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魔物 Part2

 行くぞと言われたものの、どうやって川を渡るのか?ロアには何かアテがあるのだろうが、俺には全くそれが浮かばない。


「まかせろぉ!」


 イルーの声が聞こえたかと思えば、次の瞬間俺の体は宙を舞っていた。弧を描きながら川を越える。足の裏には、上向きにかかる強い()を感じていた。


「さっきはミストが乗っかってきたから、上手くぃかなかったみてぇだ!」


 ひどい風切音に紛れてイルーの解説が入るが、それどころでない。大昔乗ったジェットコースターを思い出す。弧の頂点を越えて上昇から落下に変わり、“ひゅん”現象を感じる。俺はこの感覚が好きではなかったな。などと考えていると、地面が驚く程の速さで迫ってきた。


「ごめん!着地は考えてねぇゃ!てへっ」


 俺は勢いよく地面へ叩きつけられ、勢いがなくなるまでゴロゴロと地面を転がった。

「痛っ~~!」

 と言ってから痛くないことに気がつく。例のイルーの防御魔法、《防具不要》のお陰で無傷である。結果オーライではないか。若干ふらふらしながら立ち上がり、川の方へ振り返る。すると自前のグラディウス――というのだろうか?幅広でやや短めの剣――を鞘に収めながら、ロアが走ってきた。


「大丈夫か?えらい飛んでたな!」


「あはは……。お陰様で……」


 せき止められていた川の流れが元に戻った。ロアは何かしらの魔法か何かで、川の流れを止めて渡ってきたらしい。それならいちいち絶叫体験しなくても、ロアの後をついてくればよかっただろうに……。若干損した気分になる。


「急ぐぞ!」


「は、はいっ!――イルー……わざわざ飛ばなくても良かったんじゃ?」


「……」


 ロアは千里眼モニターを二つ出して、ハルと魔物の様子を見ながら駆けていく。俺もその後をやっとの思いで追う。微かに見えるモニターの映像からは、魔物が三階建ての住宅程あろう巨体だとわかる。その姿は巨大な蛇の様で、うねうねと黒く長い胴体をくねらせて気味が悪い。救命信号の発信者である馬車が、距離をどんどん詰められていた。


「これじゃあハルでも間に合わないかもしれない!」


 ロアが弱気なことを口走る。


「イルー!数キロ先の敵へ遠隔攻撃できる魔法はないか?」


「ちょっち待って……あった!〈レイ・キーノン〉――魔法の大砲だ!」


「魔物に当てられそうか?」


「ぬぬ……実際目に見えてないとターゲティングできないみてぇだ」


「間接射撃だな!?大砲の教練は出たことがないが、投擲は得意だ!昔パチンコで鳥を仕留めたことがある!試しに魔物に向かって一発打ってくれ。それを見て弾道を修正する」


 何かとても不安だ……。


「しかし、ハルさんに当たりやしませんか……!?」


「あいつは閃光の跳躍者の異名を持つ騎士だぞ!?狙ったって当たらないさ」


 俺達は揃って小高い丘の上に陣取った。俺は息も絶え絶えだ。呼吸を必死で整えていると、例のウィンドウが目の前に現れる。どうやらこれは、これから魔物へ撃ち込む魔法の弾道設定の画面のようだ。


「イルーがやってくれよ……」


「こういう大事なことはミストの役目だろ!?ゆ・う・しゃ・さ・ま!」


 オートモードでは遠過ぎる対象が認識されない。セミオートモードにすると視界の中央に照準が表示された。しかし肉眼では何も見えない。仕方なくロアのモニターを頼りにするしかないようだ。半ば当てずっぽうで、照準を魔物の方角に合わせる。“当たってくれ”と発射ボタンを押すと、ハンドボールぐらいの光る玉が胸の前に浮かんだ。しばらくその場で浮かんだそれは、魔物の方に向かって想像を絶する速さで飛んでいった。


「カメハメハ……っと!」


 余韻に浸る間もなく、ロアのモニターを覗き込む。すると光る玉は、俺達から見て魔物の手前――魔物のやや後方に落ちて高い土煙を上げた。それと時を同じくして、馬車が急激に速度を落とした。ポカの体力が尽きたのだろう。大蛇の頭がゆっくりと進む馬車を捉えた。


「修正!仰角プラス二度、旋回角左にコンマ四度、放て!」


 俺は急いでマニュアル設定に切り替え、言われたとおり入力して発射ボタンを押す。


「旋回角左にコンマゼロ五度足しながらもう十発、放て!」


 大蛇の大きな口が馬車を丸呑みにしようと、地面に吸い寄せられる。牙が馬車に触れるか否かの間際、爆音とともに大蛇は頭を上空へ高く上げ、のたうち回った。


「一発腹部に命中!」


 ロアが歓声を上げる。


「もっと撃ちますか!?」


「いや。ほら、見てな」


 ロアはより良く見えるように、俺の方にモニターを差し出した。そこには大蛇の目線程まで、高く跳び上がったハルの姿があった。ハルの振りかざしたブロードソードがまばゆい光を放つ。次の瞬間には大蛇の重い頭は胴と切り離された。そして紫色の体液を振りまきながら、ドスンと着地したのだった。



「へー。ハルさんの方が先輩なんですか」


「ああ、そうさ。あいつは特別だからな。魔道士にも飛び級でなってるし、騎士試験も一発合格だし……」


 ロアと二人きりになって歩く俺は、色々とロアの話を聞いていた。手の震えを止めるためだ。ロアの話は俺の期待通り、俺をおしゃべりに夢中にしてくれた。どうやらこの世界でいう魔道士というのは、魔法が使える公務員のような存在らしい。それとは別に管理職として、騎士という資格のようなものもある。これの取得が出世には必須だという。少し日本のキャリア組に通じるような話だ……。


「はは……ハルさんって凄いんですね」


「因みに俺もれっきとした騎士だぞ!ほれ、この騎士章がその証だ」


 ロアは襟元に付けた金属製のエンブレムを見せてきた。見たことのない動物が象られたそれが、一瞬光ったように感じられた。願わくば、俺もその騎士とやらに就職できたりはしないだろうか?そうすれば一生安泰な気がする……。

 その後は互いの身の上話や、世界のことを簡単に話した。日本での暮らしを話すと、驚かれることが多かった。そうそう、ロアは既婚者で王都住まい。花の王都では妻とまだ小さい娘が、首を長くしてロアの帰りを待っているらしい。絵に描いたような幸せ者である。


 三十分程俺達は歩きに歩き、ようやくハルと合流できた。

 人の心配を他所に、ハルは木陰で男と笑い声を響かせていた。どこも怪我はしていないようだ。そばには木箱がいっぱいに積まれた馬車と、思い思いに草をついばむポカが四頭いる。ハルは俺達に気付くと腰を上げて、俺達と男とを引き合わせた。


「ドリトンさん、こちらは私と同じ王都の襲騎士ロアディード。それと騎士見習いのミスト。それにミストの使い魔のイルーです」


「いえ、モフモフ専用機のイルーです」


「なんでゃねん!」


 騎士見習いとは、上級職である騎士になるために勉強中の魔道士という解釈で間違いないだろう。

 男は腰を低くしながら某テレビショッピングの司会者のような声で挨拶をした。


「いや~どうもどうも。私ドリトンと申します。この度は、助けていただき誠にありがとうございました。お急ぎの道中ご迷惑をおかけしまして、誠に申し訳ございません。私はちょっとした行商を営んでおりまして、この辺りで売り買いをするために村々を回っていたのです。しかし積み荷の管理の目算が外れてしまい、あのような魔物を呼び寄せてしまいました。これに関しては青天の霹靂。私もまだまだ嘴が黄色いことを再認識させられました。しかし貴方様方のような雄才の面々とお近づきになれるとは、幸甚の至りでございます。今の今までお話させていただきましたが、ハル様のなんと可憐で美しく聡明なことか。その微笑みは大陸に轟くといっても、決して過言ではございません。そちらのロアディード様も筋骨隆々たくましきお姿。さぞ修羅場を乗り越えてきてらっしゃることと存じます。精進誠に素晴らしい。ミスト様、あなた様も実に美男子でいらっしゃる。内面は顔に出るといいますからな。功徳を積んでおられる証拠であります。イルー様は……ゴホン!真に素晴らしい御一行であらせられる。新進気鋭の若人方のお陰で、この国も安泰でございます。此度の経験は私にとって忘れられない人生の誇りとなるでしょう。お礼と言ってはなんですが、私の商品を見ていってやってはいただけないでしょうか?特別価格にてご提供させていただきます。浅学非才の私にとって、これができる精一杯でございます。存分に勉強させてもらいます。手始めに紹介させていただきたいのは、この鎖帷子!どうぞ手に取ってお確かめください」

 ご愛読ありがとうございます。間接射撃(砲撃?)なる攻撃手段が出てきますが、如何せん筆者にその方の知識がなく、完全に脳内補完の代物――もといフィクションになります。リアルに実際どうなのかご存知の方、また資料などお持ちの方いらっしゃいましたらご一報よろしくお願いします。(^^ゞ


追記

ご愛読ありがとうございます!

なんとブックマークに追加すると2PTが!

下の★↓の数×2PTが!

評価ポイントとして入るようです!!


そして評価ポイントが高いほどランキングに入って

皆さんに読んでいただけるということで……ぜんぜん知らなかった(;・∀・)


どうかブックマークと★評価よろしくお願いします!!!

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