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ある精霊姫のお話  作者: 雑魚寝
19/26

少女は夢を見る



放課後アイラは1人生徒会の部屋に向かって歩いていた

階段を登ればすぐに生徒会の部屋が見えてくる

一段一段登っていたが、足が滑りそのまま壁に頭を軽くぶつけてしまった

普段ならそれぐらいで倒れはしないが、日々の疲労と雨季が訪れたことによる寒暖差で身体は根を上げていた

そして階段に座り込むような形でアイラは気を失ってしまったのだ





『…たちの…い…アイラ』

雲ひとつない青空の下で愛おしく宝物のように私を呼ぶ人たちがいる

頭を撫でる手はアイラの頭がすっぽり入ってしまうぐらい大きな手だ


『…かえろう』

そう言って繋いだ手はとても小さく大きな手に簡単に包み込まれてしまう

私の手を掴んだ2人はとても嬉しそうで家に帰ったら何をしよう、明日は何だよと

このままの幸せが続いていくことが当たり前のように話している

そんな2人はアイラにとってかけがえのない大切な人であり、戻る事のない小さな頃の思い出





懐かしい頃の記憶に目頭が熱くなるのを感じながら目が覚める

そこには見覚えのない部屋が広がっていた

身体を起こそうとするが鉛みたいに重く起き上がれない

起き上がるのを諦め、今の状態を考察する


日に日に体温が高くなっているのは自覚していた

足元がフラついていた事も理解していた

最後の記憶は階段を踏み外し壁に頭をぶつけてしまった記憶

そして今学生寮の様な壁やベッドではなく清潔感のある壁やフカフカのベッドに横になっている

そこまで考え誰かが保健室まで連れてきてくれたのだと理解した



「情けないなぁ…」

そんな事をアイラは1人呟く


「それは違うと思うけどね」

独り言をしたつもりだったが誰かが傍にいたみたいだ

アイラはその返事に驚き勢いよく身体を起き上がらせるとそこにはエルバインがベッドの横にあった椅子に腰掛けていた


「会長!ど、ど、どうしてここに…」

アイラは驚きのあまり歯切れが悪い

「それは僕が君を保健室まで運んだからかな?」

軽く微笑みエルバインが応えた

「か、会長に!すみません」

急いでベッドから離れ立ち上がろうとするがアイラはエルバインに肩を掴まれまたベッドに寝かせられた

「構わないよ。君はよくやってくれている

生徒会の仕事も申し分ない上に、それ以外にも君には迷惑を掛けているんだ。これぐらいさせて欲しい」

エルバインはアイラに向けて笑う


エルバインの美しさはこの国の国民なら知らない人はいない

アイラも学園に来る前から何度か見かけた事はあったが、思わず言葉を失う

黙って見つめ返すと青色の瞳が輝きを増しアイラを映し出す

思わずアイラは布団を深く被り顔を隠す


そんなアイラを見て

「長々と話してしまったね、すまない

それじゃあ僕は生徒会の仕事が残っているから戻るよ

今日は出席しなくて構わないからゆっくり身体を休ませるように」

そう言ってエルバインは保健室を去っていった


エルバインが去ってからもアイラは布団から出れずにいる

(この国の人達は綺麗な人ばっかりで目に毒だよ…)

そんな事を独り思う




…一時間経ったぐらいか

魔力量の多いアイラの身体の回復は早かった

少し眠り身体が思うように動くようになったため、寮に帰ろうと起き上がる

最近ではロイの働きのおかげで呪術のメンテナンスはだいぶ楽になり今日の分も終わっている。エルバインから生徒会に出席しなくていいと言われたためアイラは学内に残る理由がなかった


(その前に教室に荷物を取りに行かないと…)

普段は荷物を持って放課後、生徒会まで向かっていたが今日は何故か荷物を持たずに来てしまった

日頃の疲労からそのことまで頭に入らなかったのだろう

倒れる前に比べて軽くなった身体を労りながらアイラは教室に向かう


もうすぐ完全下校時間

普段ならこの時間でも数名ほどすれ違うが学内を歩いてても誰ともすれ違わない

梅雨の時期のため重い雲が空を覆っており日の長い春の月であっても外は暗い

湿度は高いが幸い今は雨が降っていないため、また降り出す前に早めに帰ったのだろう

アイラはそんな事を考えながら教室に入る


アイラの机の上にいつも持ち歩いている鞄が置いてあり、持ち上げると登校した時よりも軽かった

中身を確認すると教科書が朝より少ない事に気づく

これが最近の嫌がらせだ

教科書やノート、ブレザーなどが無くなっている

生徒会からの監視に目立たないようにしてのことだろう

大体ゴミ置き場に捨てられているため、物が無くなったら帰りにそこに寄って帰る習慣が出来てしまった

突っかかれたり、転かされたりなどを考えれば可愛いものだとさえ思ってしまう


アイラはあまり気にせず、ゴミ置き場に寄って帰ろうと思ったが視界の端にもう一つ見覚えのある鞄が置いてあった

教室の出入り口側からは見えないが、アイラの席からはその鞄が掛けられていることに気づける

そこにはアイラと一緒に居てくれるララの鞄が掛けてあった


もうすぐ完全下校時間、真面目なララはほぼ毎日図書館で勉強していたが決められた時間を破るなどしない

そもそも下校時間ギリギリまで図書館に居るため、アイラと同じ様に鞄を持って勉強をしに行きそのまま寮へ戻る


「…」

嫌な考えが過ぎる

しかしアイラと同じように忘れてしまい、取りに来るかもしれない。ララが来たら一緒に帰ればいい

そう言い聞かせ、下校時間まで少し待とうとアイラは席に着いた



静かに待ち続ける中、教室に備えられた壁掛け時計の秒針の音だけが響く


(もうすぐ………

       ……!)


魔法が破られた気配がした

アイラは窓から顔を出しそこに目をやる

(気配からしてイリスさんの防御魔法…)

編入当初からイリスが施していた魔法を理解しており、五星の魔法を破れる者などいないと思っていたため心配など必要なかったが


「まさか…」

アイラは慌てて教室を出て走り出す


やっぱり自己満で続けようと思いました

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