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ある精霊姫のお話  作者: 雑魚寝
9/26

少女は早くも挫けそう

「では、今日から君も生徒会役員の一員だ

よろしくね、アイラ嬢」

エルバインはそう言うと部屋中の空気が変わる


(はぁ…終わった)

部屋の空気が変わったことでアイラの気持ちも落ち着かせようとした


「じゃあ今度の生徒総会で君の発表をしようか」

そんな言葉が聞こえ、また心臓が飛び出てきそうになる

「へ…?」

アイラは驚きのあまりマヌケな声が漏れる


「そうですね。アイラ嬢に注目を集めさせるためにも全生徒出席の総会で紹介することは名案だと思います」

メガネイケメンがその話に乗ってきた


「でもこいつ弱そうなのにそんなすぐ紹介して大丈夫かよ、もうちょっと鍛えた方がいいんじゃね?」

クール系イケメンネルフが(多分?)庇ってくれる


「そうですよ、それに生徒総会って明日じゃないですか。1週間前に転入してきたばかりなのに可哀想です」

カワイイ系イケメンカイルもネルフに同意してくれていた


(イケメンさん達ありがとうございます)

と心の中で2人に手を合わすアイラ

それに対し


「それは名案ですね。少しでも早い方が解決まで時間がかからないかもしれませんし、もし何かあっても私が庇いますので問題ありません」

そんな事を言うリーシャ

(リーシャは私の友達…だよね…?)

リーシャの言葉にかなり戸惑うアイラ



そして、アイラの心の叫びは届かず結局明日の生徒総会で発表する事になった

(無理です…)




次の日




「おはようございます、アイラ」

アイラの後ろから声がし、

その言葉に振り返り挨拶を返す


「おはようございます、ララ」

しかしその顔は暗かった


「どうしたの?」

「何でもないよ、ただ今日の生徒総会が凄く怖いだけ」

アイラは昨日の生徒会で決まってしまった生徒会役員紹介のことを考えていた


アイラのそんな弱音に

「そうだね。全生徒出席だから絶対出ないと行けないし、それに前回は…」

普段は午前に3科目の授業、午後は2科目の授業が行われるが、生徒総会が行われる日は午後の授業が無くなる

身分や年齢関係なく意見を出し合える場所、その名目で作られた生徒総会は授業の一環でもあった

しかし現在の生徒総会は身分を盾に下の者を見下す生徒が増え、平等な意見を出せる場所では無くなっていた


ララは前回の生徒総会の事を思い出して、顔色が悪くなる

前回の生徒総会の時、5組のある生徒が時間ギリギリに講堂に入ろうとした

その時一つ上の学年の生徒と出会ってしまい、そのまま連れ去られ身体にいくつもの傷をつけられた

その事があってからその生徒は自宅療養しており学校に登校できていない


「怖いよね、大きな声で言えないけど私も生徒総会にはあまり出席したくないかな…」

表情は笑っているが、ララの顔色は悪いままだった


「大丈夫、ララがいるし怖くないよ!それに何があっても守ってあげるからね」

先程まで腰が曲がっていたアイラだったが、背筋が伸び前のめりになりながら一生懸命にララに伝えた


「フフ…、ありがとうアイラ」

ララの顔には少し笑顔が戻っていた


そんなララを見て

(大丈夫だよ、絶対守ってあげるからね)

と1人で呟く




昼休憩がもう少しで終わり、もうすぐ生徒総会が行われる講堂にララは1人で向かっていた

(アイラ授業が終わってからどこかに行ったきりで、昼休憩の間にも帰ってこなかったけど大丈夫かな?)

ララはアイラに前回の生徒総会の出来事を昼休憩で話そうと思っていたが、アイラが戻ってこなかったため話せずにいた

転入してあまり日が経っていないため、どこかで問題に巻き込まれてしまっているのではないかとララは学園中を探し回っていたのだが結局見つからず、生徒総会ギリギリの時間になってしまった


アイラのことを心配をしながらいくつかある出入口から端の方の扉を選び中に入ろうとする

その時


「おいおい、こんな所に5組のやつがいるぜ」


背後から男の声がする

しかしララは男の事は無視をして講堂の扉を引こうとした


「待てよ、お前目上の者には敬意を払えって学ばなかったか?」

普段なら無視をして彼らの興味が無くなり去っていくのを待つが、今は生徒総会が始まるまで時間が無い。その上アイラも見つからないため焦っていた。だから、ララは振り向いてしまった。


「何か御用ですか」

ララは真顔で声を掛けてきた人物を見つめ、

振り向いてしまった事を後悔する


「その態度、気に食わんな」

そう言うと男は気持ちの悪い笑みを浮かべていた

その男の名はベイル・シャイロウ

この学園の汚点と言っても過言ではない

陰口、罵りは日常茶飯事。最近では体罰と言う名の模擬戦を行い、魔法や剣術で数々の生徒の体に傷を残している張本人だった

前回の事件の原因もベイルだった

5組の生徒はベイルに出会ってしまったため

学校に来れなくなってしまったのだ

そして黒い噂も絶えなかった。

"女を娼婦に売り飛ばしている"や"人を殺している"こんな噂も学園内広まっていた。あくまで噂であったが本人の人柄を考えれば信じる者の方が多かった。

そんな奴と出会ってしまったララ自信運が悪いと思うしか無かった


「失礼しました、シャイロウ様とは知らずに無礼な態度を取ってしまい申し訳ありません」

頭を下げ少しでも敬意を表しているように振る舞う

ララはこれ以上機嫌を損なわせないために必死だった

ただこの場から去ってくれればよかったのだ


なのに


「お前、可愛いな」

ベイルはララの顎を親指と人差し指で掴み無理矢理視線を合わせた

その瞬間ララの防衛本能が働きその手を振り払ってしまった

誰だって気持ち悪い奴に体を触れてきたら振り払う当たり前のこと、しかし振り払った相手はあのベイルだ

ベイルはまさか振り払われるとは考えていなかったのだろう、間抜けに口が開いている


(逃げなきゃ…)


少しの油断も見逃さずララは逃げ出す、

正面を見て右側

他の生徒は生徒総会のためすでに講堂に入っていたため扉の前の廊下は誰もいなかった

今逃げ出さないと何をされるか分からない

誰でもいいから助けてもらうために走り出す



「どこ行く気だ〜?」


ベイルはララが向けた目線だけで何処に逃げるのか予測し、ララの右側に態勢を変えていた

そしてそのままララはベイルに壁ドンされ逃げられなくなった


「お前可愛いなぁ、生徒総会なんかやめて俺と今からデートしようぜ」

気持ち悪い声がララの耳元で囁く


「…」

ララは恐怖のあまり声が出なかった、その上思考まで停止してしまったのだ


何も応えないララに対し

「まあいい、返事がないと言うことは肯定と捉えて今から…」

ベイルがララの手を握り講堂とは反対側へ歩き出そうとした


「ま、待って下さい!!!!」

ベイルはララしかいないと思っていた廊下から女の声がして驚いた

その声の方に振り向くと、ビビりながら大股でこちらに向かってくる地味な少女がいた

「い、まから生徒総会です。この学園では生徒総会は全生徒出席のはずですので講堂にお戻りください」

言葉に詰まりながら、少女はララとベイルが繋いでいた手を離すと

「ララ…講堂に入ろう」

そう言って現れた少女に驚きながらララは少女に続いて講堂に向かっていく


突然現れた少女に呆気に取られていたが、

「待て、お前!急に現れたと思えばいい態度だな。俺を誰だか知っての事か?」

突然の事でベイルにいつもの余裕が無くなってしまっていた


「えっと、ベイル・シャイロウ様ですよね。2年3組の…」

と少女はベイルの事を理解していた。理解したうえでベイルに命令してきたのだと理解した

「知ったうえでその態度か…まあいい、

がお前に用はねぇ。どけ」

少女の態度や言葉からベイルの事を恐れているのは理解していた

少女がこれ以上大きく出れないと判断し、ベイルは無理矢理ララから少女を剥がそうと肩を掴もうとした

しかし少女はこちらを向きベイルに放つ

「私は今回生徒会役員に選ばれたアイラ・ノルエルです。生徒会役員として全生徒出席の生徒総会を欠席しようとする生徒は見逃しません。シャイロウ様も早く講堂にお戻り下さい」

はっきりとその少女アイラは応えた

その言葉にララは驚きが隠せない

「アイラ…?」


ベイルは

「お前が生徒会役員?ふざけるのも大概にしろよ、冴えないお前が選ばれるはずがねぇだろ」

と腹を抱えて笑っていた

そして

「お前に1ミリ足りとも興味は湧かねぇが、面白ぇ奴は嫌いじゃねぇ。お前も来い、いい所連れてってやるよ」

ベイルはアイラの腕を掴みララごと連れて行こうとした

「え、え、ちょっと待ってくださいっ

私本当に…」

アイラの言葉を嘘だと思われてしまい慌てて訂正しようとしたが聞いてもらえない

ララはアイラの言葉に驚きが隠せず何も出来ないままだった


「はい、君たちそこまでだよ」

優しい音色のような声だった

「アイラ嬢、君は生徒会役員なのに君まで一緒にサボろうとしたらだめだよ」

そう言って笑っている

「会長…」

アイラの言葉にララとベイルは慌てて顔を声の主人に向ける、そして最上位の礼をした

「ここは学園だからそこまでしなくて大丈夫だよ、それより早く講堂に戻った方がいい

もうすぐ生徒総会が始まるよ」

エルバインは柔らかく笑い声を掛ける

ベイルは何も話さないが、部が悪そうな顔をしてそのまま去ろうとする

「ベイル・シャイロウくん

あまり派手に遊ばない事をオススメするよ」

エルバインはベイルに告げる

それに応えずベイルは講堂に入っていった


「何事もなくてよかった、

ザイルス嬢も講堂に入るといい」

エルバインはララに笑い掛けるとそのまま講堂の扉を引いた

ララは何が起こったのか分からないまま扉に入ろうとしたが

「アイラ、後でちゃんと説明してね?」

不格好な笑い方であったが、今のララには精一杯だった

「うん」

アイラも精一杯笑って返した

ララはエルバインに礼をし講堂に入っていった

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