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四角い机 Part1

 それからすぐに日が暮れて、雨が降りしきる平野は暗闇に包まれた。たまに見える幻灯虫の明かりが、今は見えない夜空の星々のようだ。そんな稲穂を照らす光は広い大地に星座を描き出している。その星座を後からやってきて埋め尽くすのは赤い目の群衆である。ロアが広範囲に及ぶ魔法を放つ度に、その赤い光達は宙に浮いては消えた。まるで夜空を彩る花火のようだ。


「ミストぉっ!」


 先頭を走るポカの周囲は、ヨーゾー班の誰かの光魔法で眩しいくらいである。俺はロアが赤い光に追いつかれないように、《人間ロケット》でロアをそこに目掛けて飛ばしてやる。俺自身も風魔法で魔物を蹴散らすが、ロアの地属性魔法の方が効果的である。


「ハルさん!行きました!」


 たまにロアと俺のディフェンスをかいくぐって、ポカに近付く魔物が出てくる。そんなときはハルの出番である。ポカの左側でハルの剣戟による火花が散った。だがポカの右側からも魔物が接近している。ポカの程近くから魔光弾が発射される。数発の内の一発が魔物に命中した。大方、ヨーゾーかダヨソンである。

 赤い光達の襲来には波があった。ポカよりも速く走れる魔物ばかりではない。一群を片付けてしまえば、次の一群を待つ間束の間の休息を取ることが可能であった。


「ぜぇ、はぁ……こんな老体に寝ずの走り込みさせるたぁ……なんつーお頭だ」


「うるせー。ぜぇ、ぜぇ、こうなりゃ意地なんだよ……給料いらねぇなら、とっとと近くの要塞都市に逃げ込みなっ!……って、お前俺より年下だろうが!?」


 休憩の回数を重ねる毎に、皆の疲れの色が濃くなっていく。そんな中、遂にハルがバタリと倒れて動かなくなってしまった。シークの体にしっかりとハルを固定する。疲労困憊なのはポカも同じである。セイカもなるべく地面を走ることとなった。――シークだけはハルが背中にいることをひどく喜んでいたのだった。



「経過報告概略――

○月×日○時○分ゼマロス川指定地点にて増幅材を逢魔石に使用。魔寄せの効果を確認。同日○時○分同地点へ波到来。ゼマロス川北岸にて波と交戦開始。同日○時○分波のゼマロス川南岸への進行を確認。波を引き連れて後退。翌○月×日○時○分バギタ村に到達。地形変動魔法(特級)を発動。注・この時波はゼマロス川まで長い列を形成。同時刻バギタ村が地上およそ五十メートルまで上昇。同日○時○分バギタ村が崩落。同日○時○分協議の末、独断で竜の枯骨砦への移動を開始。翌○月×日○時○分竜の枯骨砦へ到着――でいいよな?」


「はい。そんな感じで問題ないと思います」


==== 以下回想 ====


 夜が明けて、視界が一気に開けた感動が既に風化してしまった時分――コース終盤ともなると魔物のスタミナも切れたらしく、全体的にスローペースなレース運びとなっていた。俺達は取っ替え引っ替えポカに乗る人を替えながら――そして時には、隙を見て休みながら変わらず進んでいた。肺が締め付けられそうだ。足が痛くてたまらない。“サライ”が聞こえてきそうだ。

 そんな中イルーが目を覚ましたのは勿怪の幸いであった。ロアと俺の役目である周囲の警戒と追い付きそうな魔物の排除を、全てイルーがやってくれるようになったからだ。お陰で俺は体力の尽きたダヨソンをひたすら《人間ロケット》で前方に飛ばすことだけに専念できた。

 息も絶え絶え満身創痍で進んでいると、途端に辺りの雰囲気が変わった。既に雨は止んでいるはずなのに薄暗い。さっきまで太陽が照りつけていたのに、ある地点を過ぎてから、ひんやりと湿った空気が顔にまとわりついてきた。しばらくその変わりように気を惑わせていたら、ハルが元気良く叫んだ。


「着きました!」


 俺達がこの場所に到着したのは、真昼の太陽が丁度一番高い所に登った頃だった。休みという休みを挟むことなく、歩き続けた足はパンパンに腫れ、ボロボロの靴は今にも穴が空きそうだ。

 ここ大地の裂け目リフト・イン・ザ・グラウンドはその名の通り、大きな口を開けて俺達を待っていた。右を見ても左を見ても、その大きな口の終わりは見えない。谷底を覗こうとするも、余りに深く、余りに暗いのでそれはかなわない。谷底に川が流れているのかさえ、わからないのであった。びゆゅ……と谷風が途切れることなく谷底から上がってきていた。俺達は少しの間、その天然のクーラーに体の火照りを癒すのだった。

 皆は順番に峡谷の反対側へと飛んだ。見渡す限り反対側の崖は、こちら側より高い位置にある。俺とイルーは細心の注意を払って風魔法を発動した。

 高い方の崖には白い骨が散乱――とまではいかないが、散見できるレベルに沢山転がっていた。ここの別名の通りである。俺達はより見晴らしの良い高台に逢魔石を担ぎ上げた。魔物はあたかも、それを渇望するように崖に押し寄せる。しかし魔物の多くが巨体であり、跳躍の能力はたかが知れている。そのためメダルゲームの筐体にあるように、押された魔物は堪えきれずにどんどん谷底へ落ちていった。こちら側へ渡れるはずもなく――。

 その場所には“公園にあるアスレチック”のように、柱と梁で構成された大きな竜の骨格があった。俺達は早い者勝ちのように我先に場所を主張しては、梁の下でお構いなしに眠りについた。


==== 回想ここまで ====


「――ひとつ忘れてるんじゃないですか?……兵士が一人死亡……って」


 ヨーゾーが割って入った。確かに話さなくてはならない。議題にあげなければならない。命の保証が成された今、俺達は仲間の死を悼まなければならない。ただ言わせてもらえば、ヨーゾーが切り出す前から既に重たい空気が場を包んでいた。


「ジブンのせいッス……ジブンが……ジブンがっ!」


「違ぇよ……俺だ」


「ジブンがっ!トッピエを煽ったんス!もっとやれ、もっとやれって!!どうなるか考えもせず……っ!知ったような口で!……自信満々に……っ!!」


「違う……」


「……なぁ……そもそも、何が起こったんだょ……そろそろいぃだろぅ?寝てた俺にもわかるよぅに説明してくれょ」


 イルーにはバベルの塔が崩壊したことしか伝えていない。落ち着いて話せる状態でもなかったし。

ご愛読ありがとうございます!

なんとブックマークに追加すると2PTが!

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評価ポイントとして入るようです!!


そして評価ポイントが高いほどランキングに入って

皆さんに読んでいただけるということで……ぜんぜん知らなかった(;・∀・)


どうかブックマークと★評価よろしくお願いします!!!

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