夢のような
そんなに見てくれているんですか…
これは投稿するしか!
『やめてっ!離して!!!』
『押さえつけろ!』
『やだっ触らないで!』
ララは謎の男たちに腕を掴まれたが必死に抵抗する
『もういい…眠らせる』
しかしその抵抗は虚しくその後の記憶はない
(やだ…怖い、私どうなるの…もう家には…)
深い眠りの中で恐怖心だけが蘇る
大好きだった家族にもう会えないかもしれない、これからこの身に何が起こるか分からない
完全下校時間間近、利用者の少ない図書館
そんな所で起こった事なんて気づく人はいない
知ったところでもう手遅れかもしれない
もう誰も助けてはくれない
(誰か…助けて…)
ララは夢の中で1人泣いた
(アイラ…ダイ…)
ララの唯一の友達
アイラは最近編入してきたちょっと変わった子
でも優しくて、少ししか一緒に居られなかったがララにとっては大好きな友達だった
(もう…)
ララは悲しみの中で最悪な事を考えようとした
そんなララの体を誰かが触れる
(だれ?)
それはまるで宝物のように優しく温かく包み込んでくれた
その温かさに自然と涙が溢れてくる
(知らない人…でも)
違和感を覚えたララに
『良かった…本当に』
そう聞こえた気がした
知らない声のはずなのに何故か覚えがある
そこからは恐怖心は無くなり、安心して眠ることができたのが夢の最後だった
「…ん」
ララは大好きで懐かしい匂いに目が覚める
覚えのある天井、ベッド、匂い
そこは学園に入るまで住んでいた実家だった。前は休みの度に帰っていたが、最近では勉強ばかりの日々だったため長期休暇でしか帰れてなかった
(戻ってこれた…)
大好きな空間に安堵して1人涙を流す
「ララ!」
ベッドに横たわりながら涙を流すララに勢いよく抱きつく背の高い男の人
前に会った時はもう少し健康そうだったのに、今はやつれているように見える
髭も伸びっぱなしだった
この人の事だ、仕事が忙しいのに様子を見にきてくれていたのだろう
「お父さん」
ララは抱きつく父親に少し力がなくなった腕を回す
「…っん、おどっ…お父さんっ」
ララは懐かしい人の温かさに涙が止まらない
「ララ…ララ、良かった。ララが無事で本当に良かった…」
ララの父親も大人気なく涙を流す
祖父に似て、仕事でも領主としても優秀なララの父親は家族に対しても厳しく指導してきた
いずれ人の上に立つ者、領民を守る者になるために厳しくしてきたのはララの兄もララ自身も当然だと理解している
そこにはきちんと愛を与えてくれていたのも分かっていた
しかしそんな父親が声を出して泣いている
「…うん、うんっ」
ララは頷くことしか出来ない
2人して泣き続けた後
「おかえり、ララ」
ララの父親が頬に涙の跡を残しながら笑顔で告げる
「…ただいま、お父さん」
ララが目覚めたのは誘拐されて3日後の夕方だった
ララの父親が仕事を途中で切り上げ、少しだけ様子を見たらまた戻ろうとした時にララは目覚めた
そして2人で抱き合って号泣し、父親に身体の心配や体調の変化など聞いた後また仕事に戻っていった
父親の秘書が呼びにきて、
『なぜ、お嬢様が目覚めた事を伝えてくれないのですか?奥方様やご子息様、この家に仕える者全てお嬢様の心配してたんですよ!』
など一通り説教して
『ご無事で何よりです。今は目覚めたばかりでお身体にも良くありませんので、また明日ぜひ元気な姿をお見せください』
と笑顔で告げてララの父親の首根っこを掴んで部屋を出て行ってしまった
ララの父親は名残惜しそうだったが、手を振って見送る
使用人が扉の側に居るから呼べばいつでも来ると言っていたから不自由はない
ララはもう一度ベッドに横になって目を瞑る
初めての事で体がついていってないのだろう
いくらでも寝れるようになった
目を閉じるとすぐに眠りにつくことができる
次に目を開けた時には真夜中だった
もう一度眠りにつこうと思ったが、眠れない
(寝過ぎかしら…)
ララは外の空気に当たろうとベッドから起き上がりクローゼットから春用の軽い羽織を肩から掛けてバルコニーに出た
外に出ると少し湿気を含んだ生ぬるい風が肌を伝い、眼下にはよく知る懐かしい領土が広がっていた
中心街には灯りがついていて、明るく元気な酔っ払いであろう声が微かに聞こえてくる
「戻ってこれた…」
そう独りで呟いたら、改めて実感したのか瞳から涙が一筋流れる
それを皮切りにどんどん溢れてきた
ララは両手で顔を覆い1人バルコニーで泣いてると思っていたが
「だっ大丈夫…ですか」
突然声が聞こえた
不審者と思い勢いよく顔を上げて驚く
目の前にフードを被った人がララを心配してか手を前に出して浮いている
はじめ目を疑ったが、ララの部屋は3階にあるため浮くという表現が正しいのだ
「…誰ですか」
何故か大丈夫だと確信があったが
不審者である事には間違いないので警戒する
「え、と…あの」
しかし望む答えが返ってこない
「答えられないなら警備隊を呼びますが」
「えっ…それはっ」
フードの人が手足をあたふたさせて戸惑っている
大丈夫だと思ったララだったが、やはり怪しく思い部屋の外にいる使用人を呼ぼうとした…その時
ブン―と勢いの強い風が突然吹き驚いて目を閉じてしまう
勢いが弱まったのを肌で感じて薄目でゆっくりと開ける
「―!」
目の前の怪しい人の被っていたフードが風によって無くなり、月の光を浴びて照らされた姿に声を失う
銀色に輝く髪、星が瞬く様に輝く黄金の瞳、一目見れば忘れられなくなるような美しい顔
フードの中は女神のような美しい人がいた
「すっ、すみませんっ…」
慌ててフードで顔を隠すその人は、先ほどは気づけなかったが見た目より幼い声をしていた
その人は後ろを向いてそのまま帰ろうとしているのだろう
風に乗ってそのまま離れていく
「待ってください!」
ララの言葉に動きを止める
素直に従うその人をもう不審者とは思わない
「あっ貴方が助けてくれたのですか」
何故そう思ったのか分からないし確信はない
でもそんな気がして思わず声を掛けてしまった
「…」
しかし後ろを向いたままで返事は返ってこない
「私っ…貴方のおかげでまた家族に会えることが出来ました!
…本当に、本当にありがとうございます」
ララは蹲り涙を溢しながら精一杯伝える
「…た」
「えっ…?」
「よかった」
その言葉にララは涙を拭って見上げる
その人は照れているようにはにかみながらとても美しく笑った
その姿がこの世の者とは思えないほど綺麗で女神という言葉はその人にこそ相応しいと思える
言葉を失ったララは口が思うように動かない
2人見つめ合いながらしばらく沈黙が続く中、生ぬるい風が肌を伝う
「…あなたはっ」
数分経った頃よくやく思うように口を動かす事ができた
しかしその言葉はそっと人差し指で唇に添えられ止められる
ララは驚いて見上げると、その人は血色の良い唇を軽くあげて囁く
「もうお休み…美しい人の子」
「えっ」
「もう…うぶ、……から」
(なんて…)
意識が遠のきその人が何を言ったのか分からない
(もっと話したい…あの人のことを知りたい)
ララの願いは虚しく、もう一度眠ってしまった
読んでいただきありがとうございます
次は3日後のこの時間によろしくお願いします
大丈夫です。もう予約しました
では ・・)ノ゛