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第六節 魔法都市から考える“種族”とは 2

おはようございます

ここからが回想です、

そして悪評、批評くださったら泣いて喜びます

 数百年は昔、少なくてもここ最近の景色ではない。

 今この瞬間にこの村が残っているとすれば、歴史的価値があると見積もってもいい。

 そこは数えればきっと数百年はくだらない程、昔の景色であった。

 数百年前、それは丁度世界が魔王に支配されたのが、いまだ最近と話されていた時代の頃だ、人類は魔族に追いやられ成すすべなく領土を奪い尽くされていた時代である。

 だが領土を奪われ続ける人類にとっても然程、悪い歴史でも無かったのは事実だろう、でなければこの光景はあり得ない、魔族が人類に共存を持ちかけたのなんて大きく見積もっても50年かそこらであるのに、数百年前には既に魔族と人類の共存は達成できていた。

 というよりは魔族側が人類の傍に歩みを置いていたという方が正しいのかもしれない。

「ママー!」

 勢いよくラベンダーの様に美しい紫色の髪を揺らす女性の前に薄ピンクと紫色のメッシュが入った少女が抱き着いた。

「もー、また何か発見したの?」

 どこか見覚えのある少女と相対するは、何処にも見覚えのない女性だが会話から察するに少女の母親が彼女なのであろう。

 パッと見で抱く印象は、人族にしてはかなり長い耳を持ち、少女よりは少し上の子供と言っても通じるような幼げな顔と身長を持っている、だが血気盛んな少女と比べれば立ち振る舞いも声に籠る慈愛のような優しさも、見れば彼女が大人である事はすぐにわかることで、言葉通りに彼女はこの少女の母なのだろう。

 簡単に紡いで見せたその特徴は魔族であるエルフそのものだ、成長しきらない体に幼子にも見間違うほどの童顔そして長い耳。

 そして異常なまでの寿命を持ち合わせている種族だった。

「私ね魔法感性させたんだよ!浮遊魔法!」

「えぇー?本当にぃ?そうしたらシエルは魔法史以来最高の天才よ?」

「ウソじゃないよ、パパにも飛んでもらったもん!ただ…パパの具合が悪くなっちゃった」

「あらら…それじゃあ一般的な魔法になるのは難しいかもしれないわね、それじゃパパの看病をしに行きましょうか?」

「うん!」

 立てばシエルと呼ばれる少女と、ママと呼ばれる彼女の身長差が改めてわかる、一般的な少女といえるシエルに対して、母親の方は第二次成長に身長が含まれなかったような成長をして、故に体つきは確かに大人の女性そのものだった。

 しかしそれでも幼少期の子供に見劣りしない程度の伸長しか無いためか、自分の腰ほどに手を伸ばして少女も自らの手を伸ばし掴むことで隣を仲良く歩く姿はとても微笑ましいモノだった。

「アナター?シエルが浮遊魔法の実験台になったっ……て~、大変な目にあったみたいね……あらあら本当に部屋がぐちゃぐちゃ…」

 その部屋は見事に荒れに荒れている、見方を変えればそれは空き巣に荒らされた後にも見える、ただ一言で表すのならばそれは本当に酷い有様だということだ。

「ロプレサンター、大丈夫?」

「ちゃんとお父さんと呼びなさい!」

「アテ、だってお父さんの名前面白いんだもん、お母さんだってプレーって言ってるじゃん」

「私はいいのよ、私は。お嫁さんだもの?ねぇプレー?」

 ロプレサンタ、お父さん、プレーと呼ばれた男性がこの世の全てが終わっているかのような表情をしている、普通の男性だ特段珍しい所もない至って普通の男性だった。

 あるとするならばその頭に生えた角だろうか?これは魔角族、皆がよく知っている魔族に材料にされがちな魔角族だ。

 だが卓越した独自の魔法用いる男性ですら、木々を繰り抜かれ作られた大量に入っていたであろう本棚の真上で、不安定な態勢で心ここにあらずという形で伸びている。

「サンタ大丈夫?怪我してない?」

「お父さんと呼んでおくれ、シエルよ…お父さんなんか臓物から何からひっくり返ってもうダメそう…娘よ最後に一言……あ…」

「はいはーい、片付けるわよー、ほらーシエルも手伝ってー」

「はーい!ママー」

 なんてことは無い親子の日常だった、そしてここは恐らく魔角族の村なのだろう。

 隠ぺいが完璧だ、直接足を踏み入れたという存在すらここの隠ぺい魔法の前では、代わり映えのしない、強いて一点気になることがあるとすれば森の中にしては平坦だ、そのような感想しか出てこない程の完全なる隠ぺい。

 魔角族の村に基本的に魔法を極める方向に存在することの多いエルフが居ては、貪り食われるのではないだろうか?とも心配したくなるがなんとも平和で、そして代わり映えのしない穏やかなる家族の光景が一年、二年、三年と続いていき、少女がエルフの母親とは違い成熟した女性になるにはそう時間はかからなかった。

 だがしかしてそう時間がかからなかったのが問題だったのである、魔族と人類の共存など上手く行かないと、仲違いしてどちらかがシエルを連れて村の外に出ればよかった。

 そうでなくてもシエルを村の外にさえ出していればこれは、起こらなかった事件だ。


 これはある少女にとっての始まりの日だ。

 そう全て私は覚えている、私が歩んできた人生なのだから、私が覚えていて当然だ。

 ほんの些細な出来事だった、決して来るなと言われていた父と母の魔法の鍛錬を夕ご飯の支度が済んだと伝えるともに、出来心で隠れ忍び見に行っただけ、興味本位に一度くらいは凄い魔法使いから見て学ぶことも許されるだろうなんて。

「魔法って……これほどまでに……」

 私が見たモノは全てを凌駕し、そしてどこまでも美しい魔法そのものだった。


 覗いてみた魔法で生まれた物体や性質、単純な魔力の操作全てが自分の知っている魔法の想像を超えていく景色のみが広がっている、自分が魔法として語っていたものなどは、魔法ですらない出来損ないだった。

(なぜ…どうして?…私にはあんなゴミしか生み出せないから?)

 彼女が20年弱を費やして実用化に成功したと言える魔法は、父親で実験しそれから母親と基礎から見直し作り上げた浮遊魔法のみ。

(それだってただ空に落ちながらも、地面に立っているという状況を無理やり作り出しただけの魔法だ)

 両親がいま鍛錬している魔法と比べたら、おままごとに過ぎないと彼女は悟った。

「私も努力すれば、いつかあそこまでの高みへ………」

 その瞳は狂気に取りつかれているように、彼女の視界はどんどん歪んでいく、まるで終わりのない螺旋を描くように、どこまでも有限の筈の時間を悠久の時とも感じられる程に、時間という概念は弾け飛び彼女の脳内は魔法という一つに染まった。

 これこそが彼女が夕焼け空の下で見た、彼女の運命とも言えるべき出会いだった。

「私はきっとこれを極める為に…」

 彼女自身が歪む、彼女を取り巻く環境が歪んでいく、あるいは誰かの手で彼女を歪ませる、どの工程をとっても、彼女が魔法に取りつかれる事は確定していたのだろう。

 確定していたからこそ、両親は魔法というモノから無理に離さなかった、無理に離せば確実に魔法への興味が湧きあがる、故に魔法の基礎を教えず感覚的に魔法を扱えるようにして、彼女は自らの魔法を独自の理論と解釈で作り出すことで、彼女が持ちえた魔法への依存を取り払おうとしていたのだろう。

 肝心の彼女はたった一つの願いも知らずに、そして両親にも気取られず彼女は進めた。あの夕焼けに見た魔法の再現とそして超越を目指し、彼女にとってはたった五年の歳月をかけて魔法への理解、そして魔法という現象をひと手間で現実に映し出すという性質、それらをあの日見た両親の魔法と遜色のないモノにする、それが彼女にとっての日常となる。

「髪…伸びてる。でも纏めるのも後ろだけでいいや」

 魔法というモノに全ての時間を割き始めてから、彼女の生活は一片した短くしていた髪は伸ばすだけ伸ばし髪が横にも縦にも全体的にボリュームが増えている。

「私の髪色…こんな紫色入っていたっけ?…まぁどうでもいいか」

 全ての髪がばらつくのは面倒だと思うからこそ、後ろ髪だけは纏める彼女自身にとってやるべき事はそれだけで、それ以外の事に彼女は何も重要性を見いだせないでいた。

 誰かに何かを言われる前の早朝に家を出て、村の外に籠りひたすらに魔法への鍛錬をする、ごく稀に魔物と呼ばれる存在に出会う事があっても魔物という存在は彼女の脅威になり得はしない。

 というよりもこの世界の住人にとって魔物なんてモノは大した問題では無かったのだろう、故に何かと理由さえつければ両親も村の存在も村の外に出ることを許してくれた。

 うっかり寄ってきた魔物には、彼女がどれ程あの日に近づいているかの確認の為の実験台なってもらう、そんな日常を有限なる時間を無限にも感じる不思議な感覚を持ちながら彼女はもう5年もやっていた。

 5年経ったというのに肉体的変化が乏しい、母とは違い第二次成長は迎えたモノの第二次成長以降時間が止まってしまったという感覚に陥る程、彼女自身も自分の髪以外にあまり変化が無い事を一度は不思議に思い、そしていつものようにどうでもいいと捨て置いた。


 その日もいつも通りの鍛錬が終わり、帰る時間になり村へ戻る村というよりも自宅に帰るという認識の方が強いかもしれない、自宅に敵などいればすぐにでもわかる、というよりも村が対処する。

 魔角族とエルフというのは魔法に優れた種族だからこそ、自身の領域から弾きだすなど簡単で、そしてその自身の領域内で誰かを殺し神隠しに見せることもできる。

 だからこそ魔角族の村は平和である事が多い、エルフという異端が存在しはするものの、そのエルフ自体は魔角族のルールで動いていくれており、外に出づらい魔角族の代わりに遠征などもしてくれる存在だった、故にこの村には外敵が存在せず平和な村だと、彼女は知っていた。

 万が一だ、万が一、村に外敵が侵入した場合どうなるのか、知識としては知っている。

 隠密からの個々が持てる魔法の一斉掃射を外敵に浴びせること、それが一番手っ取り早く手数も多く、そして相手に防御させる隙を与えさせない最強の戦法だった。

 防ぎきれるとすれば、それは武を極めし誰かか、それか恐らくエルフの様な時間間隔で過ごしながら魔法を飽きず研鑽し、魔角を含めありとあらゆる魔法の技術を貪欲に吸収し続けた魔法使いとして成熟し、最高峰に手を掛けた存在のみがこれを防ぐことができる。

 それだけの攻撃を彼女は一点に浴びた、理由を問う時間すら与えられずに、ただ「これが答えだ、受け入れろ」と魔角族の村長の声が何処か耳の奥で響くような感覚に包まれながら。


 全ての魔法が彼女へと向かってくる、直線的、あるいは曲線的、そして不可視の魔法をあるだろう、だからこそこれに対応するのは不可能なのだ、どれかを防げばどれかに当たる。

 100個の魔法があり、99個の魔法を防げる魔法があるとしよう。残りの1個だけは自らの持つ魔法と相殺する。

 これは極論だ、もし仮に99個あるいは全ての魔法を防ぎうる魔法があるとすれば、彼女はここから生き延びられる、故に彼女は一つの魔法を使う。


「『魔法・鏡の中のアナタに(ミロワール・ヴ・ダン)』


 生き延びる選択肢などではなく、反撃としての魔法を選択する。

 これほどまでに熟練された魔法使い相手にたかだか5年で築きあげた魔法が通じるのかどうか、それを知れるのならば彼女はここで死んでもいいそう思っていた。

 まさに依存であり歪な形の魅了だ、魔法に執着し魔法の為ならば他の全てを捨て去ることを厭わない、それが今の魔法というモノを極めることを人生というプログラムに本能として組み込まれた彼女だった。

 そして彼女が魔法を発動した時点で、どうあがいても放った魔法はその撃った本人に戻っていく、彼女を殺す為に放った魔法は、既に彼女の魔法によってその狙った相手を変更している。

 まるで鏡に魔法を撃ち込んだ様に。


 鏡を見た時、我々はどう思うだろうか?鏡に映る自分を見てどう思うだろうか?鏡を覗き込んでいる自分を見て決して何も思わないだろう。

 鏡に自分が映ろうとして映った、映っている事知ったから鏡に目を向けた、どちらであれ本人が鏡を結果的に見て鏡の中に映る自分を確認したことはどうあがいても変わりようのない事実だ、自ら鏡に映ったと認識したのに、自分は鏡に映ってないと思い込める馬鹿もそうは居ないだろう。

 それがこの魔法だ『魔法・鏡の中のアナタに(ミロワール・ヴ・ダン)』鏡に魔法を撃ってきた相手に反射させる魔法、彼女からは見えていなくても魔法を放った側には彼女は見えている、だからこそこの魔法は成立する。

 彼女が認識した魔法…のべ74つ、その全てを展開した鏡に映る相手にそのまま反射させる魔法である。

 これの相殺方法は至極簡単だ、もう一度放つかそれともこちらと同じ様に反射させればいい、だが74つの魔法を同時に使った事により、それを困難にする。

 原因は視界不良と、相手が考えるきっと自分の魔法が外れても誰かの魔法が彼女を殺すという誤った認識、これだけの火力ならば絶対大丈夫という傲慢さと、もしかしたらを考えない怠惰が生んだ然るべき結末だ。

「狙われたら狙い返す、死んでいても文句言わないで、最初にやってきたのはそっちなんだから」

 死人に口なし、返答はない。

 彼女はたった数秒で魔角族という魔法に秀でた村を壊滅状態にした。

「やっぱりこうなる運命だったのね…」

 見覚えのある美しい紫色の髪をしたエルフの女性、その彼女が前に立ちはだかる。

 魔法に魅了されたモノよりも背も小さい筈なのに、それでも強大な存在に見えてしまう程の圧を放つ女性が目の前に立っている。

「ママ…、村の皆はなんで私を殺そうとしたの?」

「アナタがパパとママの子だからよ」

「それの何がいけないの?混血での赤子なんて今時珍しいモノでもないってママは話していなかった?」

 混血、魔法によって遺伝子を相手に組み込むことで生まれる片方ずつの遺伝子情報をある程度有している、その混ぜたどちらかよりの種族、だがこれは普通の存在だ。

 命を狙われる様な存在ではない、なぜならばどちらの何かを有している変わりにどちらにも存在する欠点もまた有してしまう、過去の存在は優秀な種を魔法により遺伝子情報を混ぜ合わせたら、より優秀なモノが出来上がると思っていたらしい。

 結果的に産まれたのは、全ての特性を少し持ち、全ての欠点を少し持った何とも言えない存在だった。

 血を混ぜて産まれるのは、言ってしまえば器用貧乏なのだ。

「ねぇママ…私は何なの?」

 彼女はそう言いながら、自らの周りに何十本もの大剣を浮遊させる、見た事も無い聞いた事も無い、きっとどこかの戦場に残されていた、それはもう持ちてのいなくなった大剣だ。

「アナタは私と…ロプレザンタ、パパの子よ。…それに嘘偽りは無い」

「そうなんだ、でもママも私を殺すの?………あの中にパパも居た?」

「えぇ居たわ…、あの人はこうなることを予見してそれでも貴方に魔法を放った、確証があったのよ、私と自分の娘ならこれで死ぬ事はないってね」

 父を殺した、大好きだったはずの父を殺した、それなのに彼女のピクリとも心は動こうとすらしない、今はあれ程までの魔法極致とも言える芸当を見せた74人に感謝すらしたい、そういう気分だった。

「エルフの村に行きなさい、そこに行けばアナタはどういう存在なのかを教えてくれるおばあちゃんがいるわ」

 まるで一緒に行くことは無いと言っている様なモノだ、母親の後ろにあるのは固形物ですらない自然の現象そのもの。

 風に熱、土に光、火と水、魔法に魅了された彼女の口角が1度上がる、わかるようでわからない表情だ、自然という現象へのイメージは出来ても、彼女には自然例えば火山の爆炎をこのまま静止させ狙うなんてイメージは出来ない。

 正面から戦っても勝てない、そもそもエルフという長命種にはどうあがいても魔力量で勝てる筈がない。

 魔力量とは魔法にかけた鍛錬の日々をそのまま表している、故に生きて鍛錬した分だけ魔力量というのは差が出てくる、圧倒的魔力量での魔法の乱射や魔法の押しつぶしそれがエルフの魔法使いが強いと言われる点だ。

「凄いねママ、私は魔力量では絶対に勝てないよ」

「魔力量以外でアナタなら勝てるのでしょう?私はプレーの仇を討つためにここに居る、娘だろうと一切の手加減はしない。シエル…そのまま動かなければ楽に殺してあげる」

 シエルの母親、アムルーズの魔法は既に臨戦態勢に入っている、ここからは逃げる事も出来ないだろう、それでは死んでしまう。

 故にできることはただ一つ。

「そうだね、そう来なくっちゃ…私もそれじゃあ超えるべき壁としてアナタを殺してみせる。……私は更に魔法の極致へと……、その為にママ…アムルーズ…アナタという私の憧れを今この手で」

 彼女も杖を構える、魔力量では勝てなくても継戦を考えずに出力で上回ることさえできれば、ジャイアントキリングもできなくはない。

 いや多分この勝負は最初から決着していた、いわば価値のない戦いだろう。



 互いの魔法の応酬、村一つ、森一つが焦土と化す中で最後まで立っていたのは、自らの身長よりも小さい母に頭を撫でられ抱かれていた彼女だ。

「どう…して?」

 全方向からの大剣の串刺し攻撃、全てを弾かれ彼女に隙ができた。

 それを逃すアムルーズではない、だがしかし最後の一撃は彼女からは放たれない、放たれないからこそ自衛として彼女は残る魔力を振り絞り使う。

 ただ愚直に何の躊躇いもせず、そしてなんの策も練らず、もう既に大剣とは言えないボロボロの何かとしか言えない、ただの鈍がアムルーズを貫いた。

 反撃だってできたはずだ、反撃とまではいかなくとも捌くことなんて容易だった筈なのだ、なのに彼女の母はそれをせずにその刃で胸を貫かれる事を選んだ。

「可愛い……娘…を殺せる…母…が……どこに……いましょ……う、経っ…た……5年…でよく………がんばり…ました…ね?」

 鼓動が消える、溢れ出る血は止めることは出来ず、治癒魔法で言える様な傷ではないというのはわかっているのに、自分の魔力の限界を越えて治癒魔法を母にかける。

「どうして…、どうして…、どうして私は……私は…あぁあああああああアアアアアア」

 母が抱いた父親殺しの仇は嘘ではない、殺す気があったのも本当だろう。

 ただそれでも母として娘の夢を応援したい、それが唯一の葛藤であり最後に彼女が見たボロボロになっても魔法を極める為にならば、どれ程泥臭くなったってその夢に邁進し続ける娘を見て、優しい彼女の父と同じように、母も最後には受け入れてしまったのだ。

 あぁそれならば、母としてやれることはこれにて終いであると、自らが見せることのできる魔法の最奥は全て彼女の記憶に定着した、これは関係が母と娘だからこそできた最後の確信だった、そして全てを見せたのであればもう母親としての役割は終わり。

「ママ…ママー!ママぁぁああああああああああ」

 大きく泣き崩れる娘を見て母は最期に思う、なんとかもう動かない神経に無理やり魔力を通し形だけでもいい、最後に伝えるべきことがあった、母として伝えるべきことが。

「私……たちは……いつま…でも…アナタ…の…味方…です…から………ね?」

 胸を上で泣きじゃくるまるで赤子の頃を思い出す、娘の頭を撫でながら。

 とても強く、とても家族思いで、とても長生きのした、少女のような見た目をした母は、そう言い残し笑ってこの世を去った。



ここまで読んでいただきありがとうございました

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