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第四節 どっちの船がお好みで?(上) 3

おはようございます

Pt分断します

 未だに口論を留まることのないエトワとシエル、いつまでも責任の押し付け合う人類の悪いところを煮詰めたような醜い争いは続いている。

 普段のシエルであれば周辺に魔物が近づけば寝ていても気づいているであろう距離でさえ、エトワとの取っ組み合いに集中し過ぎて居る所為もあってか、未だに気づく様子はない。

 悪く言えば慢心、そして傲慢だ、シエルはアンであれば大抵の魔物を捌ける、それだけのポテンシャルを持っているとこの5か月弱で確信していた。

 良く言うのであれば信頼があり、アンという少女の魔法は数で押されようが、巨大な魔物が現れようが魔族でなければ確実に殺しきれる。

 そのシエルの考えは事実ではあるが、結果的には実行は出来ずにいる、これは経験値の差だった、魔物と戦い慣れているシエルがアンと同じ魔法構成であれば相手を壊滅できるのに対し、アンという少女ではその状況の最適解が出せないそういう話だった。

 故に突如視界を覆った青白い閃光、閃光でなければ爆発系の魔法などを連想したであろう、だが実際に出たのはシエルの知る限り見た事も無いような青白い閃光であった、

 最初に動き出したのはエトワで、その手には既に魔法によって顕現された刀剣を片手に持って既に声も届かない場所まで駆け抜けていく。

「あっ…ちょ、…もー待ちなさいってぇー」

 シエルが今把握した魔物の数や種類という忠告も、既に聞こえはしないであろうという程遠くの場所まで即座に移動している。

「魔法無しで出していい速度じゃないのでしょ…っもう!」

 食器を洗いに行くとアンが語った時にエトワとシエルは一切視線で行く先を追っていなかった、けれどその言葉だけはしっかりと耳に残っていた。

 だから凡その場所はわかる、そして一瞬でも視界に入った不可解な青白い閃光の中心点そこを割り出せば、アンの居る場所がわかる。

「あの群れだけと油断していた、ここで出くわすとするなら巨大リス系統か…、アンが出したSOSならこれは完全に俺の失態だ…『魔法・生成(マナ・ジ・エレー) 穴凹の剣』」


 小川まではもう数mと言った所でアンを襲っている正体を目視で発見し、数を把握するまでにかかる時間はそうかからなかった。

 だがしかし視界を奪われた事による勢いだけの攻撃に運悪く被弾してしまっていたのか、先ほどまで朝食を一緒に食べていた白銀の髪色に羊のような角を持った少女と同一人物とは思えないほど、青白く発光をしている髪色をしているが確かにアンと分かる少女が、木にめり込み少し唇から血を垂らしながらゆっくりとずり落ちていた。

「大丈夫かアン!」

「…エトワ…やっぱり来てくれた……。パパとママが庇って…」

 最後まで言葉を紡ぎきれずに少女の意識は落ちる。

 それが絶命という事ではないとしても、一瞬ではあるがドキンと心臓が弾む、高揚している訳でも、恐怖している訳でもない、ただ冒険者を名乗るモノ達が時折見せたあの瞳が脳裏に過っただけだ、あの絶望しきった瞳。

 人類を諦めさせるには十分過ぎる程の、憔悴しきりその瞳に光を宿す事を諦めた目、その目がこちら向いているようで少し気味が悪くなり、そしてなによりも少女が無事だったその事実に安堵をした。

「…これは俺のミスだ、だけどまぁそれは関係ないか、際限なく湧き続ける魔物であるのなら幾ら数が減ろうが問題ない……だろ?」

 右手に持つは瑠璃色刀と言う名の刀剣、左手に持つは名の通り穴凹でみすぼらしい、なんとか斬れる形を整えただけの剣だ。

 二刀流がエトワの本業という訳ではないが、数が多いのだから手数が多いに越した事はない。


 故に自身の出せる速度を全て乗せた連撃をただひたすらに、一度斬る度にその場に留まるなんて非効率的な戦闘はしない。

 ただ夜空を駆ける流れ星の様に。

 いつまでも輝ける訳ではない、けれど夜空を駆けている内に魅せる強力な印象を与える、その印象が美しいと感じるか、不気味であると感じるか、あるいは痛みを感じるか見たものの数だけ思いは存在するだろう。

「エトワしっかり避けなさいよ『魔法・剣の(ラシィピューレ)』…」

 魔物たちが最後に見たのは平面に見える流れ星の数々か、空から降り注ぐ流れ星かのどちらかであった。

「シエル……流石に剣の無差別乱射は品が無いし、なにより危ない…」

「生きているじゃない、それよりも左腕大丈夫かしら?」

「左手?……あぁ多分ダメだ、止血はしてから意識落とすからアン同様なんとかしてくれ」

「はいはい…ついでにもう港まで魔法でアナタ達を運ぶから文句は止して頂戴ね」

「りょーかーい…」

 そこには吹き飛ばされて意識を失った青白く輝く髪色をした少女と、魔物の反射神経で食い破り、半分程度は噛み切られてしまった左腕をプラプラとシエルの方へ向かって手を振り、そして案の上彼もまたアン同様に、意識から手を手放した。




 腸が煮えくり返るとまではいかないが、臓物が浮かんでいる、重力に反しているという例えがしっくりくるかもしれない。

 体が揺れている、モノを運ぶよりも乱雑に水上で揺られているような感覚、感想を語るのであれば不愉快だと、言いたくもなる感情が脳裏に宿り一度閉じていた眼をもう一度開く。

「なんか気持ち悪い…揺れているような、揺れてないような、空が揺れている?」

「なに言ってんだ、兄ちゃんここはもう海の上だぜ。可愛い嬢ちゃんにどうしてもと言われて乗せてやったんだが、本当死体じゃないかとヒヤヒヤしたぜ、よかったよ生きていて」

「そっか……俺はあれから助かったのか…」

 茶髪を黒で無理やり染色したような髪が海風でそよぐ。

 服に挟めてある手紙を視界の端に見つけ、荷物置場の見張りが早く荷物の山から降りないのかと、思っているような瞳で見つめていてもエトワにはその感情は届きそうにない。

 ある程度の周りの目などどうでもいいかという事でもあったのだが、今回は一味違った。

 手紙にはこう記されている。


《案外早く港に着いてアナタは随分とお眠だったみたいだったから、船員に任せて船に担ぎこんでもらったわ。 私とアンはここから南西方面にある魔法都市ジマラ・グレーヌに向ってアンを魔法学校に入学させる手続きをしておくわ、あの子なら簡単に入学できるでしょうしそこの心配はしないで頂戴。 でここからが本題ね、恐らく手続きと試験で2週間は取られるだろうし、アナタがその船から向かう南方大陸人類側最大の国に向かうには合計1か月は一旦お別れにする事になるんだけれど     もう船が出航する時間みたい、まぁとりあえず1か月程その国で待っていて頂戴、あと情勢や種族間の問題もよく聞くから上手く立ち回りなさいな。                      シエルより

                 P.S 船台が3人分には少し足りなかったのよ》



 ビリビリと貰った手紙をエトワは破りすて、一目散に荷物置場から船の甲板まで走りだし、南西の凡その方角を太陽の角度から割り出してそちらに目を向ける。

 悠々と遊覧でもしているんじゃないかと思う程に、こちらとあちらでは波の高さがまるで違う、同じ海でも数キロ離れるだけでこうも波が違うのもそれはそれで珍しい。

 だからこそエトワは叫ぶ、心の底から思った一言を。

「全部シエルの無駄遣いの所為だろうがぁああああああああああああああ」

 全力の叫び声が届いているかどうかは知り得もしないが、ただただエトワは自分以外のミスで起きた結果に対しての不服を全力で何かを吐き出したい気分であった。

 周りの視線が痛い、痛いのだが、それよりも先に返ってくる行動に、尚怒りは嵩を増す。


 *


「うるさいわね。そうだわ、アンさっき言ってみた事を実戦してみなさい」

「え、それやったらエトワにあたらない?」

「いいのいいの、二日も治癒魔法を回させたまま運ばせたんだから、それくらいあっても罰はあたらないわ」

 本当にいいのかとアンは首を傾げながらも、骸となった父と母を魔法で出しそれを等間隔で少女の前に一列になるように並べた。

 パシュンという魔法を打ちだした音がその場に残る、魔法の名は貫通する弾丸だ、人に向けて撃てば容易く臓物を撃ち抜くという特性があるモノの、アンの実力では数キロも離れてしまえば届く事は無い、けれど父と母を使って撃ちだし部分を限界まで前に出す事でそれを成し遂げてしまおうというのが、シエルがアンに語った魔法の弱点の改善案だった。

 いっても100mほど前に出せるだけ、だがその100mがあればアンは数キロ離れた敵にも命中させられる。

 これは魔法使いとして素晴らしいポテンシャルだ、生まれてこの方基礎の基礎しかやってこなかったアンだからこそ、そこまでの緻密な魔力操作も可能なのだろうが、人にあたれば臓物を離れている場所とは言え直撃した人間はどうなるのだろうか?


「ギャヒィン…………アイツ今度会ったら…絶対殴る…」

 意外にも大丈夫なようだ、離れていた事によって威力が減衰したのかあるいは治癒魔法を二日間も使用し続けさせるほどの回復魔法の効果が効きづらいことと関連しているのかを知る由はないが、まぁとにかく無事の様だった。

 その無事が続くのもたった十数分というのが、剣の道を極めたいと願う彼にとって幸運なのか不運なのか、知りはしない。

 とにかくこの船旅は苛立ちと驚きの連続であることは事実なのであろう。

「大丈夫ですか⁉」

 勢いよく心配しながら駆け寄ってきた、魔族の姿がエトワの視界に入ってきた事で、そうだろうという確信付けたに違いない、彼はこよなく自らを鍛える為の運に愛されていると確定付けるモノだった。

 エトワが抱くのは驚きと疑問、だがそれよりも先に彼の手は既に顕現させていた刀剣に移り、そしてそれがその魔族に防がれないように届かせるには十分過ぎる空間と時間があったのだから。

 未だに口論を留まることのないエトワとシエル、いつまでも責任の押し付け合う人類の悪いところを煮詰めたような醜い争いは続いている。

 普段のシエルであれば周辺に魔物が近づけば寝ていても気づいているであろう距離でさえ、エトワとの取っ組み合いに集中し過ぎて居る所為もあってか、未だに気づく様子はない。

 悪く言えば慢心、そして傲慢だ、シエルはアンであれば大抵の魔物を捌ける、それだけのポテンシャルを持っているとこの5か月弱で確信していた。

 良く言うのであれば信頼があり、アンという少女の魔法は数で押されようが、巨大な魔物が現れようが魔族でなければ確実に殺しきれる。

 そのシエルの考えは事実ではあるが、結果的には実行は出来ずにいる、これは経験値の差だった、魔物と戦い慣れているシエルがアンと同じ魔法構成であれば相手を壊滅できるのに対し、アンという少女ではその状況の最適解が出せないそういう話だった。

 故に突如視界を覆った青白い閃光、閃光でなければ爆発系の魔法などを連想したであろう、だが実際に出たのはシエルの知る限り見た事も無いような青白い閃光であった、

 最初に動き出したのはエトワで、その手には既に魔法によって顕現された刀剣を片手に持って既に声も届かない場所まで駆け抜けていく。

「あっ…ちょ、…もー待ちなさいってぇー」

 シエルが今把握した魔物の数や種類という忠告も、既に聞こえはしないであろうという程遠くの場所まで即座に移動している。

「魔法無しで出していい速度じゃないのでしょ…っもう!」

 食器を洗いに行くとアンが語った時にエトワとシエルは一切視線で行く先を追っていなかった、けれどその言葉だけはしっかりと耳に残っていた。

 だから凡その場所はわかる、そして一瞬でも視界に入った不可解な青白い閃光の中心点そこを割り出せば、アンの居る場所がわかる。

「あの群れだけと油断していた、ここで出くわすとするなら巨大リス系統か…、アンが出したSOSならこれは完全に俺の失態だ…『魔法・生成(マナ・ジ・エレー) 穴凹の剣』」


 小川まではもう数mと言った所でアンを襲っている正体を目視で発見し、数を把握するまでにかかる時間はそうかからなかった。

 だがしかし視界を奪われた事による勢いだけの攻撃に運悪く被弾してしまっていたのか、先ほどまで朝食を一緒に食べていた白銀の髪色に羊のような角を持った少女と同一人物とは思えないほど、青白く発光をしている髪色をしているが確かにアンと分かる少女が、木にめり込み少し唇から血を垂らしながらゆっくりとずり落ちていた。

「大丈夫かアン!」

「…エトワ…やっぱり来てくれた……。パパとママが庇って…」

 最後まで言葉を紡ぎきれずに少女の意識は落ちる。

 それが絶命という事ではないとしても、一瞬ではあるがドキンと心臓が弾む、高揚している訳でも、恐怖している訳でもない、ただ冒険者を名乗るモノ達が時折見せたあの瞳が脳裏に過っただけだ、あの絶望しきった瞳。

 人類を諦めさせるには十分過ぎる程の、憔悴しきりその瞳に光を宿す事を諦めた目、その目がこちら向いているようで少し気味が悪くなり、そしてなによりも少女が無事だったその事実に安堵をした。

「…これは俺のミスだ、だけどまぁそれは関係ないか、際限なく湧き続ける魔物であるのなら幾ら数が減ろうが問題ない……だろ?」

 右手に持つは瑠璃色刀と言う名の刀剣、左手に持つは名の通り穴凹でみすぼらしい、なんとか斬れる形を整えただけの剣だ。

 二刀流がエトワの本業という訳ではないが、数が多いのだから手数が多いに越した事はない。


 故に自身の出せる速度を全て乗せた連撃をただひたすらに、一度斬る度にその場に留まるなんて非効率的な戦闘はしない。

 ただ夜空を駆ける流れ星の様に。

 いつまでも輝ける訳ではない、けれど夜空を駆けている内に魅せる強力な印象を与える、その印象が美しいと感じるか、不気味であると感じるか、あるいは痛みを感じるか見たものの数だけ思いは存在するだろう。

「エトワしっかり避けなさいよ『魔法・剣の(ラシィピューレ)』…」

 魔物たちが最後に見たのは平面に見える流れ星の数々か、空から降り注ぐ流れ星かのどちらかであった。

「シエル……流石に剣の無差別乱射は品が無いし、なにより危ない…」

「生きているじゃない、それよりも左腕大丈夫かしら?」

「左手?……あぁ多分ダメだ、止血はしてから意識落とすからアン同様なんとかしてくれ」

「はいはい…ついでにもう港まで魔法でアナタ達を運ぶから文句は止して頂戴ね」

「りょーかーい…」

 そこには吹き飛ばされて意識を失った青白く輝く髪色をした少女と、魔物の反射神経で食い破り、半分程度は噛み切られてしまった左腕をプラプラとシエルの方へ向かって手を振り、そして案の上彼もまたアン同様に、意識から手を手放した。




 腸が煮えくり返るとまではいかないが、臓物が浮かんでいる、重力に反しているという例えがしっくりくるかもしれない。

 体が揺れている、モノを運ぶよりも乱雑に水上で揺られているような感覚、感想を語るのであれば不愉快だと、言いたくもなる感情が脳裏に宿り一度閉じていた眼をもう一度開く。

「なんか気持ち悪い…揺れているような、揺れてないような、空が揺れている?」

「なに言ってんだ、兄ちゃんここはもう海の上だぜ。可愛い嬢ちゃんにどうしてもと言われて乗せてやったんだが、本当死体じゃないかとヒヤヒヤしたぜ、よかったよ生きていて」

「そっか……俺はあれから助かったのか…」

 茶髪を黒で無理やり染色したような髪が海風でそよぐ。

 服に挟めてある手紙を視界の端に見つけ、荷物置場の見張りが早く荷物の山から降りないのかと、思っているような瞳で見つめていてもエトワにはその感情は届きそうにない。

 ある程度の周りの目などどうでもいいかという事でもあったのだが、今回は一味違った。

 手紙にはこう記されている。


《案外早く港に着いてアナタは随分とお眠だったみたいだったから、船員に任せて船に担ぎこんでもらったわ。 私とアンはここから南西方面にある魔法都市ジマラ・グレーヌに向ってアンを魔法学校に入学させる手続きをしておくわ、あの子なら簡単に入学できるでしょうしそこの心配はしないで頂戴。 でここからが本題ね、恐らく手続きと試験で2週間は取られるだろうし、アナタがその船から向かう南方大陸人類側最大の国に向かうには合計1か月は一旦お別れにする事になるんだけれど     もう船が出航する時間みたい、まぁとりあえず1か月程その国で待っていて頂戴、あと情勢や種族間の問題もよく聞くから上手く立ち回りなさいな。                      シエルより

                 P.S 船台が3人分には少し足りなかったのよ》



 ビリビリと貰った手紙をエトワは破りすて、一目散に荷物置場から船の甲板まで走りだし、南西の凡その方角を太陽の角度から割り出してそちらに目を向ける。

 悠々と遊覧でもしているんじゃないかと思う程に、こちらとあちらでは波の高さがまるで違う、同じ海でも数キロ離れるだけでこうも波が違うのもそれはそれで珍しい。

 だからこそエトワは叫ぶ、心の底から思った一言を。

「全部シエルの無駄遣いの所為だろうがぁああああああああああああああ」

 全力の叫び声が届いているかどうかは知り得もしないが、ただただエトワは自分以外のミスで起きた結果に対しての不服を全力で何かを吐き出したい気分であった。

 周りの視線が痛い、痛いのだが、それよりも先に返ってくる行動に、尚怒りは嵩を増す。


 *


「うるさいわね。そうだわ、アンさっき言ってみた事を実戦してみなさい」

「え、それやったらエトワにあたらない?」

「いいのいいの、二日も治癒魔法を回させたまま運ばせたんだから、それくらいあっても罰はあたらないわ」

 本当にいいのかとアンは首を傾げながらも、骸となった父と母を魔法で出しそれを等間隔で少女の前に一列になるように並べた。

 パシュンという魔法を打ちだした音がその場に残る、魔法の名は貫通する弾丸だ、人に向けて撃てば容易く臓物を撃ち抜くという特性があるモノの、アンの実力では数キロも離れてしまえば届く事は無い、けれど父と母を使って撃ちだし部分を限界まで前に出す事でそれを成し遂げてしまおうというのが、シエルがアンに語った魔法の弱点の改善案だった。

 いっても100mほど前に出せるだけ、だがその100mがあればアンは数キロ離れた敵にも命中させられる。

 これは魔法使いとして素晴らしいポテンシャルだ、生まれてこの方基礎の基礎しかやってこなかったアンだからこそ、そこまでの緻密な魔力操作も可能なのだろうが、人にあたれば臓物を離れている場所とは言え直撃した人間はどうなるのだろうか?


「ギャヒィン…………アイツ今度会ったら…絶対殴る…」

 意外にも大丈夫なようだ、離れていた事によって威力が減衰したのかあるいは治癒魔法を二日間も使用し続けさせるほどの回復魔法の効果が効きづらいことと関連しているのかを知る由はないが、まぁとにかく無事の様だった。

 その無事が続くのもたった十数分というのが、剣の道を極めたいと願う彼にとって幸運なのか不運なのか、知りはしない。

 とにかくこの船旅は苛立ちと驚きの連続であることは事実なのであろう。

「大丈夫ですか⁉」

 勢いよく心配しながら駆け寄ってきた、魔族の姿がエトワの視界に入ってきた事で、そうだろうという確信付けたに違いない、彼はこよなく自らを鍛える為の運に愛されていると確定付けるモノだった。

 エトワが抱くのは驚きと疑問、だがそれよりも先に彼の手は既に顕現させていた刀剣に移り、そしてそれがその魔族に防がれないように届かせるには十分過ぎる空間と時間があったのだから。


ここまで読んでいただきありがとうございました

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