1.好きってなぁに?
第一巻の一話。主人公は好きという感情がなんなのか悩み始めたようです。
私の名前は月原 涼花。
ごく普通の中学二年生だ。
いつもの様に朝起きて朝ご飯を食べて制服に着替えてリュックの中身を確認して家を出る。
今日も空は曇っていた。
一緒に登下校する友達なんていないから一人で早歩きで学校に向かう。
別に、友達が 居ない訳じゃない。
ただ誰の一番にもなれなかっただけなの。
皆に毎日笑顔を振りまいて 会ったら相手の話に適当に合わせて作り笑い。
だけど私は時々夢を見る事がある。
それは- 三つある。
その一つはある人にまた会う事だ。
学校に着くと皆がひそひそと何か噂話をして いる。
内容は、「今日転校生が来るんだって」という話だった。
そしてホームルームの時先生が「今日このクラスに転入生が来る。
皆仲良くしてやってくれよ」と言いドアを開けると アイドルみたいな顔立ちの男の子が入って来た。
私は初めて男子がカッコいいと思った。
その人は教卓の前に立つ。
「三重県から転校してきました。春日 翔 です。」
春日君は私の隣の席に座って「よろしく」と微笑んでくれた。
その時、私はときめいていたの。
一瞬でモノクロだった世界が色ずいたようだった。
この気持ちはなんなのだろうか。
あっ!私は慌てて「よろしくね」と言った。
そして休み時間になると春日君は「君なんて名前なん?」と聞いてきた。
「私の名前は月原 涼花だよ」と言うと春日君は「そうなんや」と言い
「僕の事は翔って呼んでくれていいで。だから涼花って呼んでもいい?」
私は「いいよ」と言った後「翔君でもいいかな」と言うと
「いいで」と言ってくれた。
その時、誰かのひそひそと言っている声が聞こえた。
私にはそれが『あの子転校生と 隣の席だからって話過ぎ』とか
『ずるいよね』とか言われている様な気がした。
周りを気にしていると翔君は「どうしたん?元気ないん?」と聞いてくれる。
だから私は慌てて「なんでもないよ!大丈夫!」と笑顔を作ると翔君は、
「僕には遠慮しなくていいんやで」と言ってきた。
その言葉に救われたような気がしたのは 私の勘違いだろうか?
その時だった。
「春日君!わたし同じクラスの中野 桃葉だよー!
よろしくね!」と、とても可愛らしい顔をして言った。
何故か私はとても むかついたの。
気づくと翔君は中野さんと話していた。
とても傷ついた。
でも、気にしたくなかったからわざと無理やり笑顔を作って次の授業の準備をする。
確かに中野さんは美人で可愛い。でも、私は彼女が苦手だ。
理由なんて単純中野さんは、
私がなりたかった見た目を持っていて私が出来なかった人付き合いを上手にしているからだ。
私だって出来るなら中野さんみたいになりたかった。でも…なれない。
そんな自分が嫌いになってしまったの。
だから、あの日からわたしは彼女が苦手になった。
そしてチャイムが鳴り、次の授業が始まる。
窓から、桜の花びらが舞ってきた。
そうか、今は四月十六日。
まだ新学期が始まったばかり。
なのに私の心はとても無気力。
こんなのじゃ翔君に嫌われちゃうよね…。
そして授業が終わり私はまた一人ぼーっとしていると、
翔君が「涼花大丈夫?」と言われてまた笑顔を作りかけて、やめた。
だって翔君に遠慮 しなくていいって言われたじゃないか。
だから正直に「ちょっと悩み事があってさ」と言うと
「そうなんや。僕で良ければきくで」と言ってくれるけれど。
この悩みは言えるわけがない。
だって翔君の事が何故か頭から離れなくて悩んでいるなんて言えるわけがない。
私が黙っていると「嫌なら別にいいんやで」と言って
やって来た中野さんと話し始めた。
私は何故か とっても傷ついている。
どうして翔君が他の女子と喋っているのがこんなにも辛くて モヤモヤして
ムカつくのだろうか?
私だって翔君ともっと話したいのに、その時だった。
「月原さん何やってんの」と声を掛けられた。
驚いて顔を上げるとクラスメイトの森田 朝陽だった。「あっ森田さんどうかしたの?」と言うと
「月原さん悩んでいる 様に見えたから俺で良ければいつでも相談乗るぜ」と言ってくれた。
森田さんはクラスの ムードメーカーみたいな感じの人なの。
いつも独り言授業中に言っていつもへらへら笑って いるの。
森田さんと私は一年生の時評議委員が一緒だから話すようになった。
時々森田さんは見つめてくることがある。
その時私はいつも森田さんが何を考えているのか分からなくなって困惑してしまう。
そして私から逸らしてしまう。
森田さんはいつもへらへら笑っているくせに時々黙って窓の外を見ている事がある。
私は森田さんが不思議で席が前だった時いつも 森田さんを見ていた。
性格が悪い様で私には(大人しい子)にはとても気遣える所とかに困惑してしまう。
『月原さん急かしたら可哀そうやろ』と言われた時は嬉しかったのにその後自分がまだ考えていないからだって気づいた瞬間ムカつくの。
私は正直いうと森田さんが怖いと いうか不安というか苦手なのかもしれない。
彼と居ると嬉しいはずなのに帰り道一人で帰っている時一、人で居る時、
森田さんの事を考えるといつもあいつなんか!という気持ちになって しまう。
そんな自分が居る事が怖かったのだ。
森田さんの事を考えていると胸がザワザワ する。
だから私は考えるのを止めた。
そしてまだ森田さんが目の前に居て「えっ⁉」と思わず 叫ぶと森田さんは「月原さんほんとに大丈夫か?」
本気で心配している様な目で見つめてくる。
私は慌てて「大丈夫だよ」と言うと彼は「大丈夫じゃないくせに…」と呟いた。
その言葉が心に刺さる。
普通の人とやっぱり森田さんは違う。
普通なら『そっか』と言う はずなのに彼は『大丈夫じゃないくせに…』と言った。
森田さんは引き下がらなかった。
そういう所にまた困惑してしまう。
森田さんは何を考えているの?
森田さんにはどんな景色が見えているの?とつい思ってしまうのは何故なのだろうか。
その時「おい!月原さんまたぼーっとしているじゃんか。
何をそんなに考えてんだよ」と森田さんが言った。
私はなんでもないと言おうと口を開いたのに「好きってなぁに?」と聞いていた。
自分でも困惑していると
森田さんは急に険しい顔をして「誰かに言われたのか?」と聞いてきた。
慌てて首を振ると 「じゃあなんでそんな事、聞くんだよ」と言われた。
「好きの定義が知りたくて」と言うと
「その人の事を知りたいとか守りたいとか仲良くなりたいとかじゃないん?」と 言った。
私はそれを聞いて逆に慌てていた。
だって…余計にこんがらがっちゃったから。
その時私は思った。
森田さんはなんでこんなにも私の事を気にかけてくれるのだろうかと。
森田さんは優しい人なのだろうか。
私が勘違いしていただけなのだろうか。
本当は性格が いいのかな。
悪ぶっているだけなのかもしれない。
だって、私なんかに話しかけて くれるのだもの。
きっと本当に気遣いができる優しい人なのね。私が思わず微笑むと
彼は「月原さんほんとに大丈夫か?いきなり微笑んでさ」と言われた。
確かにいきなり微笑まれたら不気味だよね。
そう思ったら今度は笑いが止まらなくなった。森田さんは
「まぁ月原さんやっと笑ってくれたしいいや」と言ってくれた。
やっぱり森田さんは優しい。
私はそう思わずにはいられなかったの。
だって、彼がこんなにも綺麗な笑顔で見つめてきた から。
私は段々恥ずかしくなって目を逸らすと森田さんは
「じゃあまた休み時間月原さんの 席行くわ」と言って自分の席に行った。
そして、チャイムが鳴りまた授業が始まった。
授業中に 翔君がノートを切り取って手紙を渡してきた。
内容は『涼花って土日暇?』と書いてあった。
私は迷いながらもノートから紙を一枚取ってから切って『まぁ暇かな』と書いて渡すと
『じゃあ今度一緒に映画見に行こうや』と書かれて返って来た。
驚き思わず胸が ドキドキする。
そして少しどう返事を書くか悩み最終的に
『映画いいね!ぜひ一緒に行こう』と書いて渡した。
すると次は『今日の放課後LINE交換しようや』と書いてあった。
だから 『私もしたいと思っていた!是非しよう』と書いて渡す。
授業中にこんな事する日が来る なんてと、とても嬉しい気持ちだった。
私の日々が大きく青春へと傾いていく感じがした。
アイドルみたいに尊かった翔君が今私と映画に行こうと言ってくれた。
こんなの本の中だけの話だと思っていた。
私もしや本の世界に迷い込んでいるのではないかと疑ってしまうほど今日は嬉しかった。
好きがなんなのかいまだに理解出来ないけれどもこの気持ちってもしかしてってふと思ってしまうくらい翔君が気になってしまった。
映画楽しみだな。
涼花は本当に翔が好きなのか?