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第三節 悪い魔族と、無知なる人類 3

おはようございます

アウラ以外の主人公です

結構フィジカルバケモンです

 相対したエトワと竜鱗族の長との対決に場面を移すため、時間は少し遡る。

「遅い…、けど硬いんだけどッ!」

 エトワが放つ全ての攻撃は通る、けれどそれは通るだけだ。

 擦り傷程度の傷しかできないのであれば、決してそれが深手になる事はない。

 だからと言ってガラスに入ったひび割れは、ガラスを砕く始まりになる、それは人類だって同じだ、一度目は大丈夫だとしても二度目は更に深くなれば?三度目はどうだろうか?例えばそれが胸であれば、幾重に貫き続ければ心臓にも届くであろう。

 魔族というのはそれ程までに人類の常識という外に居て、それは想像に難くないほどに分かりきっていた。

「さっきまでの威勢はどうした!石ころを投げられているのと変わらんぞ!」

「うっさいなぁ………」

(変な硬さをしている…、普通の筋肉がいきなり金属に変わっている…そんな感じだ)

 刃が通ることは通る、刃が通る瞬間にだけそれこそ竜の鱗かのように固くなる、彼らに竜の鱗という硬さは無いというのに、大きな矛盾がそこにあった。

(受け止めるときに腹筋を固めるノリか?ふざけているな…)

 エトワが思うツッコミ所も確かな事だが、一瞬だけでも竜の鱗の様な硬さにできるのなら確かに彼らという魔族は竜鱗族と言う名に決して恥じない存在だ。

「そちらが来なければこっちこら行くぞぉおお!」

 速度が乗っていなければ鈍い、それは間違いないだが弱点を探るという考え、エトワが抱いた疑問の解消や、そしてたった一度の許されるべき思考時間、それさえも魔族との戦いでは油断という行動になってしまったということ。

 故にだからこそ魔族との戦闘で生き残るのは、全体の3割しかいないのだろう。

「速いッ………数秒でそれか!」

 数十メートルあった筈の間合いは、そのたった数秒で詰められる、

 だが慌てることは無い、それでも間合いはまだある。回避行動を取れない程の距離ではない、だが言ってしまえば回避行動を取れない程の距離しかない事だ。

「くらえぇぇええ!地裂斬んんんんんん!」

 故にその大斧が接敵せずにこちらに攻撃する術があれば、その回避行動を取れる程度の距離に居るエトワは斬りつける事も可能だろう。

 大地がひび割れ、地面から発生した亀裂がエトワに辿り着く。

 か弱い人類を破壊するには十分過ぎるほどの斬撃だった。

「………ッフ………」

 勝利の確信か、それとも敗北の容認か、どこかの誰かが発したのだろう直撃した瞬間に。

 魔法という超常なる現象を今この瞬間に起こせなければ、エトワは負ける。

 魔法という超常なる現象を今この瞬間に起こされなければ、竜鱗族が勝つ。

 誰がそれを事細かく調べたか、この世界の人類対魔族という戦い人類側で生き残るモノは全体の3割を切るらしい、そして魔族との戦闘その勝利となると全体の1割にも満たないかもしれない。

 けれどこれだけは確かな事がる、弱い人類だからこそ、狩られる立場だったか弱き者だからこそ、知性も無い、いつもは大人しい魔物にも殺される事がある人類だからこそ知っている。

「クソみたいな驕りと油断…、それがのお前の敗因だ!」

 直撃をくらい既に体が真っ二つになっている筈のエトワが喋る。

 正面を見ればそこに居る、そこには今も竜鱗族が放った一撃をくらっているエトワが居る、けれど確かに彼の声が竜鱗族の長には届いていた。

「一つ…琴線に触れるが如く柔らかく…」

「なぁ!?」

(だが見えたのならば防げる)

 瞬間正面に現れるは人類らしき存在の影、だからこそ安堵するそれならば自らの体は防御に徹すればかの人間の一撃程度防げるはず。

 そう見えてさえいれば、どこから来るかわかってさえいれば竜鱗族であれば防げる。

「二つ…荒鷲の如く豪快に…」

(なぜ後ろから!?)

 竜鱗族には後ろから声が聞こえた、聞こえてしまったのだ、故に本能的に背後を守ってしまう、…否…守らなければ死んでしまうそういう危機感がなければ強者にはなりえない。

「『魔法・生成(マナ・ジ・エレー) (あな)(ぼこ)(つるぎ)』……三つ…白鶴(しらつる)の如き美しく……」

 その危機感で、本能で動いてしまって対処ができると思ってしまう事、それこそが人類が一番してはいけないと心に刻みこんだ行為だ。

 既に相手の許容速度など越えている、瑠璃色刀という刀は背中に突き立て貫通し、そして竜鱗族の長は再度声が聞こえた正面に意識を移さざるを得ない。

 剣というにはずさんで、包丁というには長物すぎる。名の通り欠陥があり過ぎる構造たる中身を少しでも削ろうとした努力の成果か、それとも自身の魔力量や魔力操作を恥じるべき痴態か、だがしかし誰かを斬るには十分過ぎるその剣。

 その剣は、固める事を意識できない竜鱗族の喉元を貫通させるには十分な鋭さだった。

「三大星…」

 剣を突き立て中身のない肉塊となったモノをエトワは直視し、風に乗せるかのように小声で呟く。

 三大星、前方に向って飛びかかり、再び後方から前方へ、そして再び前方から飛びかかる突き技。

 人類どころか魔族すら視認できない程の速度をエトワという青年は出していた、その力は何処から来るのか?

「頭は取った、あとはシエルがどうにかしてくれるだろ」

 多分負けない、多分相手どれる、多分大将の首を落とす、そういう信頼関係がエトワとシエルには存在する。

 シエルという存在はエトワという存在への興味からこの信頼を築きあげ。

 そしてエトワという存在は、ただあの日に見た星空を絶技に夢を想い、十数年の異常とも言える執着からの生まれた一番強い魔王を殺す為に必要な、魔法使いを信頼しているだけだった。

「擦り傷…治癒魔法じゃなくても舐めれば大丈夫か?」

 茶色の髪をあとから黒に染めたような髪を揺らし、風に靡かせエトワは無数の剣が胸から飛び出た竜鱗族の死体をまたいで歩いていた、何も考えていないただシエル元に帰るだけの為に。


ここまで読んでいただきありがとうございました

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