…森田君はいつだって素直で無邪気で明るくて友達も多くて…。
なんでこんなにもイライラするんやろうか?僕の心が…。ダメだ認めたらダメだ。
認めてしまったら僕は、僕は、僕は…まためまいがする。前が全然わからない。
頭痛で自分が壊れそうになる。でも、まだこのいらだちは消えなくて。
必死に家に帰ろうとフラフラの体を引きずるように向かおうとする。
みえないはずなのに。止まったほうが安全やのに僕は必死に家に向かう。
どうして森田君はがんばらなくても皆となじめるんやろうか。
僕はどうして…友達が出来ないんやろうか。
どうして、どうして…。
とうとう立っていられなくなる。
それでも必死に帰ろうと体を引きずる。
その時、坂道に来てしまっていて森の中に僕は吸い込まれるように消えていく。
背中に衝撃が走る。意識がふっと遠くなっていく。
それでも僕は…涼花の事が―
それでも涼花の事が―なんだったんだろうな。