ブランコ
草地葉音です
これは私が小学生の時に生まれて初めてつくった小説です。ブランコを漕いでる時に生まれました。
ミーンミンミン ミーンミンミン
去年と同じセミの声
今年の夏も、祖父母の家に行くことになった。
去年と同じ電車。
去年と同じ景色。
ただ一つ違うのは、1人で来ているという事だけだ。
「中学生になったから、1人で行けるよね。」
小学生の時からずっと、1人で祖父母の家に行きたいと思っていた私は、中学生になって、その事が許され少しの開放感を感じた。
なりたくて中学生になった訳ではないが、小学生に戻りたい訳でもない。ふわふわとした不安定なこの気持ちや、中学校という私にとって大きな違和感のある物に毎日通っている日々を、忘れられる場所。それが祖父母の家だ。
~~~回想~~~
3歳の私は、小さなブランコが2つある公園によく遊びに行っていた。ある日いつも誰もいないその公園に、私より10歳位上の女の子が、ブランコを漕いでいた。
彼女は少し悲しげな目をしていた。3歳の私はブランコが好きだったが、あまり高くまでこげなかった。だから、空高く異次元までブランコをこいでいるような彼女をみて純粋にすごいなと思ったのだろう。
「おねえちゃん すごい あんな高い所まで。」と言ったら、
彼女は微笑んでいた。
~~~~~~~~~
3時間かかってやっと祖父母の家に着いた。
「よく 来たね〜」そう言っている祖母の顔は本当に嬉しそうで、改めてこの場所に来て良かったなと思う。
私の通っている今の学校は、小学校から高校までのエスカレーター式の学校だ。私は5年生の時に転校してきた。周りのお友達は本当に優しくて、1人になってしまうことは、まずなかった。3人グループの中に入ることもできて安心していた。しかし、6年生になった位から小さな違和感を感じるようになった。
私だけ上の名前で呼ばれている とか
笑顔が無理している とか
4人の中で一番気を使われてる とか
考え始めたら止まらなくなり、私自身もなんだか気を使ってしまっている。
ミーンミンミン ミーンミンミン
ネガティブなことを考えていると、セミの声がただただうるさいだけの雑音に聞こえる。
(はぁ リフレッシュしにあの公園に行こうかな)
あの公園は小さなブランコが2つあって立ち漕ぎで精一杯の所まで漕ぐと遠くの海が見える私のお気に入りの場所だ。あのブランコから初めて海が見えた時の気持ちは今でも忘れられない。しかも、滅多に人も来ないので考え事をするのと私の唯一の趣味のスケッチに絶好の場所だ。
スーツケースの荷物を用意してくれた2階の部屋になおし、スケッチブックと鉛筆を持って1階に降りた。ちょうど、祖父がいたので、
「公園にスケッチしに行って来るね」
「うん、分かった。4時頃には帰って来るんだよ。
おばあちゃんには言った?」私は首をふった。
「じゃあ、おじいちゃんから伝えておくよ。」
「ありがとう」そう言って公園に向かった。やはり祖父はものわかりが早い。祖母は少し心配性で、公園に行くと言っただけで、心配だからついて行くよと言う。ありがたいのだが、スケッチをする時は一人になりたいので、返事に困る。それを祖父は知っていたのだろう。
公園につくと、早速スケッチを始めた。学校の事を考えながら、ブランコの前の木と滑り台を描いていた。もちろん、ブランコの上で。どの位時間が経ったのだろうか。スケッチブックの上に水滴が落ちた。学校の小さな違和感のことを考えていて私は泣いていたのだった。
みんなの声が みんなの会話が ベールに包まれたように聞こえる。私だけ違う世界にいて距離は近いのに心が遠くにあるようなアンバランスな感覚。
私はスケッチを中断し、この涙が止まるように願いながら、ブランコを漕いだ。
海が見えた。
今日のこの綺麗な 海の世界に行きたいな
涙は止まっていた。
ふと、滑り台の横に小さな女の子がいた。3、4歳位だろうか。その女の子は綺麗な澄んだ瞳でじっとこちらを見ていた。
あぁ この子は今まで悲しい思いも、複雑な思いも、居心地の悪さも感じたことが無いんだろうな と
見るだけでわかるような瞳だった。どこか懐かしさを感じさせる雰囲気を持ち、この子もここが好きなのかな と思った。
私はブランコを漕ぎ続けていた。
するとその子は
「おねえちゃん すごい あんな高い所まで。」と言った。
きっとこの子は、この高さまでブランコを漕ぐことが出来ないから、ここからしか見えない海もまだ見ることが出来ないのか。
ここ子にもこの景色を見せてあげたいな。
そう思いながら、私は微笑んだ。
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