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第七節 魔王四天王 1

おはようございます

一応の話なんですけど、この物語は大体フランスをイメージしてます、技とかもフランス語の切り貼りをしてたりします

 入学の為に果敢にも挑んだ、無名の魔角族の少女がその学校で一番強い男子生徒に奇襲とは言え勝ちを得た。

 その事実に観客は、生徒は、魔法都市の魔法使いたちが沸き上がった。

 本来の目的とは違ったが、学園長もその輝ける原石の時期違いの入学を改めて正式に発表し、これは事が全て上手く収まった後の話だ。

「校長―いるかしら?盛り上がっている所悪いのだけれど、急用なのよねぇ、相手してくれると助かるのだけれど?」

「なにかね?君にとっても喜ばしいことではないのかね?」

「確かに嬉しいことよ、あの子が独り立ちできるとあの戦いで確信できた、子供のおもりはこれで終わりかしら?けれど私にとってこれは終わりじゃないの、あの子にしてあげられることももうなくなってきた、あとは学校に任せるわ」

 金輪際の関りが無いとは言い切れない、だがしかしシエルがアドバイスした通りではあるが少女は間違いなくこの魔法学校一の秀才相手に一本取ることかできたのだ、もう教えることが無いというのも事実、これからどう伸ばしていくかは、それこそ少女次第だ。

「それで本題はなにかね?」

「ここにあるガラクタを買い取ってもらいたいのだけど、後はこれ新しい魔法について記載した私が書いた魔導書、反射魔法よりも楽にそして身に纏う防御魔法よりも安全に防ぐ魔法を作ったつもりよ」

「実際に見せて貰ってもかまわないかな?この君がガラクタと抜かす高価な魔道具たちも金貨10枚の分にはなる、それにどれ程加算すればいいかを見極める」

 確かに実際に見て確かめる実に合理的だ。

 しかし金貨10枚分以上の路銀で買っていった代物が、金貨10枚にしかならないのだから彼女からしたらガラクタそのものでしかないのだろう。

「貫通魔法を私に撃ってもらってもいいかしら?」

「構わないが威力の調整は必要かね?」

「いらないわ、その方がわかりやすいでしょ?」

「では…」

 ノーモーション、無詠唱で恐らくこの魔法都市で最優の魔法使いが放つ貫通魔法。

 この部屋丸ごと穴を開ける事くらい容易だろう。けれどそれは叶わない、学園長が加減を加えた訳でもない、いつぞやに使った展開した魔法壁を使い全体に威力を分散する魔法。

 それが完全に学園長の貫通魔法の威力を完全に分散させる。

「名前は決めてないの、ただ身に纏う防御魔法よりも一瞬で展開させる分高燃費ではある、けれども即時性と例えば物理攻撃にも一度程度の硬さは保証する…そんな魔法よ」

「ふむ、防御魔法が使えるモノであれば基本使えるが、応用性が肝心な魔法か…よかろう。これにも金貨10枚出そう、今すぐにでも渡せるが3日後にするかの?」

「いえ今10枚頂戴。私は今日この都市を発つわ、残りの10枚はアンへのお小遣いにでもしてあげて」

 楽しみにしていたスイーツ巡りも、温泉宿での宿泊も少女を安心させる為だけについた方便だ、目的が達成された今シエルの目的はいち早くエトワと合流する事、妙な胸騒ぎもする、そしてその理由も凡そ見当が付き、そして彼女の嫌な予感は大抵当たる。

「そうか…ではこれで今生の別れじゃの、シエル君…君は気づいていないかもしれないが君が今の魔法都市を作ったんじゃ、君が自由に暴れたからこそ世界に魔法が戦争の道具だけではないという事が世界に知れ渡った、私は君に感謝している。本当にありがとう…」

「柄にもない事言わないで頂戴な、世界がどうとか正直どうでもいいのよ。それじゃ行くわね、馬車の手配をお願いできるかしら?」

「うむ…行先はエスクラベルデかの?」

「えぇ、それじゃあまたいつか、私が死んだときにでも。アナタのその燃えカスのような情熱をぶつけられるといいわね、……アナタはこの時代に産まれるには惜しい人材だったわ」

 別れの言葉を告げて、浮遊魔法でエクスラベルテを向かう為の門がある南東に辿り着くと、一人の少年が待っていたと言わんばかりに佇んでいた。

 戦闘時と違い頭蓋を被っていないが、その後ろに長い角と毛の生えた耳、そしてその見ただけでもわかる底知れなさをみれば、それがアンと戦っていた少年だ。

 それを察するのに時間を要することは無かった。

「なにかようかしら?黒山羊族(バフォメット)の少年よね?残念ながらこの馬車は貸し切りで使えないわよ?」

「僕の名前はスポジィです、一つだけ質問があってきましたよろしいでしょうか?」

「スポジィか、次に会う時に覚えているとは思わないでくれるかしら。それと手短であれば構わないわよ、馬車へ荷物も積まなくてならないから」

 彼女が持つ手荷物なんて殆どない、明らかに上限を越えて無駄によく入る歯車のついた旅行用の鞄を積んでしまえば終わる、故に彼女は手短にと制限を付けた。

「彼女には会って行かれないのですか?彼女の話しよると3日間は滞在して贅沢三昧をする予定だったと伺っていますが」

「あぁアンの事ね、だってもう私がいなくても大丈夫でしょ?魔角族という種族しか知らなかったアンが受け入れられる環境の整備、それを三日でする予定だった。…けれどあの子が頑張ったから私がそれをする必要がなくなった、それだけの事よ」

「情に深いのか、浅いのかわかりませんね」

「そうね、確かにそう、私は思いやりを持つことがあっても情なんてモノは持ち得てないんじゃないかしら」

 そこまで面倒を見るつもりならば、特段急ぐ必要もなかったではないだろうか?そう思うのが普通なのだろうが、彼女はこれこそが普通と考えてしまう、やはりどこか歯車がずれていると認識せざるを得ない、だがそれは彼女自身が一番理解している事だ。

「でも本当にあの子は頑張っていた。独り立ちをして見せるとね、そこまでの覚悟を見て久しぶりに私はこの世界に光を見た。どうしてかしらねその姿がとても美しくて、そして何故か羨ましかったのよ、だから嫉妬しない内に退散させてもらうわ」

「そう…ですか、わかりました彼女にはそう伝えておきます、では旅路にお気をつけて」

「えぇあの子をよろしくね、黒山羊族の少年さん?」

「ですからスポジィ…と、もう発たれている…。凄い人だあれだけの隙を見せているように見えて、一切の隙が無かった。それ故に彼女はあそこまで強くなる訳だ」


 馬車は駆け出し、シエルは毛布を鞄から出しそれに包まれ眠りにつく準備をする。

 約半年の時を彼女と連れ添い北方大陸を駆け抜けた、どれも霧がかかった様に思い出せない記憶の数々なのが残念で仕方が無いが、これは自分達という種がそういう仕組みである為しょうがない、ある一部を除いて彼女ら思い出すという機能が異常なまでに劣化している。

 記憶の再起ができる存在を羨ましく思うことは、割り切っている彼女であっても多々あることだ、例えば母や父の顔、声にそして匂い、普段していたはずの何気ない会話を今の彼女ではもう思い出す事ができない、人道性の欠如、知性生命としての欠陥そう思われても仕方の無い事だった。

 だけれど今日あの時日陰で見た、少女の全てに納得した笑みを彼女は生涯忘れることは無いだろう、魔法の極致へ必要な記憶ではない、だけれど一生忘れないと断言できる。

 母を殺した時の感情によく似ていた、知性生命という存在は自分達という存在と比べて斯様に美しく、そしてどこまでもそれこそ太陽よりも眩しく歪曲した視界でなければ直視できない程に輝かしい存在だったのだ。

 それをシエルは一生忘れない、これから先何度も夢に見るだろう、エスクラベルテにつくまでの1週間程度を出来れば眠り、そして再び彼女の眩しさを感じたい。

「あぁこれが別れの辛さかしら…、久方ぶりに人らしい感情が私に……」

 どうしてか溢れる涙を流しながら、今一度寝心地の悪い場所の揺れに慣れながら眠りにつくのだった。


 早朝、シエルは起きる。

 朝起きることは当たり前だ、けれどその起きた理由が当たり前ではない理由だからこそ、嫌な気分で起こされる。

 できることならばもっと眠っておきたかったと思うし、そもそも今から起こることを考えるだけで嫌になる。

御者(ぎょしゃ)さん?少しいいかしら、確認を取っておきたいのだけれど」

「はいなんでしょう?」

「…………ごめんなさい、言いたい事がまとまらなくなってしまったわ」

「は、はぁそうですか」

 馬を引き改めて馬車は出発する、シエルの数秒の沈黙で考えたことは今までの彼女であれば考えるだけの事だった、彼女は見返りが無ければ動かないし、そもそもシエルは争いを肯定してしまう存在だ、魔法が進歩するのならそこに含まれる犠牲は別に考える必要はないと割り切れてしまう存在であった。

 それが例え昨日まで世話をしていたアンに向かう危機であれ、彼女は魔法都市襲撃という事件を今察知したとしても、彼女の指針で行動を計るのであれば魔法都市を壊滅させ、魔族への恨み憎しみで魔法を進歩させるならば、それはそれでいいのだ。

 多くが死ぬ事は悪い事だ、罪もなければ尚更。

 その蛮行を止めることは善い事だ、悪意を持った相手から守るのであれば尚更。

 シエルにとって善し悪しはどうでもいい、私が見逃したことで死ぬ人が出るのは可哀そうな事だ、だが可哀そうなだけなのである。

 彼女に可哀そうだから助けるなんて思考は存在しない、可哀そうだと思う事はある、だが可哀そうだとしか思えない、そこに明確な利点が存在しなければ片方に汲みすると言う事ができない、なぜならばどちらをとっても利点は存在するからだ。

 けれどそんな彼女が、何故かつい先ほどまで無意識下でアン達を救うという考えのみで行動していた。

 だからこそ数秒の沈黙が生まれた、脳が起こしたバグなのか、それとも彼女自身が何か変わったのか、結局の所なぜそうしたいのか理由は分からない。

 だが何故か心の奥底で何かを吐き出したくなり、呼吸が荒くなる、したくもない想像で目のまえの世界が塗りつぶされる、そこにあるのはある少女の亡骸だ。

「………ごめんなさい、エトワ。少しそちらに行くのは遅れるわ…、御者さん?荷物エスクラベルテで預かっていてくれる?駄賃としてこの金貨もあげるわ」

「え、ちょ、お客さん?」

 荒く三枚程の金貨を馬車の荷台に投げ捨て、魔法を起動する。

 自分が最後に言った街に戻る魔法、故に7時間ほど無駄にするし、もう一度馬車も拾わなければならない、無駄な路銀がかさむ、けれどこの胸を沈めるにはそうするしかなかったのだ。

かなかったのだ。




 魔法都市ジマラ・グレーヌの早朝、きっとこの日がこの都市にとって史上最悪の厄日である事に変わりはないのだろう、魔王直下四天王と呼ばれるこの世界における魔族側の最高戦力がやってきた、全ての魔法使いが魔法都市を守る為に動員され、皆散り散りになっていく。

「人類最高の魔法都市、そう聞いて期待していたんだけれどね…思ったより大したことは無いみたいだ、まぁ魔王直下四天王が一柱であるエルフに勝てる人類が居ることの方が珍しい」

 緑髪のエルフが呟く、純粋なエルフというのはやはり第二次成長が上手く行っていないのか身長は小さく、この少女の見た目の様な存在が最強種というのは本当か疑いたくなる。

「随分な言いようだな、僕らにもまだ奥の手が存在する、単身で乗り込んできたことを後悔させてみせよう。アン君…君と私合わせて5方向からの魔法を放つ反射は任せたまえ」

「わかった……パパ!ママ!」

 アンと黒山羊族のスポジィが連携を取って、攻撃を仕掛けるアドリブにしては上手くそれぞれ死角を突いた攻撃だと分かる、だがエルフの彼女が言った言葉はしかしそういう問題ではない。

「そうだね、君達は有望そうだ烏合共とは違うらしい、少し勉強の時間にしようか」

 そう言うと同時に黒山羊族の少年が放った黒魔法も魔法による黒炎と氷の大剣その全てが分解されたようにはじけ飛ぶ、それは完全に同じ魔法、同じ技量で相殺された事を意味する、完全に技量が同じ、故の偶然であったのであればよかったが、実際の所はそうではない、少年と少女だけでも大きく技量が離れている、なのに相殺されたという事はこちらに合わせる余裕があるという事だった。

「なぜ私たちが最強種と呼ばれるのか?」

 少女のような見た目の最強種という悪魔が一つの疑問を投げかける。

「それは間違いなく寿命の長さだよ、魔力の総量は寿命がモノを言うからね、だがだからと言って長生きすれば絶対に勝てる訳ではない」

 細い槍の様なモノが雨の様に降り注ぎ二人の動きを封じ、それを助けようとしにはせ参じた魔法使いが同じく細い槍が胴体に刺さり体の内側から無限の針が突如として人を貫く。

「これは相手の動きによって動く物質を槍状にした魔法、下手に動けば腕が飛ぶよ。………話の途中だったね、なぜしかし長命種を打ち破る方法それはなにか?簡単だより強力で高密度の魔法をぶつければ良い」

 氷の細剣が少女右腕に降りかかり、そして貫きその血しぶきに反応した槍は細剣を粉々に砕いてみせた。

「クッ…………イッ………」

 激しい激痛がアンの右手に染みわたる、手を貫かれる経験など初めて味わうのだから当然だ、なんの為にこれを見せたのかは分からない、だがこれでおちおち意識を落とすことも危険という事がわかった、今は槍が剣に反応したが次は少女の腕を貫くかもしれない。

「ではもう一度試してみよう」

 氷の細剣が再び、アンの貫通した右手に全く同じ軌道で入ってくる、貫通した筋肉に冷気が触れるという絶妙な痛みはあるモノの貫通した瞬間よりは耐えられる。

 そして槍にも変化が起きていた。

「槍の方が砕けている」

「よく見ているね、その通り君達の魔法でも魔法の最適化が果たされれば魔法は簡単にその強さを引き上げる、これは別に魔力を多く吹き込んだ訳でも無いし、全く同じ魔力でより最適化したもの、当たる瞬間に発した魔力の出力を集中させたもの」

 こちらの動きを封じる為に地面に刺さっていた槍は、エルフの女性の元へと戻っていき、教鞭をとる教師の様に杖を持ちながらこちらに視線を送る、まるでやってみろと言わんばかりにだ。

 逆らえる訳がない、二人は確実に敗北する、恐らく学園長が出てきてもこの状況が好転することはないだろう、だがたった一つの望みを語ることを許されるのならアンは呟く。

「助けて…シエル…」

「命乞い?いや助けを求めたのか、そうか君はその程度の存在か…じゃあもう用はないかな…、どうあれ状況の打破を他人に任せるようじゃ…。はぁ魔法使いの質の低下って奴かな?最近のこれは」

 あの細い槍が飛んでくる、避けられるなんて甘い考えはない。受け入れるしてかない、ここで命尽きることが天命だったのだと諦めることしか今は出来ない、悔しい。

 怖さよりも悔しさが勝つ、結局少女は頼もしい存在に助けを求めた、独り立ちすると心に誓ったにもかかわらずだ。

 エルフが襲来した時にも聞こえた大きなモノが飛来するような音が聞こえる、新たなエルフの増援だろうか?



ここまで読んでいただきありがとうございました

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