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第六節 魔法都市から考える“種族”とは 1

おはようございます

海上戦終わりました

過去回想入ります

 クラーケンをエトワが討伐し終え、船は予定通りの分岐点で徐々に離れ始め改めてシエルは船に降り立つ。

「魔角族だからと言って魔力制御が器用になる訳でもないのに、あそこまで長距離狙撃ができるのは器用よね」

「ずっと言われていた通りに足を追っていただけ、別に私が凄いわけじゃない」

 もうすっかりとどこに居ても見つけやすい青白い髪色になった少女、その頭を撫でながらふと船のマストを眺めてみる。

「見間違いじゃないわよね、やっぱり」

 マストの最先端が何かに斬られたように折れ、その木片が帆に引っかかっている。シエルが出した持ちてのいない騎士の(ネームレス)の発射時に掠ったかとも思ったが、敵がエトワに斬り刻まれている間に五本目を斬った際にふと風を感じて、シエルはその事実に気が付いた。

「……?…シエル何か言った?」

「いいや?何も言ってないわよ?それよりこの髪色自分で戻せそうなのかしら?治せないっていうなら私が治すけれど…」

「いやいい、しばらくはこの髪色で居ようかなって青白い髪なんて新鮮?」

 髪というのは大抵が遺伝的に決まる、自ら脱色し染める方法もある事にはあるが、大抵はコスパの良い魔法で髪色を変える、ただアンの場合はその片手間で使う程度の魔法に魔角族の持てる魔力を最大限流し込んだ。

 魔力は数日もすれば魔角に溜まる分まで簡単に回復するだろうが、この魔法ばかりは解除するにはその魔力を一から解除していくという途方もない作業を強いられることとなる。

「気に入っているのならいいわ。アンの顔ならその髪色も確かに綺麗じゃない?」

「でしょ?だからいいの、それにこの髪色ならしばらくは、パパとママ達と向き合う時間が少なくなる、いつまでもウジウジしている所をパパとママに見せられないもんね」

 歪な笑顔で少女は笑う、どう考えても見栄を張っている。

 本当は思い出すのも苦しいが、毎日でも思い出していたい家族の日々があるのだろう、けれどそれは前進している事にはならない、少女は少女なりにシエルらに付いて行くと決めた以上は未来へと前進し続けることを考えているのだろう。

「きっと大丈夫よ、ウジウジしていても。しばらくすれば…顔も声も………なんでもないわ忘れて頂戴。それよりも今は休みなさい、ほら魔力切れも起こしている、子供は休むべき時間じゃない?」

 気づけば陽が暮れている、クラーケン討伐というアクシデントがあったというのもあるだろうが、そもそもの出航が遅かったというのもある。

 きっと南方大陸に到着するのは早くても夜明け前か、あるいは明朝だろう。

「流石にそこまで子供じゃない、起きてられる」

「港街までは少し遠いのよ、歩いていくのだから休んでなさい」

「でもー」

「でもじゃないのよ、それにちゃんと寝るべき時間に寝ないと私みたいに成長できないわよ?」

 女性としてはそこまでの伸長があるわけではないが、芳醇に実った二つの果実に関しては間違いなく、アンという少女より大人である分シエルは女性の体つきをしている。

「……じゃあ寝てくる…」

「偉い偉いじゃない」

 シエルがアンの頭を撫で続けると髪がぐしゃぐしゃにされると悟ったのか、シエルの手を少女は振り払い船内に踵を返し、逃げるように足早に歩いていく。

 嫌われている訳では無いのだと思う、ただセットした髪が乱れるのが嫌だったのだろう、だがシエルにとってはかなりの癒しの時間が奪われたというのにも等しく、少し残念でしかたなかった。

「やっぱり子供の内は親以外に撫でられるのは、あまり好きじゃないのかしら?思えば私も…、いやどうだったかしら?」

 子供の頃の自分というのは、自らの都合よい記憶に改変している事が多いのだろう、例えばあるガキ大将に喧嘩で負けたという記憶を相討ちだったという記憶に改変し、それこそ今はもうこの世に存在しない母と父の姿を必要以上に美化してしまうなど、どれもまぁない話ではないのだろう。

「なんて一人で芸をしているみたいでいやね、何もかも覚えているのに忘れていたいという自分も居る、忘れた方が幸せだからかしら?……ダメね余計な事に頭が回る、私も少し仮眠を取りましょう」

 シエルは杖を出し、空へと浮遊する魔法を使用する。クラーケン戦でも使っていた魔法だ。

 なぜだかこの斬られたマストがどうしても気になり、それを考えながらならば退屈凌ぎになりながら眠れると考えた訳だろう。

「老朽にしては切れ口が綺麗過ぎる、かといって私の生成したネームレスだとこんな切り口にはどう考えてもならない」

 シエルの生成したあの時の大剣がこの芸当しようとすれば、好くて帆を丸ごと切断か、最悪デッキを真っ二つが関の山だろう、ここまで局所的な場所だけ斬り落とすなんて言うのはエトワの領分だろう。

「まぁありえない話ではないか…、それにしてもこの魔法やっぱり気分は良くないわね、もう寝ちゃいましょ…」

 浮遊という特性は鳥系の種族か魔物の独壇場だ、その差を埋める為にある人が二日ほど考えていきついた結論をシエルはそのまま使っているのだが、移動、跳躍系の魔法ではあるモノのその中でも、最悪な使い心地なのがこの浮遊魔法なのだろう。

「改善はしようとも考えたけれど、まぁそれをするのはナシよね、この不快感も背負うべきものだわ…きっと」

 そうしてシエルは瞼を閉じる、臓物がひっくり返るような不快感と今いる自分がどの向きを向いているかさえ感覚的には理解できない、その感覚を補う為に視界が用意されているのにもかかわらず、自ら閉ざしているのだから全てが無駄だった。


 不快この上ない感覚であり、できることならば感じていたくはない、けれどどういう訳かシエルはこの不快感極り無い感覚に包まれているこの時間を一番愛おしく思う。

 まるで羊水に満たされた妊婦のお腹の中に居る赤子の様で、どうしてか愛おしく心地よい、いつまでもそこで浸かっていたい、だからこそ強烈な眠気がやってくる、眠っていられる間だけはきっと赤子に戻れる、この魔法で浮かんでいるこの間だけはそれを世界が許してくれるだろう。


ここまで読んでいただきありがとうございました

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