〜5〜 新世界より
踏み出そう。一歩だけ。
それじゃあさっそくあのおっきい扉から向こうへ行こうと思うんだけどー、その前に向こうのことについて知っておいてほしいことが2つあります!
なるほどー。なんでしょうか?
咄嗟にアリア様が懐から通販番組のような慣れた手つきでカンペを取り出した。そんなサイズ感の四角形をどこに閉まっていたんだという疑問はアリア様の可愛さで帳消しされる。
その1!あなたは天使になります!
ほ、ほう。
基本的に天界では色々役職があって例えば私が迎神ね。それから神官さんだったり色々そういうのがあるだけどまー今は置いといてー、
(だいぶ置いたな)
とりあえずたっくんは天使として天界に舞い降ります。でも安心して!死にたてほやほやの人は絶対天使からって決まってて天界のほとんどの人は天使だから!
了解です!
それからその2!天界では時間がありません!
ん???
あまりに急だったのと世界観的に分かりやすい一つ目とのギャップに思わず声が漏れる。
んーちょっとこれは難しいんだけどーあなた達の言葉で説明するとね。人間の観測効果っていうのは空間に時間を与える、つまり空間を時空へと変化させるものなんだけど。空間には時空のように時間がないのかって話なんだけどないわけではなくてー、時間がない=過去現在未来全てが同時に存在していることになるの。
ふむふむ。
つまり、人間の観測理論によって時間を与えられた空間は時空へと変化するつまり、過去現在未来が同時に存在する世界の時間軸を「現在」に確定させるってのがあなた達の考える時間な訳。
なるほど分からん。
まー理解するのは置いといてー、観測理論の生じない天界では過去現在未来全てが同時に存在しているから時間のない世界っていう意味。
なるほどつまり時間がないんですね。
そゆことそゆこと。
さらにこの世界では考えられない常識なんだけどー、過去現在未来が同時に存在しているからたっくんも現在のたっくんだけがたっくんじゃなくなくなるのね。
ファ!!
音階にしてはファよりも高そうなファが出てしまった。
つまりー、向こうの俺は今現在の巧だけじゃなくて過去の巧と未来の巧もいるってことですか!?
まーそんな感じ!でも完全に別の存在として向こうに存在してるんじゃなくて過去と未来のたっくんも全てあなたの中に仕舞われるの。
仕舞われるってことはそいつらを呼び出してなれる的な?
うん!なれるよ!それはなりたいという想いがあればね。
す、すごい!
向こうは想いの世界だから。
なんか想像とは違う斜め上のファンタジー要素が絡んできた。
でも過去はともかく未来の俺なんて全く見当もつかないしなー。
それはまた確定したたっくんと可能性のたっくんの話になるんだけどー、長くなりそうだから置いとこっかな。
置いときましょう!
俺はとてつもなく新しい世界にワクワクしていた。
それでは説明も済んだし、最後の儀式を始めます。
はい!
まずは背中、、、向けてくれますか?
せ、背中?はい、、、。
俺は背中を突き出す。アリア様の神妙な顔つきに従うまま。
んーここかなぁー。
突如アリア様が俺の背中をなぞりはじめたじゃないか!それもやさしーい手つきで。
あ、アリア様。そう。そ、そこ。そうそう優しくやさし〜く...って!イテェ!!!
背中にちくっと針のようなものが刺さったのか!?
チクッとしますよー!
突然、点滴を打つ前の看護師みたいなことをアリア様が呟く。
もー痛いですよーアリア様。っていうかそのセリフって普通刺す前に言うもんでしょ!
あはは!ごめんごめん。今刺したのは翼のタネ。向こうでいずれ成長して天使の翼になるから!
それって飛べるってこと!?
そうだよー。しかも、私特製オートクチュールです!
や、やったー!
どうやら翼のタネは迎えに来た迎神様その時その時の特製のものを与えられるそうだ。
俺、本当に迎えに来た女神がアリア様で良かったです。
本当!ありがとう!正確には女神じゃないんだけどねー。
あっそうなんすか。
向こうの女神には気をつけてよー。思わず沼っちゃうくらいの包容力があるから。私も何度沼りそうになったことやら。
俺からすればアリア様もなかなかの包容力ですけど。
えーほんとー!嬉しい!
満面の笑みを見せつけてきた。相変わらず可愛い。
また会えますかね?会いたいなー。
会えるよー!私の住む本来の世界は向こうだから。私もたっくんと喋ってて楽しいから会いたい!
もうあなたという概念が天界なのではとツッコミたくなった。
向こうは向こうでそれなりにハチャメチャしてるんだけど、きっと飽きないし楽しいと思うよ!
はい!俺、頑張ってみます。これまでは不幸せにならないために頑張ってる感じだったんですけど、これからは幸せになるために生きたいです!あっもう死んでるんでした笑
ううん生きてる!君は新しい世界で新しく生きるんだよ。
そっか、、、。じゃあ生きます!俺!
よし!
突如アリア様が神様らしい魔法の杖みたいなものを懐から取り出した。相変わらずどこに仕舞っていたんだ。
アリア様が棒を一振りすると巨大な扉というより門が開き出す。世界は真っ白に光り輝いていた。
応援してるからね!たっくん!
はい!俺もです!また会いましょう!アリア様!
うん!また!
最後に二人は手を振りながら巧は仲介世界から新世界へと引き込まれていった。もう一度踏みだしたのだった。
ゆるーくそれなりに投稿したい。