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〜3〜 真っ直ぐ

信じた道が真っ直ぐかどうかなんて後になってようやく分かりますよね。

どれくらい飛んだだろう。空を経て、宇宙なのかどうか分かんない場所にいると思って気づいたらここにいた。あれから時間なんて全然経ってないような気もする。確実に言えるのはここは俺の住んでた世界じゃない。


あのーアリア様ここって。


あたり一面真っ白な空間。底抜けた天井は親しみ慣れた緑の自然で溢れかえっているのが見える。


この門からの方が近道なんだけどー。


前には大きな大きな門が聳え立っている。とても神々しい。


やっぱり巧君は上の方から来てもらうとするかな。

それって俺一人でですか?

うん。

えーアリア様と別れるなんて寂しいですよー!

大丈夫大丈夫!この階段から上に行けてー、そのまま真っ直ぐ行ったところで私待ってるから。

え〜。


いくら神様の場所といえど知らない場所に一人は怖い。現世では迷わないようスマホを常に持ち合わせていたけど。


君なら迷わないと思うよ!私が保証します!

(迷えるんだ、、、真っ直ぐなのに)


門からの方が近道なんでしょうー?


近道って案外遠回りしてたりするもんなんだよー。それに、巧君ならそっちからの方が良いと思うな。自分を信じてきた君なら。

、、、分かりました。真っ直ぐ行きますから待っててくださいね。

うん!待ってまーす!


俺は中央の羅線階段を登ることにした。よく見ればこの階段、透明かと思ったが見る角度によって色の変わるまさに虹色だった。


下を見るとアリア様が満面の笑みで手を振りかえす。俺はちょっと恥ずかしげに片腕を挙げるように応答した。


階段を登るごとに景色が見え始める。自然豊かな緑。久しぶりの現世の緑にちょっとウキウキした俺は目を疑った。さらに階段を登る。


ここって。


親しみがあるのも当たり前だった。風に揺られる芝生。焼けるように暑い夏の太陽。そして奥には、バスケットゴール。間違いない、俺には分かる。ここは俺がバスケをしにたまに通っていた堤防のあそこだった。


この太陽の日差しと位置。午後2時くらいか。


空の広い太陽の位置でどのくらいかの時刻か予測できるくらいに俺は堤防が好きだった。ここが居場所だったんだ。


どうして。現世と繋がってるのか?それとも、夢?


現実なのか幻想なのかよく分からない。でもここは確かにあそこだ。


あっ。あれは。


バスケットゴールの横には見慣れた自転車がある。いつも俺が止めていた自転車の場所だ。


芝生を歩く。俺は真っ直ぐを信じた。


懐かしいなぁこの自転車。よく街を回ったもんだ。カゴにはやっぱり、、、


あった。カゴの中にはいつものボール入れが膨らんでる。開けると確かに俺のだった。


ボン。   ボン。 ボン。


当然のようにドリブルがつける。まるであの頃と何ら変わらないように。体に染み付いているのを感じる。


ドッ。ドッ。ドッ。ドッ。


俺が立ち会ったのはフリースローライン。


ふふっ。やっぱり、か。


思わず笑ってしまう。当然のようにドリブルがつけることもここに立つとすごく緊張してしまい逆に入らない自信が湧くことも、そしてシュートフォームがブレてめちゃくちゃにボールが飛んでいくのもきっと。変わらない感覚に懐かしさを覚える。


ボン。  ボン。   ボン。


俺はシュートフォームに入る。フォームに関してあまり教わらなかったのでいつもの見よう見まね、自己流だ。


...。あいつら、どうしてるのかな?


膝を曲げ、ジャンプをする。ここのタイミングで、、、シュート!


みんな、元気かな?


ボールが弧を描き飛んでいく。シュートはゴールに入る直前じゃなく、打ったほんのコンマ数秒で入るかどうか全部分かる。不思議なことに一発目にしてその確信の感覚が脳によぎった。




入った...。




そう思ったその時だった。いや、後だったか前だったかよく分からない。なぜなら理解できないことが目の前で起こったから。


いーぞ!いーぞ!たーくーみ!ウォー!ウォー!ウォー!


俺は咄嗟に自陣へとディフェンス体制へ回る。


いいぞいいぞ巧ー!いいぞいいぞ巧ー!いいぞいいぞ巧ー!いいぞいいぞ巧ー!巧ー!巧ー!巧ー!巧ー!いいぞいいぞ巧ー!ナイシュッシュ!


なんで...。


打ったボール、バスケットゴール、俺の周り全ての景色が一瞬で色変わった。そう例える他なかった。


敵のゴールミスによるリバウンド対決。あいつが勝ったのを見て俺は一目散に走る。


間違いない。ここは俺の中学校の体育館。それも今のじゃない。あの頃そのもの。


数秒遅れたのち敵が追いかけてくる。この数秒間がチームの勝敗を分けることを何となく理解していたと思う。それが狙いであり速攻である俺の役目。だから走った。懸命に。これが真っ直ぐだと信じて。

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