第七節 魔王四天王 3
おはようございます
今更ですけど、ルビがバグリ散らかしているのですね、ワードからcontrol+C&Vで写しているだけなので、もう本当にすいません
魔法都市より南東にある人類最大規模の国家エスクラベルテに視点は移る、どこか挙動不審ぎみに案内されたと思えば、青年は闘技場とも言える裁判所で国王からの判決を待っている青年がそこにはいた。
この国についたと思えばエトワは半月の間を拘留され、久しぶりに外に出たと思えば
「いつまでこうして居ればいいの?ここに知り合いが来るのを待っているんだけど…」
事の重大性に未だ気づく事は無い青年は、ただただ甘言に惑わされ連れてこられた先で未だ手錠が掛けられている事に納得がいっていない。
当たり前の事だ、誰もが彼を見たらその異常性に気づくのに、彼だけは産まれた時からその異常性は普通のモノだと教わってきた、単なる一個性だったとも言い換えられる、シエルが彼を観察していたのは、初めはそれが理由だった。
「貴様は自らが禁忌を犯した存在だと認識しているか?」
「禁忌って?」
知らぬ存ぜぬと記憶にないと言い張るのではなく、本当の意味で無知という事に会場がざわつき、改めて国王の大きな声で民衆は口を閉じる。
「静粛に!ではこれが最後になる。言い残したい言葉はあるか?無知なるモノ、否…無辜なるモノよ、貴様の命を絶つ前に最後の主張を発現する事を許可する」
極刑は決まっており、避けようがない。
それはどうしようもなく、決まった事だった。
エトワに認識が無くとも無意識下ですら、確実に禁忌に触れているという発言から、情状酌量の余地もなく存在そのものが禁忌という事も無知なる彼でも、そこまでのヒントが出されれば馬鹿でも無知でもわかる。
「なら、この国の魔族と人類を真の意味で公平にして欲しい、この半年近くで魔族も人も多くの存在を見てきた、悪い魔族も居れば善い魔族も居る。そして自己中心的な人類も居れば、他者を思いやることのできる人類も見てきた」
これは恐らくエトワが考えに考えて出したこの世界への結論だ。
無知蒙昧たる存在が導き出すには、大きすぎ背負いきれない程の責任を負うべき発言だがこの経った半年間の旅で間違いないと確信ができた。
「俺はきっと彼らの様に自分を捧げてまで種の共存を望めない、けれどでも少なくても魔族と人類が真の意味で歩みよりたいというのならば、それは叶う事だと思う」
だからこそこの国に入る前、そして入ってきてから見てきた風景はエトワのその考えを否定している、実に醜いモノだった。
「この国で共存したいという魔族は人類にあれ程まで奉公しているのに、なぜ人類はその恩に報いようとしない?魔族が怖いのか?ここまでの恩を受け取っておいて未だにこの国は魔族に主従の鎖なんて繋いで、今も彼らの首を焼いている。お前達こそ人類の恥そのものだろう?魔族が下についただけなのに上に居ると勘違いしている裸の王様、それが俺の見た、この国に居る多くの人類だ」
無論全てがそうだと言い切るつもりは無い、なぜならば魔族と心通わせるモノも存在する、それらは今のエトワの問に対し真摯に向き合っているモノ、そして今の現状が決して善いモノではないと分かっている者も居ることだって知っている。
魔族は人類の総人口を大幅に削った存在だ、故に怖さは理解できる、それを完璧に水に流せと言える程エトワはこの世界の歴史を知らない。
けれど今この国に使えている魔族は、確かに感謝されても良い程にこの国の手足となって生きていた、その光景をエトワは確かに拘留中の小さな窓、トータスと同じ勇者も魔法使いも男性の石像が中心の街並みしか見えない限られた世界からでも、はっきりとその瞳に映っていた。
「アイツを呼べ、我が国最高の騎士を」
国王にこちらの意見など聞くつもりは一切ない、だが民衆には届いているとエトワは願う。
きっと今この場で真摯にこの意見に耳を貸せる者こそが、この国を率いていく存在になり得ると、だがそれと同時これこそ今まで人類にやってきた事の報いだと叫ぶモノも居る、それも正論であろう、経緯がどうあれ魔族が人類の命を奪った事も事実だ、だがそこから被害だけを訴えて前に進まないなど、ただの思考停止に過ぎない故にエトワは語った。
だが図に乗った国王は、もう留まることを知らないのだろう。
「やはり禁忌の存在が話を聞くモノではなかった、つまらない妄言だ!貴様ら知性生命がなんたるかをまるでわかっておらん。……皆のモノ思い出せ!魔王に1000年かけて蹂躙された人類の絶望を、人類の嘆きと苦しみを!それを数十年の奉仕で同列に扱うなど言語道断!同じ年月魔族も味わうべきなのだ。そしてそれを了承したのが今の魔族たちという事を忘れてはならない!それすらも分からぬ我々とは別種の存在がなにを喚く!我々は魔族という武に屈しない!だが魔族が武を持つ以上、相応の防衛をするべきなのだ!」
1000年前の勇者が当時の魔王を倒した事による世界に存在した知性生命たちの分断、多くは人類と呼称され、そしてごく僅かが魔族と呼称された、しかし魔族を関するモノたちはとても強く、人類を疲弊に追いやることなどいとも容易く、人類は一人また一人と減っていき、数が同数になった今現在を維持している、そう教わり、エトワもそう思っていた。
だが本質は違った、人類が傲慢とも言えたのが現実だ、なぜ主義主張が分断されたかは、今は知る事など無いだろう、だがそれでも人類が魔族に停戦を申し出たのではない、魔族が人類に停戦を申しかけた、恐らくこれは本質的には人類も魔族も同種の存在であるからだ。
国王が呼んだのは彼だと言える騎士が、エトワの前に剣をかざして立ちふさがる。
変えようがない、凝り固まった頭では彼らがし続けている元の関係性に戻りたいと願い続ける無償の奉仕はいつまでも報われない、それがエトワには納得ができない。
「貴様も剣士らしいな、剣を抜け。貴様がどれ程驕っている存在か確かめてから我が武を極めた一撃で首を斬ってやる、それならば文句もなかろう」
武を極めた、その発言をできる時点で驕っているのはどちらか、それは明白であった。
そして軽々と武を極めたと発言する目の前の男がエトワの鼻に付いた。
戦闘で大事なのは油断をしない事、この時点で勝敗は決している様なモノだ。
これは慢心でも状況からの予測でもない、確定事項でありそれはエトワも知っていた。
「あぁそう、それは善かった、多分俺は今からこの国にとって一番善いことができる」
手の後ろにあった鎖を騎士の男が斬り落とし、エトワようやく自由の身になれ、そして魔法を起動する二刀の刀剣を用意する必要ない。
この程度であれば一本で十分過ぎる。
「『魔法・顕現 瑠璃色刀』さぁ斬り合おう、多分すぐに終わる」
「それが驕りと言っているのだ『魔法・緋空の斬撃』!」
魔法による属性付与、エンチャントと呼ばれる技術、火という現象を用いて剣を振るうことでまるで斬撃が飛んだ様に見える、ただの魔法だ。
もう一度言うこれは武術でもなんでもない、ただの魔法でしかなく、斬撃に見せかけただけの演出に過ぎない。
「……やっぱり…………………ない…」
魔法という事象から発せられる質量を持った目に見える攻撃、それが彼の抱く武の極致というのならそれは随分都合の良い頭を持っているモノだとエトワは嘲笑する。
目に見える攻撃であれば撃ち堕とすことなど容易だ、弓矢の一斉掃射の方がよっぽど対応に困る。
「ほぉーやるようだな、………何か言ったか?」
「別に何も?」
何も言っていないのは嘘だが、何もやっていないのは本当だ。
本当にただ目の前の彼と離れた場所で、間合いも確認せずに空に向って剣を振るっただけだ、多くのモノは何も感じないし誰の目にも映らない。
「確認…今のが攻撃って認識できた?」
「なにを…言って?」
エトワの問に武を極めし騎士の男は冷や汗を垂らす、その理由なんて本人以外わからない、だからこそ観衆は、国王は早く動いて目の前に居る異端たる存在を処理しろと口にし、怒声が沸き上がる。
人類と魔族の共存、争いを望まないモノたちが望んだこと、それは人類サイドからすれば魔族は狂暴性を訴え不可能だと宣い、魔族サイドから見れば歩みよっても図に乗る人類が多いからこそ成し遂げなかった偉業は、結局は一時とは言え一方的に加えた暴力をふるった自業自得な魔族と、くだらない自尊心を捨てられない人類両者の問題だった。
「だからそれを俺は断とうと思う、まずはこの国から…そしてこの状況を作った魔王を討って初めて成せる事だ、そしてこれはきっと善い事だから諦める理由にもならない」
今度は縦に刀剣を振るう、エトワは既にやるべきことを決めた。
もう立ち止まる時間も惜しい、故にただ目の前の存在は邪魔でしかなかった、動けば死ぬのにも関わらず、バランスを崩して無理やり動かせばいい、そうすれば勝手に崩れるというのがエトワの考えだ。
この国が腐る一番の原因たる国王に向けて刃を向けて振るう。
「貴様!私に剣を向けるなど…ぁああああああ!」
この国の主が情けない声を上げる、しょうがない体を動かせば体が裂けていくのだ、そんな現象に襲われたら、誰だってそうなる故にしょうがない。
「だから聞いたでしょ?これを攻撃と認識できた?って、あの男の斬撃を俺は斬撃と認めない、もったいぶった技名すら付けていたけど、要するにただの魔法だ。だから見せてあげるんだ本当の武とは何かと…、武を極めたとふざけた事を抜かした男と、この国から消えるべき存在のアンタに」
刃を振るった軌跡を追う事は出来る、どれだけ速くても初動の位置と終了の位置、だいだいの場合そこを直線に結んだ場所こそが刃の通る軌道だ。
自らを武極し者と驕った男は魔法によって自らの剣の軌道を飛ばす手法を使っていた、それが不可視の斬撃であるならばその言葉を少しは信じようと思ったが、そうでは無かった。
では斬撃とは何か、これはエトワ個人の持論でしかないが、その場を斬るモノかその場から斬り始めたモノを斬撃と呼ぶのだと思う。
というのが彼の持論だ。
離れていても斬ろうとすれば斬れる、剣を振るった風が相手に届くならば斬撃そのモノも届くだろう、そんな発想から生まれた現象こそがこの斬撃だった。
そして斬撃、剣が通った軌跡に色など付く筈がない、映ったとしてそれは美しい刀身の色が軌跡に沿って見えただけであり、斬撃が見えた訳ではない。
斬撃という攻撃は不可視でなくてはならない、不可視でなければそれは斬撃ではない。
故に武とは武器の軌跡を予測し、軌跡が相手の防衛手段に重ねない様に放ち続ける攻防の事をエトワは武と指すのだろう。
エトワは刀剣を納刀しようとする、眼前には四等分に崩れた騎士の死体と半分に裂けた国王だったモノ映る、会場は騒然とし魔族への優勢権が無くなり逃げようとするものもいれば、まさか国王までも一つの主張として殺すとは思っていなかったと、驚愕するものたちも居る、だがこれから先の未来を考えればこれで善かったはずなのだと、エトワは感想を持つ。
「多分これは善い事だ…これで人類と魔族の共存は……」
「進まないぞ?これは人類が始めた裏切りだからだ」
一切の気配がしなかった、けれど明確にわかることは、生まれてこの方これ以上強い存在とエトワは戦ったことが無いという事だけ、何の躊躇いもない三節棍による一撃が刀剣越しではあるモノの確実に命中した。
「…カハッ……」
勢いは止まることなく、エトワは闘技場の壁にめり込む事でようやく勢いを殺せた。
生まれて初めて味わうほどの衝撃と、そして確実に感じた死の気配、やはり一瞬でも気を抜く事は許されない、そうあったからこそ今の自分は死にかけた。
「強いな…途轍もなく、隙も無いさっきの男とは大違いだ」
「挨拶もなしで悪かったな、これも魔王直下四天王が一人、虎人族のアジルだ。魔王からの勅命だ、禁忌たるハーフ…実物を見るのは初めてだが、まぁいい…殺すか」
瞬きの瞬間を狙われた訳でもない、しかし言葉通りの意味で目のまえからアジルと名乗った豹のような魔族の姿が消えた。
目で追えない速度なんてそう出せるモノじゃない、間違いなく達人級の存在。
「流石に直線的だ!」
見えなくても音や気配は感じる、それを充てにすればその姿を追うこと自体は可能だった、しかしそれでも間違いなく、いわば感に頼らざるを得ない状況に居るエトワ側が不利な事は間違いない。
「こっちも名乗らせてもらう、俺はエトワ…俺にハーフという覚えは無いが、武の極致に辿り着く為に、お前を殺す!」
三節棍と刀剣、手数で言えば相手の方が圧倒的に有利だ、軌跡を追うのが武の勝負とエトワは思っているが、その軌跡を自分の意志で変えられる数少ない武具の一つであろう。
しなれば鞭のように、叩けば棍棒、突けば槍、掃えば薙刀、いかようにでも変化する武器と基本的に斬ると突く以外の選択肢があり得ない刀剣では相性が最悪だ。
「クソッ……」
叩かれた攻撃をいなしても、まるで蛇の如く途中で軌道を変えて普通はそこに発生しない武具の軌跡が突如として現れる。
それにこの尋常ではない速さ…速さはどうにかできるにしても、まず手数が足りない。
「オラオラ!どうした、威勢の割に防御一点張りかぁ!」
「『魔法・生成 穴凹の剣』……行くぞ…三大星」
やるならば、決着をつけるのならば相手が戦いという熱に浮かされている今、仕掛けるべきが正しいとエトワは断じ、その攻撃を開始する。
一つ目の斬撃は、琴線に触れるように優しく、そして何よりも速い突きを。
二つ目の斬撃は、荒れ狂う鷲のように大胆でありながら無駄のない一振りを。
三つ目の斬撃は、美しい白鶴が如く、瞳を奪う美しい一刀を迷いなく振るう。
三つの斬撃の連鎖発生、一つ目の斬撃が発生した時点で二つ目の斬撃は発生しており、二つの目の斬撃が発生した場合もまた然り。
故に同じ次元の速度で無ければ防御が不可能な攻撃、それこそが三大星という直線攻撃ではない厳密にいえば3角形の形で移動している攻撃、同じ場所をその発生条件で攻撃していたら放ち終わった筈の攻撃同士が弾かれる、故に少しずらすことで互いの斬撃による干渉を防いだ攻撃だった。
「魔王が直々に殺せという理由がわかった…、お前はハーフとしてではなくこの世界の存在として異常だ、ある一部分だけで魔王と匹敵しうるほどに…」
一つ目の攻撃を防ぐという発想に彼はなっていた、その時点で二撃目の斬撃が彼を襲っている筈なのにも拘らず彼はその場に立っている、それも無傷で。
「驚いた…、避けることは可能だと思っていたけど防がれるとは…」
「流石に胆が冷えたが、それでも俺の方がまだ強い、魔王が恐れたのだからもう少し骨が折れると思っていたが、案外すぐに決着がついたな」
そして受けられたという事は、そこに余分が紛れ込んでいたことにエトワは気づく、故にその時には既にもう全てが手遅れだ、三大星という技をもし自分がくらったらという想像は流石にした事が無かった。
「しちゃいけないってわかっていたけど、これは俺のクソみたいな驕りと傲慢さだな…」
内部から体そのものが弾けるような衝撃がエトワの体を襲う、三大星と匹敵する、否第三星以上の速度で放たれたアジルからのカウンター。
地面に叩きつけられたのだろう、思い切り地面を抉りながら自分は地面を飛んでいる。
まるで背中から翼が生えたと錯覚してしまう様な浮遊感を得た落下、これに似た感覚をシエルたちと別れる直前に味わった、あの時はあの途方もなく足場もない空に落下している気分だったが、今度は真逆の感覚だ、酷く気持ちが悪い。
けれどあの時と同様に気持ちが悪い程度で済んだ、その感覚であればどうであれ今自分は生きている。
「驚いた、あれだけの攻撃を受けて原型を保っている存在がいるなんて、お前が何と何のハーフなのか興味を抱いた、だがもう死に体のその体では話す事も厳しいだろう、殺してからゆっくり調べるとする」
ゆっくりとこちらに向ってくる三節棍の使い手、名前を何と言っただろうか?もう記憶の断片にすら残っていない、だがこれだけ強い存在であればようやく使える技がある。
魔物に使っても使用感は正直分からない、弱者に使ってもその前に絶命するからどういう事象が起きているのか観測できない、だから使えなかった。
正直この三節棍使いの男にもエトワは使えないと思っていたが、それはエトワ自身が嫌う驕りと慢心だったわけだ、使っても即死しないであろう存在にようやく巡り合えた。
一歩、こちらからも歩み出す。
一歩、相手もこちらに近づいて来る、下手な牽制など意味が無い逆にそのまま命を取られるのが関の山だ、だからこそ相手がこちらにトドメを刺す、その瞬間にこちらも技を使う。
「よくここまで歩けたな…だがここでお別れだ…」
振り下ろされる三節棍が当たる直前に、ようやくエトワの意識がしっかりと戻ってくる。
酷く鮮明に絶望的状況が待ち構えている現状に対して打てる手は存在しない、だからこそ普通ではないやり方でエトワはこのゼロコンマ1秒にも満たない一瞬で動かせるはずのないやり方で目のまえの敵を穿つ。
二本の刀で外から内に切り結び、逆手に持ち替え下から交差させるように斬り上げる、そしてそのまま順手に持ち替え先ほどと全く同じ軌道で振り下ろす。
ただの三連撃、達人相手に決まる訳の無い三連撃。
だがしかしそれが完全に同一の時間に斬られたという場合はどうなるだろうか?
三大星はそれをすると互いの斬撃が干渉するとして、少し軌道をずらした技だ。しかし今エトワが使った技はその干渉をぶち破る斬撃。
三度に別れて放った斬撃が一度の斬撃としてカウントされ、一度の斬撃であれば互いの斬撃に干渉する訳がない、しかしならば6方向に斬った斬撃はどこへ向かうのか?
単純な事だ、干渉しないようにしてやればいい、外から内へと斬りこまれる斬撃が同じ軌道のまま干渉せずに斬撃を残せるとすれば、それは内から外へと斬り開く斬撃だ。
「秘技・星斬灯」
0コンマ1秒未満の攻撃を防ぐ手立ては存在しない、防御したとしても外から入ってきた斬撃を内から守るという術が無い、まさに世界に矛盾を引き起こす攻撃だ。
矛盾を引き起こす故に世界はそう在るべきとして、なんとか形にして事象として成立させている、世界の理を壊す芸当、それが矛盾の境地。
「幾つの頃かは、忘れたけど…これと同じ現象を起こす爺さんに命を助けられた、その日も今日みたいに星々が輝いていて、その時に俺は自覚したんだ。《あぁ俺はこの技術を身に着ける為に生まれてきたんだ》って」
気づけば世界は夜空に見舞われて、満天の星空が広がっている。
刀剣を持つエトワはずうっと空を見上げ星々を眺めている、この星々を見れば昨日の事のように思い出せる、逃走の最中にみた刹那の一撃。
それは確かに一回の斬撃だった、けれど斬撃は7つ発生している矛盾をこの目で見た。
あの後すぐに自分を守ってくれた老人は、瑠璃色刀を握りしめ死んでいたと聞いた、だがその一瞬をエトワは忘れない。
確かにこの目で見た、世界に起こした矛盾と言う名の一撃を放った老体は存在していた。
星々を見上げる事に疲れて、空へ向け上げていた顔を正面に戻す、そこにあるのは虎人族の男性が一人佇んでいる。
胸から開胸されたかのように外へと向かう、6本の斬撃が引き起こした裂傷が痛々しく残る、窓を中心から割った時に広がるヒビの様な景色、まだ肉体を保てているのは種族としてタフさだろう、まだ息がある、しかしもう長くはない。
「最後に聞いておきたいんだ、人類こそが裏切ったってどういう意味だ?」
「ハハ…魔王が恐れる訳だ……、それが知りたきゃエルフにでも聞けよ…、…そ…んな…む………しの…こt……しt…る……は…………あい………ら……k」
体の内部に仕込まれた爆弾が破裂したような攻撃だ、守りようがない、そもそも彼がなぜまだ生きているのかすら理由は不明だ。
臓物は体外へと飛び散り、筋肉と骨は逆から裂いたように裏返しになっている。
しかしそんな事はエトワにしてみればどうでもいい事だった、強いて言うのであれば魔王相手には威力が足りない可能性を感じ始めたという事くらい。
「そうか次の目標はエルフの里か……、シエルが来るまで善いことをして待っていよう、そうすれば路銀の足しにもなるだろうし」
星々が煌めく空の下で青年は目の前の状況に一旦の区切りを付け宿屋を探しに行く、ようやく自由の身になれたのだからこの街を堪能したいと気持ちを切り替える。
禁忌たる存在が排除されるべき理由は、連続して起きたハーフの存在が起こした二つの事件を持って証明されるだろう。
運命とも言える執着するべき種を見つけたハーフは、それにその生涯を種の世話をする。
故にどの存在よりも卓越した速度で成長する、言葉そのまま意味として人生の殆どをその、執着と言う名の依存した物事に捧げているからだ。
そして知性生命は決まった要領でしか動けない、普通の知性生命だとそれを必要な物事に応じて意識的分配ができるが、ハーフの存在はそれができない。
その特性があるからこそ知性生命に馴染めるようで、どこまでも馴染めない存在である。
彼らの指針は彼らが何かから得た経験によって、生き方そして普段の行動まで全てが決められているからこそ、普通の知性生命では矯正することは叶わないのであると。
故に改めてこの世界は世界に記すべきだ、性交によって残す交配種は危険であると。
ここまで読んでいただきありがとうございました




