思い出に価値なんてありませんよ
人体錬成で作り出した生命
それは紛れもない私そのもの。
・・・・自分にだけは頼ってもよいのでしょうか?
ー 私立ポルタメント女学園 8月 スス・アオイ・偽物の部屋 ー
保健室の先生から髪の毛を入手した翌日、
最低限6時間は睡眠することを条件に解放された私。
学生と学園の運営をしながらでは体力的に不可能に近い。
もっと人に頼れという事だろうか・・・・・。
「という訳で偽物!学園の運営か学生か選んでいい。
元は私なのだから最初に選ばせてあげますよ?きひひひひひ」
「それじゃあ面白くありませんね。
私の提示する”条件”を飲んでくれますか?きひひひひひ」
条件?労働基準法とか言うのではないですよね?
「人体錬成マシーンで私の再構築を行う事。
これは本物も試したいと思っている。
そして・・・・・大口のクライアントが依頼した
”死者を蘇らせる”計画の近道にもなります」
「随分と厄介なことに巻き込まれていますわね、ススももう独りも。
でもススのそっくりさんを再構築ってことは別人になるってこと?
そうなったらワタクシは今の関係を続けられるか心配です」
アオイが止めないということはセーフ扱いでいいはず。
「今までの人体錬成は髪の毛から遺伝子情報を読み込んだコピー、
もしくはパラメーターをいじった遺伝子組み換え人間。
どちらも”本人”をベースとしたもの。
しかし今回の死者は全くの”他人”から新たな生命を作り出す代物。
髪の毛が手に入らない古いご友人や、手の届かなかった昔のアイドルまで。
無論これも失敗という結論に持っていかせますが、
お金をもらった以上形として錬成自体は成功させなければなりません」
「本物は話が長く退屈ですね。校長の長話ですか?
見せたほうが早いでしょうに。
アオイ、髪の毛を1本貰えますか?それと本物の私も」
???何故私の遺伝子を?
先生の髪の毛はあるのに?
先生x私だったり先生xアオイのほうがより好条件のはず。
ましてや先生の遺伝子のほうが優秀であることは偽物も熟知しているはず。
☆☆☆
アオイと私は髪を1本引き抜き人体錬成マシーンに入れる。
そして偽物をスキャンし台所ぐらいの大きさがあるマシーンは起動した。
何時の間に改良してたんですか?
歯車のような装飾やメーターの細部までが大正ロマンというべきか
スチームパンクと語るべきか。
無機質な工業デザインとは違った趣き。
・・・・多分先生の趣味だ。
錬成が進むにあたり偽物の体が光り、粒子となって消滅していく。
奇麗なようで儚い物ですよ。
そこまで思い入れはありませんが喧嘩は楽しかったです。
☆☆☆
カタカタと震えたマシーンからチーンと軽快な音が鳴る。
電子レンジですか、この機械。
中から現れたのはアオイと私の合いの子のような存在。
いや私をベースとしながら胸は出ている!!!
それも遺伝子弄ってできてますよね!!!!!!!
アオイと私を交互に見て新たな生命が言葉を発する。
「ふぅ。錬成は成功しましたね。
お久しぶりです、アオイ”ママ”と・・・・スス”パパ”にゃひひひひ」
「誰がパパじゃああああああああ!
絶対胸で判断しただろ!!!!!!偽物め!!!!!!!!!」
生後0歳の子供に教育的指導!!!!
止めないでくださいアオイ!!!
これは正当な”暴力”ではなく”教育”ですから!!!!!
「ふむ、流石はアオイママの魔力量にススパパの知識。やはり天才ですね。
例えばネコミミを生やすことなど造作もありません」ぴょこん
ネコミミを生やした自称娘は私の肉体をベースとしたようだ。
髪の毛は薄い青と緑色の左右に分かれた2色。
ところどころ入り組んでいて完全に左右対称ではないから
劇場版名探偵ドコカの犯人が見たら爆破しそうだなとは思う。
それかネットアイドル気取りですか?
非人道なネタは山ほどありますから、
収益停止までもっていきますよ?きひひひひひ。
「スス、この子に名前を付けてあげたらどうです?
ワタクシも一緒に考えますから」
「そんなの人造生命で十分ですよ」
アオイの質問にそっけなく返す私。
「・・・・・ニャラケル・ススで結構です、にゃひひひ」
「猫キャラ!!!!!というか私の遺伝子入ってる時点で
可愛い系は無理です!!!!
初見でチーズ牛丼食ってそうって思われてますから私!!!!」
「ならイメチェンしたらどうです?
眼鏡をコンタクトにして眉毛を書いて。
胸は・・・・シリコンでも入れましょうか?
まあ全部が嘘っぱちな|偽乳《マガイモノ ノ エデン》ですがね。
にゃひひひひひ」
「遺伝子いじくった結果でしょうに!!!
お前も貧人形にしてやりましょうか!!!!!」
「醜い」
アオイに失望されていますがこれは終末戦争なんです。
「そういえば何故私の遺伝子を使ったのですか?
先生のほうがずっと頭がいいはずなのに。
もしかして親ガチャ外したとか喚くためですか?
私への嫌がらせの為に変な遺伝子を入れる必要はないはずです」
「にゃひひひひ。そうですね。
誰がどう見ても先生の遺伝子を取り込むのが正解。
ですが僕はあなたではありません。
故にパパは思い出補正で先生を評価しているだけ。
ですが僕にはちょっと気の合った隣人でしかない。
僕にとってはアオイママとススパパと居て楽しいと感じましたから」
ほう、僕っ娘ですか。
「・・・・・やはり相容れない存在ですね。
ええとニャラケル?とでも呼べばいいですか?
あと誤解を招くからパパママって呼ぶのは禁止で」
「分かりました。アオイさんにスス・・・・・・パパぁ」にちゃあ
「やっぱ焼却処分!!!!魔女狩り!!!!
はりつけ!!!!キャンプファイアー!!!!!」
「にゃひひひひ。イジリがいがありますね、流石はパパ♡」
「まったく、喧嘩するほど仲がいいと言いますか。
親子喧嘩ですね」
スス・ニャラケル 「「仲良くなんてない!!!フン!!!」
アオイが言うほど仲良くなんてありません。
ましてや親子だなんて。
親子・・・・人生やり直すきっかけになればよいのですが。