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学びの園 Part2

 翌朝俺はハルさんとセイカと一緒に登校した。何でも学校の図書室に用があるらしい。


「本は素敵なものですよ。心躍る冒険だって、切ない恋愛だって、世の中のあらゆる知識だって、様々な感動を与えてくれるのです。きっとセイカも気に入る本があるはずです」


「でも、字が……」


「そんなことは気にしなくて良いのです。大事なのはただ好きかどうかですよ」


 因みに昨夜帰ってこなかった親父とロアディードは、俺が起きたら玄関で寝ていた。やたら酒臭い姿で……。親父は叩き起こすと、頭が痛いとふらふらしながら抗口へ仕事に出かけた。ロアディードも起こそうかと思ったが、ハルさんが寝かせておくようにと言うのでそのままだ。念の為昼前の鐘まで寝ていたら起こすように子供達に頼んできた。

 学校の敷地まで来たハルさんは――


「私、レガン・ダ・ワーヴァン以外の学校に来てみたかったんです!」


 と目を輝かせながら言った。この喜びようは……もしや自分が来たかっただけなのではないか?


「セイカ、見てください。可愛い制服ですねー」


 まずは学校長と話がしたいと言うので職員室まで来た。丁度いた先生に引き合わせる。


「ユゼルさん。おはようございます。そちらの方は?」


「おはようございます。こちらは父のお客様でレガン・ダ・ワーヴァン襲騎士のハルさんです」


「ハルと申します。良い学校ですね。生徒達がいきいきしています」


 ハルさんがもうここで良いというので、俺は修練場へ向かった。朝一番にここで剣の素振りをして、型稽古を一通りこなすのが俺の日課だ。模造刀を振り上げ真っ直ぐに下ろす。今日は体が硬い。普段なら体を温めるため、遠回りの道を走って通学する。しかし今日はそういう訳にはいかなかった。時間がない。俺は日課を早足でこなした。

 修練場から出るとハルさんに出くわした。その姿は俺の平常心を周章狼狽させた。


「ユゼルさん、どうですか?可愛いですか?」


 なんとハルさんは我が校の制服を着用していた。俺に向けて何やら形容し難いポーズをきめている。


「ど、どうしたんですか!?その格好は……」


「久しぶりの学校でつい着たくなってしまいました。どうですか?可愛いですか?」


 ハルさんはクルリとその場で回転してお尻をこちらにフリフリして見せた。


「か……普通ではないでしょうか?」


 か、可愛いです!小柄な背格好も相まってか、ぱっと見後輩です!鍛え上げた引き締まった体のラインたまりません。狙ってやっているのか素でやっているのか、少し照れた表情もポイント高いです。しかもなんですかその上目遣い!?あざとい!!しかしその実、王都指折りの騎士なのだからギャップに萌えます!こんなお茶目ところもあるなんて……なんと抜け目のないことか!

 ――だめだ、ためだ。我を取り戻せ。


「実は兵士姿で校内をうろうろすると、目立ってしまうかなと思いまして……」


「それなら無用な心配でしたね。……もう目立ってしまっていますから」


 寮の方からも教室の方からも、多くの視線がハルさんに向けられているのがわかる。そもそも来客の少ない場所なのだ。見ない顔があれば必然的に注目の的になってしまう。ハルさんは同じく制服姿のセイカを連れて図書室へ、俺は恥ずかしい気持ちを堪えながら教室へそれぞれ向かった。

 教室に入った俺は大変だった。ハルさんは瞬く間に自堕落な生徒達の噂のネタにされてしまっていたのだ。ハルさんと一緒にいた俺は、退屈を持て余しているこの者達の格好の的となっていた。俺は矢継ぎ早に放たれる質問をかいくぐり自分の机に着席すると、最終手段の狸寝入りで知らんぷりを決め込むのだった。


 三限目の剣技の授業で俺達は外に出た。先生がそんな俺達にハルさんを紹介する。ハルさんが“こんなつもりはなかったのに……”という表情で自己紹介してから、授業が進められた。二人一組になって模造剣の打ち合いをしている中を先生とハルさんが回って指導する。やる気のない自己紹介とは一転、ハルさんは真剣に生徒達の良い所悪い所を見て回っていた。

 一斉の打ち合いが終わると、一対一の試合をすることとなった。俺はまたとない機会と、真っ先に手を上げてハルさんとの試合を申し出た。ハルさんは最近剣を振ってないと遠慮を見せたが、先生に押し切られた末に俺と試合することとなった。


「ご指導よろしくお願い致します」


「お手柔らかにお願いします。形式戦にしますか?模擬戦にしますか?」


「模擬戦でお願い致します」


「良かった。私重量がないので、形式戦は苦手なんです」


 この町に来てから、魔法が使える模擬戦は数えられる程しかこなせていない。魔法の腕も確かめたい俺は、迷わず模擬戦を選択した。観客席から歓声と共に音楽が演奏され始めた。この地域特有の試合中に奏でられる曲だ。演奏者が多いので、いつにもまして豪華な音色となった。

 ハルさんが剣を構えた。剣を握った拳の向こうから怖いくらいに真剣な表情が覗いている。その拳からは、高く垂直に真っ直ぐ剣が伸びていた。俺はハルさんが開始早々、一撃を放ってくると読み正眼の構えで対抗する。先生が手を高く上げて始めの号令をかけた。


「参ります」


 ハルさんが小声で言ったその瞬間、俺の首元に凄まじい速さの突きが襲ってきた。一足飛びでここまで距離を詰めてくるとは、強気である。俺は剣に込めたシールド魔法で突きを横に流した。続いて身を翻してハルさんの左胴に剣を走らせる。しかし既にハルさんの姿はそこにはない。俺は咄嗟に背中一面に壁になるよう、水属性魔法〈ベイブルダシア〉を放った。

 案の定ハルさんの剣撃は、俺の背中めがけて既に発動されていた。俺の魔法がハルさんの剣を受け止めている間に、俺は別の魔法を唱える。剣を振ることで、その延長線上へ魔法の刃を飛ばす魔法だ。俺は壁状になっている〈ベイブルダシア〉に向かって剣を振った。魔法の刃は真っ直ぐ〈ベイブルダシア〉の向こうにいるはずのハルさんへ向けて飛んでいく。しかし三発飛ばして何の音沙汰もない。それならばと俺は真横に跳んで、剣を地面に突き立てた。自分の周りに足止めのための〈足掬いの池〉を広げるためだ。相手が一度足を踏み入れれば、池の水がまとわりついて動きを封じる。これでハルさんは地を伝ってすぐに近寄ることはできない。来るとしたら空中からだ。

 閃光の跳躍者たるハルさんの高速移動は、一瞬消えて離れたところにまた現れている訳ではない。あくまで魔法で速度を極限まで上げているに過ぎない。しかも恐らく不規則な動きは不可能で一直線にしか移動できないはずだ。魔法を何度も発動させて軌道を断続的に変えれば、すぐスタミナ切れに陥るからだ。


「よく鍛錬されています。防御魔法の発動の速さはラバロノザー先生の教えでしょうか。第一に身を守ることの重要性がしっかり体に刻まれていますね。更に私のような突進系の相手には待ち伏せ戦法が有効です。私の反撃を警戒して立ち位置をずらすなど、咄嗟の機転もセンスも大変素晴らしいです」


「身に余るお言葉、感謝致します」


 俺は〈足掬いの池〉を発動させたまま、徐々にハルさんに近づいていた。こうすることでハルさんは何かしらの行動を起こさねばならないからだ。


「困りましたね。では、これはどうでしょうか?」


 俺はハルさんの行動に動転して立ち止まった。ハルさんは自分の制服のスカートを徐々にたくし上げ始めたのだ。

ご愛読ありがとうございます!

なんとブックマークに追加すると2PTが!

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評価ポイントとして入るようです!!


そして評価ポイントが高いほどランキングに入って

皆さんに読んでいただけるということで……ぜんぜん知らなかった(;・∀・)


どうかブックマークと★評価よろしくお願いします!!!

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